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2005年6月30日

apato process 06

アパトサウルスの制作のために紙を用意する。
紙の種類はAquarell Arches Hot Pressのロールである。大変強靱な紙で巻き癖も強いため、カットする前に本を重しにしてなるだけ癖をとっておく。無駄に重い書物が、こんなときに役に立つ。
余談ではあるがこの紙のロールは日本では手に入らない。代理店がどういう理由からかしらないが、輸入していないのである。仕方がないのでアメリカの大手画材店Dick Blickからネット通販で取り寄せている。(フランスの紙なのに)
スムーズに日本で入手できるように、是非輸入して欲しい。

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カットの終わった紙をパネルに水張りする。パネルのサイズは500x1200mm。

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水張りに使用する道具。ボールに水、刷毛、ガンタッカー、ステンレスステープル。

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紙全体にたっぷりと水を含ませる。こうすることで紙が水分を吸って膨張する。この状態から素早くステープルで、パネルに固定していく。写真は十字方向に固定したところ。しわがでないように周囲をすべて固定していく。紙から水分がなくなると、ぴんと張った状態になる。これでようやく絵を描き始める準備ができる。


投稿者 corvo : 17:52

2005年6月29日

apato process 05

アパトサウルス再開である。
ここ数日、別のイラストの制作や、ブログの準備のために滞ってしまっていた。
いまだに前肢、肩胛骨の位置が決まらず苦戦している。
写真に写っている模型は、私が造型アドバイザーを務めているフェバリットコレクションのスケルトンモデル「アパトサウルス」である。模型といっても出来る限り正確さを追求して、制作されている。巨大な恐竜を描く場合、こういったミニチュアがあると非常に便利だ。
頭のなかで想像で立体を把握していたことを、模型に代用できることは脳の負担が軽くなり、より描くことへ集中することができるようになる。
今日のうちには、前肢の位置を決定してしまいたい。

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投稿者 corvo : 09:44

2005年6月28日

偶然

blogを始めるにあたって、weblogとは何か?を知るために、ウェブログ入門-BloggerとMovable Typeではじめる【CD-ROM付】を友人から借りた。
知りたいところだけかいつまんで読みながら、なるほどど理解していく。すべてを理解できるわけではないが、非常にわかりやすい記述である。
たまたま巻末の著者プロフィールに目がとまる。「1969年三重県生まれ。・・・・・」そう、著者の一人である田口和裕氏は中学の同級生だったのである。中学時代はよくお互いの家を行き来して遊んだ記憶がある。早速、メールでやりとりをした。18歳のときに会ったのを最後に、17年たってからのコンタクトである。

今日はアマゾンから2冊届く。

大きな洋書のほうがEvolution of the Insects。ほとんどがカラーページで図版が豊富である。復元画を描く上で、昆虫も重要なモチーフになることがある。例えば中生代の小型のほ乳類が、昆虫などを食べる絵を想定したときである。
昆虫の基礎的な知識が薄弱なため、ぱっと見ただけでは分からないことだらけ。それでも届いた本は、一度はすべてのページを見るだけはすることにしている。こうしておくとなんとなく頭に画像が残り、必要になったときに発見することができる。
もう一点は以前にも紹介した骨の学校 (3)である。今回は魚ばかり。魚の頭骨は細かい骨で構成されており、標本にすることはとても難しそうである。こちらもぱらぱらと目を通しただけ。
定期的に本の紹介もしていきたい。

投稿者 corvo : 22:06

頭骨(続き)

ポリデント、水洗後の頭骨。
水分を含んでいるので、天日干しで乾燥させる。
ストロボのせいもあるが、最初に入手したときに比べるとずいぶん白くなっている。
さすがポリデント、歯の白さは輝くようである。

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ボールのなかの頭骨。軟組織がとれたことで、歯が何本か抜けてしまった。接着剤で固定すれば大丈夫。

