« 2013年2月 | メイン | 2013年4月 »

2013年3月31日

ジョジョの奇妙なバトル


ちょっと思いついたので書いてみる。大した考察ではないかもしれないけど。
ジョジョのバトルって、当事者同士がふれあう事がほとんどない。吸血鬼は波紋を流されると死につながる。さらに強い柱の男たちも、波紋が弱点である。逆に柱の男たちは、人間を触れるだけで細胞単位で吸収することができる。口で食べる必要も、流れる血で周囲を汚す事もない。
そう、お互いに触れた瞬間がダメージにつながる。ジョジョとワムウとの闘いでは、ハンマー、ボウガンの鉄球、手綱を介して波紋が流され、シーザーはシャボン玉、リサリサはマフラーを使う。ジョジョとワムウが殴り合うシーンは全くない。

第3部からのスタンドになると、さらにその傾向が強まる。基本はスタンド同士の闘いであり、人間同士が触れ合うことはほとんどない。スタンドがダメージを受けると、その本体である人間もダメージを受けるが、直接殴られたり、傷つけられたりしているわけではない。スタンドは人間を直接攻撃することも出来るが、人間同士が殴り合ったり傷つけ合ったりという描写は皆無(だったと記憶している)だ。

血も流れる、汗もかく。そして死ぬこともある。でも当事者同士の身体が触れる事はほとんどない。
これって、すごく奇妙なバトルではないだろうか。
もし、観客としてその場にいたとしても、スタンドを見る事が出来なければ、何が行われているかさっぱり分からない。閉じた世界で殺し合いが展開している。これをマンガとして見せているのだから、非常に特殊な世界観の話だと思うのである。

第2部までは、波紋の修行のために厳しく苦しいトレーニングを課される。柱の男たちも、それぞれの流法(モード)を獲得するために、厳しい修練を積んで来たと思われる記述がある(サンタナはついてこれなかった)。しかし、第3部になると、空条 承太郎にはなんのトレーニングもなくスタンドの能力が発現している。しかも最強の。ポルナレフはかなりの鍛錬をしたという記述があったと思うが、その後に現れるスタンド使いたちも、ことさらに訓練をしたという描写はない。エコーズのように成長するスタンドもあるが、本体が修練を重ねての結果ではないように思う。
これは身体性の欠落なのだろうか。
結論はよくわからない。

ただ思いつくままに書いてみた。異論反論も多いと思うので、遠慮なくコメントいただければと思います。


--
twitter

成安小田ゼミのブログ

成安造形大学イラストレーション領域

イラストレーションな日々

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 00:47

2013年3月28日

ササヤマミロス・カワイイ復元画の制作プロセス


昨日、記者会見があり、報道でも流れたササヤマミロス・カワイイ(Sasayamamylos kawaii
の復元画の制作プロセスを紹介する。
篠山層群復元画丹波プロジェクト』の一環として描いたものだが、記者会見に間に合わせるために、かなり急ぎの制作になってしまった。
スケジュールがきつくなってしまった原因に一つは僕にもあり、最初のラフを送ったと思っていたのが実は送れていなくて、ぎりぎりになってしまったのである。よく確認しなくては。
blog13032801.jpg
これが送ったと思い込んでいた、最初のラフスケッチ。日付を見てもらうとわかるが、2013年3月21日となっている。その事実に気付いて送り直したのが24日だった。
監修は記載者でもある、愛媛大学の楠橋直さん。

メールのやり取りを抜粋すると
「犬歯が大きいことと、犬歯がその中ほどの高さのところで少し後ろへ折れ曲がるような形をしている (犬歯全体が折れ曲がると言うよりも、犬歯の前縁が中ほどの高さのところで後方へ曲がるというほうが正確かもしれません) というのもこの哺乳類の特徴です。標本で犬歯が後方へ倒れているのは保存の影響ですが、折れ曲がるような形をしていることはもともとの形態です。」
「全身骨格に関しては Mammals from teh Age of Dinosaurs のエオマイアを参考にされるのが良いと思います。ザランダレステスはちょっと特殊化していますし、Mammals from the Age of Dinosaurs にある骨格復元図はおそらくハネジネズミか何かの姿勢を参考にしていると思うのですが、篠山の哺乳類は現時点ではもっと一般的な形にしておいたほうが良いと思っています。」
他の指摘も含めて、それらを反映させたラフスケッチが次のものである。
blog13032802.jpg
紙に鉛筆。哺乳類の同定は「歯が命」であり、発見されているのも下顎(歯骨)なので、歯の表現はとても重要である。

