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2006年4月 1日

恐竜の軟組織の復元- Tyrannosaurus rex-

恐竜の復元をする上で、軟組織(筋肉、内臓、皮膚など)の復元が非常に問題になる。というのも、骨以外の部分が化石に残る確率が極めて低いからである。筋肉の復元をするときは、骨格の特徴、関節の機能、筋肉の付着痕などから推測していかなくてはいけない。非常に不確かな情報に頼るしかないのである。
しかし、この広い世の中、長大な地球史には、奇跡と言ってよいようなことがまれに起こる。軟組織が化石になった恐竜が、少ないながらも発見されているのである。もっとも有名なものは、北米で発見されたエドモントサウルスのミイラ化石であろう。原標本はドイツ・ゼンケンベルク博物館にあり、そのレプリカを福井県立恐竜博物館でも見ることが出来る。また、モスクワの古生物学博物館には、サウロロフスの胴体の片側が残ったミイラ化石があるらしい。
最近では、イタリアで発見された小型獣脚類スキピオニクスが有名だ。心臓や肝臓と思われる内臓の痕跡が見られる。そして、皮膚の印象が化石として残ったものは、比較的多く発見されている。

そこで、ティラノサウルスの軟組織の復元である。
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このティラノサウルスは、「恐竜の科学展」のポスターのために制作したものだが、自分でもかなりうまくいった復元ではないかと、自画自賛している。それには、実は重要な秘密があるのだ。
せっかくなので、ここで公表してしまおうと思う。もちろん、研究中の部分もあるため、全てを見せるわけにはいかないが、研究者と相談して出せる部分に関しては、いつも読みにきてくれる読者のために紹介したいと思う。
先に紹介したミイラ化石の多くがハドロサウルス類である。彼らは白亜紀後期に大繁栄した植物食恐竜で、鴨のようなくちばしを持ち、カモノハシ恐竜と呼ばれているグループだ。彼らは肉食恐竜の獲物にもなっていたのだが、その捕食者というのがティラノサウルスなのである。そう、両者は同時代に生息していた。ならば、ティラノサウルスのミイラ化石が発見されたとしてもおかしくないだろう。

実はただ一点、存在するのである。
これを見たときは、さすがに僕も驚いた。見事な保存状態だったのである。見せてもらった時期は、昨年10月SVPに参加するために渡米していたときだ。しかし、ひとつ残念なお知らせをしておかなくてはならない。かなりの量の写真を撮影させてもらったのだが、以前ここでも書いたハードディスクのクラッシュのおかげで、全てのデータを失ってしまったのだ。重ね重ね残念である。でも、そこは絵描き。いくつかのスケッチを、実際の標本を見ながら描いたものが残っている。
すぐに、ここで紹介しなかったのは、研究者との取り決めがあったということを、理解しておいてほしい。
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これが頭部である。見事な保存状態。まだクリーニングが終わっておらず、石膏ジャケットがついたままの状態だ。短時間であったため、ディテールまで描き込めなかったが、皮膚の状態、唇によってほとんどの歯が隠れてしまうことなど、重要な情報を観察することができる。
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こちらは、前肢と後肢。ここまですごいとは。多少、筆先が震えるほどの興奮状態だった記憶がある。
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復元画とスケッチの口の部分の比較。かなり忠実に再現できたのではないだろうか。これまでは、歯がむき出しの復元が多かったが、これを見てもほとんど歯が見えないことがよくわかる。
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眼の周りの比較。このスケッチも非常に参考になった。眼球までは観察することができないが、皮膚のたるみ、皺のより方、ウロコの大きさなど、知りたかったことが目白押しである。これほどの情報、独占する訳にはいかない。そういった想いもあって、この時期にblogで書いてみようと思ったのである。

そうそう、この情報はこっそりとふらぎさんには、流していました。
明日は、これの試験の日だ!やばい、これから一夜漬けです。
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さて、ここまで長い文章を読んでくれて、どうもありがとう。
よもや、賢明な読者である皆さんが、本気にしたということはないと思うのだけど・・・・・
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投稿者 corvo : 2006年4月 1日 00:00