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頭骨のフォルムは本当に美しい。犬の頭骨も持っているが、さすがに大きさが違う。
これでもオオカミとしては小さい方らしい。

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スケールといっしょに撮影。およそ27cmぐらい。


投稿者 corvo : 00:34

2005年6月27日

本日からブログオープン

本日2005年6月27日からブログオープンである。
すでに過去にもたくさんの記事をアップしており、知人にはメールで案内を出してからの挨拶で誠に恐縮です。
時系列を数字一つの入力で遡ることができ、編集もリライトもいつでも出来るところが、デジタルらしさといえようか。
自分の雑多な記憶、記録を整理してくれるツールとして、情報発信の場として活かしていければと思います。
義務感に囚われることなく、日々更新しきたいと思います。
忌憚のないコメント、リクエストいつでも歓迎です。
それでは、本日から皆様よろしくお願いいたします。

投稿者 corvo : 00:00

2005年6月26日

頭骨

実はたまらなく骨がすきである。
恐竜の復元を始めたのも、最初に骨への興味と偏愛があったからだと思う。
かといってそれほど解剖学にも骨にも知識や経験があったわけではない。
しかし、復元画を描くようになってからその興味はどんどん大きくなっていっている。
この頭骨は先日の国際ミネラルフェア(新宿)で入手したオオカミのものである。
ただし、骨格にするための処理が甘く、まだけっこう軟組織が残っている。(実は乾いた脳髄も残っている)

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格安商品だったため、下あごは片側だけである。上顎、下顎は同一個体のため、きちんと上下かみ合わせする。

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軟組織を取り除くために、タンパク質分解酵素をもつ「ポリデント」を使用。
このあたりのノウハウは  「骨の学校―ぼくらの骨格標本のつくり方」から勉強。(続刊に「骨の学校〈2〉沖縄放浪篇」「骨の学校 (3)」がある)

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ポリデント溶液から取り出して、流水で洗いながら歯ブラシと竹串で丁寧に組織を取り除く。
まるで歯磨きしているよう。

投稿者 corvo : 23:07

切り貼り

切り貼りは楽しい。
デジタルに習熟した方は、なぜデジタルでやらないのかと思うだろう。
うちにはそれなりにパワーのあるパソコン(ノート、デスクトップあわせて3台)があり、スキャナ(2台)もあり、アドビの画像処理ソフトもインストールしてある。(使いこなせるかどうかは別の問題。使いこなせていない自信は大いにある)
仮に使いこなせていたとしても、手で切り貼りをしているだろう。
それはまだまだ手作業の方が早いのである。デジタルは結構面倒くさい。
スキャナで取り込み、イメージを切り抜くところまでやってしまえば、あとは圧倒的にデジタルに分があるのだと思うが、その準備段階までの行程を想像するとぞっとする。(それでも早い達人はいるのだろうが)
アパトサウルスの場合、椎骨(首から尾までを含む脊椎の骨)だけでもおよそ100個以上。
紙の手触りを感じながら、デザインナイフで各骨格の大きさを実感する。少々荒く切り抜いても、手作業でごまかせる。
出来てくるものを実体として触れることが嬉しい。
これから先デジタルに依存する部分は増えていくと思うが、思索、習作の基本はこれからも手作業なのだと思う。

投稿者 corvo : 01:33

2005年6月25日

骨単、肉単、脳単

もともと恐竜にはそれほど興味がなかった。
なぜ、復元に興味をもつことができたのか。それは解剖学に興味があったからだと思う。
美術大学では美術解剖学という授業がある。絵画や彫刻において人体は重要なモチーフのひとつであるが、その構造を知るために骨格と筋肉に特化した解剖学を学ぶ。
下記に紹介した本は、骨格や筋肉の動きを知るために、参考にしている本である。
恐竜と人間の違いはあるが、骨格、筋肉の名称、働きに共通する部分は多い。
骨単―ギリシャ語・ラテン語
肉単―ギリシャ語・ラテン語
脳単―ギリシャ語・ラテン語
解剖学―分担 (1)
動物の骨格、筋肉は次の本が参考になる。
An Atlas of Animal Anatomy for Artists
Animal Anatomy for Artists: The Elements of Form