さらにこのスケッチに対する修正指示メールが届く。
「非常に細かいことを言えば、下顎大臼歯は3本ともほぼ同じ大きさです。第三大臼歯 (一番後ろ) はタロニッド (この手の形の歯の後ろ半分の部分) が後ろへ少し伸びるので若干他より長くなるのですが、このスケールの絵にすると分からない程度の違いです。今の骨格図ですと第三大臼歯が他より大きく見えます。また上顎第一大臼歯のメタコーン (上顎大臼歯の頬側から見える大きな2つの咬頭のうち後ろのもの) がないようにも見えます。篠山の哺乳類は真獣類ですので、第一大臼歯にメタコーンはあるはずです。大臼歯を頬側から見た図は、Mammals from the Age of Dinosaursの496ページ、Fugure13.19のA2、あるいは301ページのFugure13.21のB2が参考になるかと思います。そこまで細かくなくても良いかもしれませんが。」

blog13032803.jpg
ここまでの監修を反映させてペン入れを行ったもの。しかし、大きなミスをしてしまった。
「ただ、下顎と犬歯が元に戻ってしまいました・・・下顎前方の「角」や前縁がやや後ろへ折れ曲がる大きな犬歯はこの哺乳類の特徴なので、そこがわかるとより良いかと思います。また前回気付かなかったのですが、下顎切歯間の歯隙がちょっと大きいですね。それほど歯隙はないです。」
絵があまり大きくないので微妙な表現になるが、やはり最重要な部分をうまく表現できなかったのはかなりまずい。すぐに修正をくわえる。

blog13032804.jpg
「あと一点だけ、もし可能ならば、なのですが、この哺乳類では歯骨のangular processが内側へ曲がっているという特徴があります。咬合面観の写真を添付します。写真下部で歯骨全体の軸からするとやや左側へ向いてとび出しているように見えるのがangular processです。また舌側面観の写真でも良く見ると手前側に向いているのがわかるかと思います(わかりにくいですが)。有袋類で良く見られる特徴で真獣類でも原始的なものにときどき見られます。」
blog13032810.jpg
赤丸の部分がangular process。
イヌなどの頭骨だとangular processは外側にむかって曲がるので、ついつい外向きに描いてしまっていた。実物標本を見ずに画像だけで描いてるので仕方ない部分もあるが、はたして実物化石を見て描いたとしても気がつくかどうか。さすがに鋭い監修である。

blog13032805.jpg
これが骨格図の完成版。ネット上でも公開されているものである。

この骨格図をもとに生体復元のラフスケッチを描く。
blog13032806.jpg
ネズミっぽく見てしまうということで、尻尾にも毛を生やすことにしたのが、次のラフスケッチ。
blog13032807.jpg
これでOKが出たので、すぐに着彩へと作業を進めた。
blog13032811.jpg
作業風景。
blog13032808.jpg
ほぼ一晩で完成。監修者からのOKも出て、無事、記者会見に間に合わせることが出来た。
blog13032809.jpg
グレースケールチェック。色彩の明度に破綻がないことが確認できる。

研究者から手加減なく送られてくる専門用語の洪水を読み解きながらの復元作業はとても楽しいものです。ここを面白がれるどうかが、復元というプロセスを楽しめるかどうかの分水嶺かもしれません。
自分で好き勝手に描き散らす「イメージ画」と「復元画」とは似て非なるものであることを分かってもらえればと思います。