投稿者 corvo : 22:18

apato process 04

肩胛骨、上腕骨、とう骨、尺骨、大腿骨、脛骨を配置。(脛骨だけが右のものをダミーで置いている)
前肢、後肢がつくとまぎれもなく恐竜であるがわかる。
肩胛骨は胴体に関節しない骨である。そのため位置を決定することが難しい。
では、どうやって決定するか。立体で確認することができれば、肩胛骨を肋骨のカーブに合わせていって位置を探ることが出来る。しかし、今回のように平面で復元するときは、足跡の化石がヒントとなる。
車で言うとトレッドとホイールベースの記録がそこにある。
前後左右の足跡の位置から、上に向かって前肢と後肢を伸ばしていき、関節の可動範囲が無理のない位置になるよう決定していく。
これもあくまでも推定であるが、恐竜が大地に残した証拠である足跡は、極めて重要な情報源となる。
骨から復元することが基本ではあるが、それ以外のデータ、情報も常に念頭においておく必要がある。
アパトサウルスの姿がはっきりしてくると、とても楽しくなってくる。

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投稿者 corvo : 21:33

apato process 03

今回は肋骨である。
立体のものを平面に置き換えているので、かなり無理がある部分もあるのだが、それぞれの部位の比率が分かるだけでもこの作業の意義は大きい。
肋骨がつくことで、胴体のボリュームを実感することができる。
食べ尽くされた魚の骨のような状態から、かなり恐竜らしくなってきた。
でもよく見ると、まだ魚を食べた後のようだ。

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投稿者 corvo : 21:28

2005年6月24日

代車

金曜日は某高校の非常勤講師の日である。教科はもちろん「美術」。
その帰りに、愛車(ルノールーテシアRS2.0)のメンテナンスをお願いするため、懇意にしているお店に車を出しに行った。
ありがたいことに代車を借りることができたのだが、これが大変な車であった。
走行距離は10万キロを超えており、ファミリーカーとしての使命を黙々とこなしてきたであろう、日産マーチ。
もちろん普通に乗るには、なんの問題もないとされる個体である。(エアコンが効かないことを除けば)
閉口したのは、足がとにかく柔らかいこと。車に乗り降りするたびにふかふかのソファーのような動きを見せる。
走っている間はフロントの接地感が乏しく、ステアリングに伝わる情報もあいまいでずれた感じがする。
怖い。
恐怖感から10分ぐらいで運転しながら軽く酔ってしまった。
オートマのため、加速してほしい時に加速してくれない。
怖い。
怖くて、気持ち悪くて、暑くて、大工事渋滞にはまって、最悪な夜のドライブだった。

投稿者 corvo : 23:30

2005年6月23日

apato process 02

脊椎がかなり繋がってきたところである。尾の先の細かな椎骨はこれからである。
1/20の縮尺で作っているのだけど、それでも1メートルを超える大きさだ。
この大きさで制作を進めていくか迷うところ。もう少し小さい方がやりやすいのだけど、今の迫力もすてがたい。
本当に美しいフォルムであると思う。

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投稿者 corvo : 20:57

apato process01

次の制作をスタート。今度も好きな恐竜のひとつである、アパトサウルス。
この写真では極めて原始的な手順を踏んでいる。
論文からコピーした各骨格を切り抜いて、台紙の上に繋ぎ合わせているところである。
横方向からの図だけであるが、関節のつながりを客観的に検証することができる。
この作業は「最新恐竜学」(平山廉著、平凡社新書)の挿絵を描くためにすでにおこなったことがある。
自分の意志、意図とは関係なく、関節をひとつひとつ繋げていくことで浮かび上がってくる全体像が楽しみである。

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投稿者 corvo : 16:28

2005年6月22日

saichania process 番外編

今回は馬鹿話をひとつ。
先日のどうしようもなく、やるせないアメリカグランプリを見て思いついたわけではないのだけど、近年のF1マシンは空力付加物が多く、とても複雑な形状をしている。
自動車の場合は地面に押しつける力(ダウンフォース)を得るためのウイング類である。
サイカニアを見ながら思った。「装甲がウイングのようだ」
しかし、重いであろうそうの体を地面に押しつけてしまっては元も子もない。
ひとつひとつの形状を見る限り、揚力が得られそうではないか。前に進むスピードが上がれば、多数の装甲が揚力を生み出し、極端に短い前肢は地面をはなれ、みごと二足走行でトップスピードに達するのである。
モンゴルではガリミムスをも凌ぐ、最速ランナーあったことは想像にかたくない。

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あくまでも馬鹿話なので、自己責任で解釈のほどを。

投稿者 corvo : 11:42

2005年6月21日

saichania process 15

サイカニア完成である。
画面サイズは370x550mm。素材は紙にアクリル。使った色は、チタニウムホワイト、ペイニーズグレー、ローアンバー、バーントアンバー、ローシェンナ、バーントシェンナ、イエローオーカ、ネープルスイエローヒューである。ほとんど褐色系とモノクロしか使っていない。

saichania.acryl4.jpg

投稿者 corvo : 20:53

saichania model 05

豚鼻がかわいい。
いかつい外見とは裏腹に、ディテールを見ていくと、とてもファニーである。
やはり愛すべき恐竜のひとつである。

DSCF7641.JPG

投稿者 corvo : 00:52

saichania model 04

サイカニアのスケルトンモデルの修正画像が届いた。
かなり良くなっている。
全体のわかる写真が多かったのだが、ディテールがわかる写真が少ない。そのためいくつか部位を指示して、写真のリクエストをする
完成が楽しみである。

DSCF7626.JPG
DSCF7636.JPG

投稿者 corvo : 00:46

2005年6月20日

saichania process 14

かなり完成に近づいてきたところである。模様をどこまで入れようか。
背景をびしっと描かないタイプの復元画なので、画面作りである程度遊んでいる。
思い入れの深い恐竜であると以前書いたのだけど、そのためか今まで描いている枚数も最も多いかもしれない。
一度、過去のものを並べて紹介できればと思う。
最初の一枚は今見ると、本当に拙くて下手くそである。

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全体

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頭付近のディテール。ライティングが悪くて、光って見づらい。

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尾のほうのディテール。

投稿者 corvo : 01:12

2005年6月19日

得意不得意

多少の得意不得意はあるものであるが、絵を描く上ではそれほど重要なことではない。
生物や古生物を仕事で描くことが多いものだから、「動物が得意なのですか?」とか「恐竜が得意なのですか?」という質問をよく受けるが、そういった意識はほとんどない。
古生物は実際に生きた姿を観察して描くことはできないが、詳細なデータ、数多くの資料、研究者とのディスカッション、といったことから描くことができる。実際に観察することができるモチーフならば、しっかりと見ることで描くことができる。
だから基本的に描くことに、得意不得意もない。
一方使う画材、技法にはある程度、得手不得手ということがあるかもしれない。実際これまでも苦手な素材もあったし、経験や修練や積んだことがないものについては、きちんと使いこなすことは難しい。
それでも表現したいことに必要なテクニックであれば、身につけようと修練を積む。
できるだけ自分のなかに得意不得意がないようにしていきたいと思っている。


投稿者 corvo : 21:54

2005年6月18日

saichania process 13

絶滅した動物の色は、絶対に知ることはできない。復元画においては想像に頼るしかない、もっとも大きな部分である。
実は色を決めるのはとても難しく、憂鬱なことである。
そうなるとやはり原生の生物を参考にすることが多い。今回は大きさは全然違うが、外観の特異さで似ているモロクトカゲを参考にすることにした。下の写真は図鑑の表紙である。模様をどこまで入れるかが悩みどころである。

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投稿者 corvo : 01:06

2005年6月17日

saichania process 12

グリザイユがある程度できてきたところで、色数を増やしていく。といっても褐色をベースにした色にするため、パレットの様子は極めて地味である。
特に大型の恐竜を描く場合は、だいたいこんな感じの色数に落ち着いてしまう。

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投稿者 corvo : 01:02

2005年6月16日

集中講義

今日は東京芸大の美術解剖学の研究室で集中講義を行った。
昨年、10月にたまたまこの研究室の先生にお会いしたのがきっかけで、講義をやらせていただくことになった。
「復元画」とはどういったものであるのか。どういった行程で制作しているのか。どういった仕事を引き受けているのか。などをスライドを交えてしゃべった。
絵を描く仕事で生計をたてていくことは難しい。美術大学を卒業しても、絵が売れるわけでもなく、すぐに仕事の依頼があるはずもない。そんな現実のなかでも、絵描きが必要とされている場所は、まだまだたくさんあると思う。需要と供給の関係がうまくつながっていないのではないだろうか。
「復元画」を描く仕事を始めた当初は、もちろん仕事は少なかった。しかし、博物館や出版物などで復元画が求められている場面は、もっとたくさんあるはずだ。そして、もっとたくさんのことをこちらから提案できると、そんなことを思いながら始めた仕事であったと思う。
今もたくさんのアイデアがあり、少ない時間の中で実現をあきらめなくてはいけないものもあるかもしれない。これから復元画をはじめる人たちが増えていってほしいと思う。

投稿者 corvo : 00:39

2005年6月14日

saichania process 11

頭部のディテールから描き込んでいく。面相筆を使っての地道な作業である。
鉛筆デッサンを常に参考にしながら進めていく。もちろん写真資料もすぐに確認できる状態にしておく。
色をつけるときも最初からたくさんの色を使うのではなく、モノクロームのトーンを合わせるため少ない色数に制限して描写する。このモノクロで表現された状態をグリザイユという。ここから色を増やしていくのである。

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投稿者 corvo : 22:37

2005年6月12日

saichania process 10

アウトラインにそって背景の彩色を終えたところで、サイカニア本体への彩色へ移る。水をたっぷりふくんだローシェンナを大胆に散らしていく。画面を散らかすように、絵の具をふきつけるように。飛び散った絵の具が鱗のようにも見える。

RIMG0106.jpg

投稿者 corvo : 22:26

saichania process 09

アクリルのローアンバーでアウトラインにそって彩色していく。サイカニアのシルエットの美しさを確認しながらの作業。
彩色ではたっぷりと水を使用するため、紙をパネルに水張りで固定しておく。そうすることで仕上がったあとに、紙が水分でたわむことがなくなる。

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投稿者 corvo : 22:15

2005年6月11日

saichania process 08

この段階はすこし行程が飛んでしまっている。アクリルで描くための支持体(アルシュ紙)にエスキースを転写した状態である。転写にはコピーとファンシープリントを利用している。ファンシープリントというのは、印刷物の写真などのイメージを紙などへ転写する画材の一種である。
エスキースのコピーを左右反転させたものを用意し、支持体の上にかぶせてファンシープリントをコピーの裏からしみこませて、鉛筆などでこすり圧力を加える。そして写し取った状態が下の写真である。
色を付ける前にあらためてデッサンを取り直す必要がないので、作業が非常に軽減される。以前にも書いたが、準備がしっかり出来ていればいるほど、良い仕上がりへとつながっていく。

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投稿者 corvo : 21:58

2005年6月 6日

saichania process 07

鉛筆デッサンの完成。
ここまででおよそ3日間ほど。時間だと15時間ほどだろうか。このデッサンをもとにアクリルでカラーイラストを制作する。
この段階までにしっかり描いておけばおくほど、次の段階が楽になる。
色という情報が増すと、ついつい形態への注意がおろそかになってしまう。そのためにもエスキースの準備は不可欠な作業である。ここまで来ると少しほっとする瞬間である。

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投稿者 corvo : 21:49

2005年6月 5日

saichania process 06

ディテールがもう少しわかる写真。

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投稿者 corvo : 21:46

saichania process 05

少し進んだ状態。側面の装甲のうねりが美しい。大好きな部分である。
モンゴルの研究者リンチェン・バルスボルド博士は、これらの装甲を葛飾北斎の描く波のようだと表現している。
ここでも光の描写は大切にしたい。そして、それぞれの突起の形態、付着する角度、それらをとりまく空間まで表現したい。鉛筆のタッチがクロスしないように心がける。これは好みの問題でもあるのだけど、できるだけタッチはパラレルに入るように描写する。そのほうがトーンをつぶすことなく、美しい仕上がりにつながる。

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投稿者 corvo : 21:10

2005年6月 4日

saichania process 04

これは制作の現場写真。
ノートパソコンにデジカメのデータが入っているため、モニターを見ながらの制作になる。
電卓は骨格の比率の拡大、縮小を計算するために必要である。
鉛筆がたくさんあるのは、途中で削るのが面倒で時間がもったいないからである。なので同じ濃さの鉛筆を数十本ずつ準備しておく。画面のサイズは380x570mm。

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投稿者 corvo : 20:56

saichania process 03

ちょっと写真の色やライティングが悪くてわかりにくいが、デッサンのディテールである。
鉛筆のタッチの方向や、線の密度が分かってもらえると思う。

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投稿者 corvo : 20:50

saichania process 02

前回の骨格図をもとに、鉛筆デッサンを制作する。
いつもなら多くのラフスケッチを描いてから始めるのだが、今回は実際の標本を観察できた印象が強く残っているため、早く制作にとりかかりたかった。
紙はアルシュのホットプレス。表面がスムースで繊細な表現に向いている紙であるが、とても強靱で強く消しゴムを使っても表面がけばだつことはない。(とはいえほとんど消しゴムを使うことはない)
使用する鉛筆はステッドラーの2BからHBまでの濃さ。骨格図をもとにプロポーションを計って、画面に軽くあたりをつけていく。おおよその構図が決まったところで、頭部のディテールから描き始める。
デッサンをするときは実際に観察できないものを描くときでも、光の方向をしっかりと設定して、制作することが大切である。基本的には石膏デッサンの描写などと、それほど変わるところはない。
(石膏デッサンに興味のある方はこちらをご覧ください。アリアスの鉛筆デッサン
筋肉や皮膚などの軟組織を復元する場合でも、骨格の情報は常に重要である。撮影した標本の写真を常に見ながらの制作となる。そのため写真(情報)が多ければ多いほどよい。

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投稿者 corvo : 20:20

2005年6月 3日

saichania process 01

今日から鎧竜の一種であるサイカニアの復元プロセスを紹介したいと思う。
サイカニアはモンゴルの白亜紀後期の地層から発見された恐竜で、非常に保存状態が良く全身の骨格が残っており、復元するにはとても良い標本が現存する。今回は幸運にも実際の化石を直接取材することができ、また組み立てられたレプリカも詳細に観察することができた。
過去に組み立てに参加した、思い出深い標本でもある。
鎧竜というと装甲で全身が覆われ無骨なイメージがあるが、サイカニアの装甲の一つ一つはうねる波のようで、実に美しい形をしている。
サイカニアは頭部など一部が報告されているが、全身骨格の報告はまだである。今回の全身骨格は綿密な取材に基づいて描いた、オリジナルのものである。

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投稿者 corvo : 18:32