--
twitter

成安小田ゼミのブログ

成安造形大学イラストレーション領域

イラストレーションな日々

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 11:41

2013年3月24日

ひょうご恐竜化石国際シンポジウム2日目 丹波竜の復元プロセス2


前回からの続き。
blog13032117.jpg
比率を計算して四肢の長さを導き出し、その数値に合わせて描いた前後肢。関節の間が大きく開いているのは、ポーズをつけるときの自由度を高めるためである。
blog13032401.jpg
骨盤とその他の部位の関係と比率のよく分かる図版。監修の三枝さんがコラージュして制作したものだが、このときはまだ胴椎や肋骨は修正出来ていない。
blog13032404.jpg
この胴椎、仙椎も修正前。尾椎の大きさを縮尺にあわせたところ、どうしても神経棘突起の高さが合わなくなり、全ての胴椎、仙椎、肋骨、骨盤を描き直すことになったのである。四肢の長さ、全体のプロポーションはあっている。
blog13032416.jpg
胸骨の位置、肩甲骨の角度について検討している。肩甲骨は体幹のどこにも関節していないため、常にどの角度になるかが問題となる。寝かせるのか、立てるのか、その中間なのか。今回はかなり垂直に近いところまで経たせている。その理由は肩甲骨側に上腕骨を受ける大きな関節面があり、垂直近くまで立たせないと、この関節面に大きな荷重をかけることができない。肩甲骨と烏口骨の間には癒合していない関節面があり、この間に上腕骨の加重がかかるような構造にしようとすると、非常に脆弱になってしまう可能性が高い。
blog13032403.jpg
非常に細かな修正指示。こういった積み重ねから、丹波竜の骨格図は作られている。
blog13032417.jpg
そして、これが完成した丹波竜の骨格図。現在、もっとも学術的に正確なもので、監修者がどうしてこうなったかを、全て説明することができるものとなっている。
茶色く塗られている部位は実際に化石として見つかっているもの。黄色く塗られている部位は化石として出ているが、どこの位置か不確定なものである。
blog13032405.jpg
この時点で全てのパーツがそろったと思っていたのだけど、この後、3枚が没になってしまった。1枚はB3サイズ。
大きさもあるため、仕事量のボリュームも大きい。
blog13032406.jpg
制作中の机の上はずっとこんな状態だった。

この骨格図を元に生体復元図の制作に移行していく。
blog13032408.jpg
出来上がった骨格図をトレースして、それを元に肉付けをしてく。まず、筋肉をつけ、その後から皮膚をかぶせていく。
blog13032407.jpg
モノクロの生体復元図が完成。これをさらにトレースして、別のイラストレーションボードにアウトラインを転写していく。
blog13032409.jpg
サイズはB2。カラーインクとアクリルで彩色していく。
blog13032411.jpg
blog13032413.jpg
モノクロスケッチを目の前に置きながら。
blog13032415.jpg
背景は白バックにするので、アウトラインを決めながらをホワイトを置いていく。
blog13032418.jpg
完成。B2サイズ。BBケント細目イラストレーションボード。カラーインク、アクリル。
blog13032419.jpg
blog13032420.jpg
blog13032421.jpg
blog13032422.jpg
ディテール。この後肢のツメ、サイエンスカフェでも問題になった部分で、徳川君の模型と僕の旧復元画では4本になっている。足跡や、同系統の恐竜から4本ツメのものが見つかっていることから、採用したということだったが、現時点では3本が無難なところである。ただし、後肢が全く見つかっていない丹波竜で、確実なことは分からない。

今回の復元は日本国内としては極めて優れた保存状態の標本をもとにしているが、出ていない部位も多い。ほぼ全身骨格が見つかっている、ティラノサウルスやアパトサウルスを復元するのとは全く違ったアプローチが必要になる。しかし、監修者の三枝さんの常に科学的であろうとする姿勢には、大いに助けられた。その妥協のない的確な修正指示に応えていくのは、非常に大変なことではあったけど、改めて自分自身の復元を見つめ直すことにも繋がった。
これほど幸運な仕事が出来ることはそうそうないことである。
このプロジェクトはまだまだ続くので、乞う御期待!



--
twitter

成安小田ゼミのブログ

成安造形大学イラストレーション領域

イラストレーションな日々

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 23:52

2013年3月21日

ひょうご恐竜化石国際シンポジウム2日目 丹波竜の復元プロセス1


2日目はサイエンスカフェで丹波竜の復元模型を造った徳川君とともに、復元画のプロセスについてプレゼンすることになっていた。当初は30名ほどの来場者と、1日目に発表された研究者とともに、お茶菓子でも食べながらゆったりとする予定だったのだが、予想を上回る応募があり、急きょ会場も変更になってしまっったのである。
最終的に集まった人数はなんと150名。同じ敷地内にある、山南ホールでの開催となり、サイエンスカフェではなく、パネルディスカッションのような形態になってしまった。(もちろん当日までに分かっていたことではあります)

当日のプレゼンでは紹介しなかったけど、2008年に描いた丹波竜の復元画(兵庫県立人と自然の博物館収蔵)。
blog13032101.jpg
監修は同じく三枝さんなのだけど、この時はイメージ画に近いもので、頭部の形態が全く違っている。エウヘロプスを全面的に参考にしている。確か、この時点ではまだ頭骨の一部が見つかってなかったと思う。そしてこの復元画がどれほど変化したか、そのプロセスを紹介していこう。

まずは頭骨の歯の修正から。修正する必要があることは昨年末から分かっていたのだけど、手元に原画がなかったこともあり、延び延びになっていた。これまでのものは実際に発見されている歯の標本と比較して小さい過ぎたのである。
blog13032109.jpg
これが修正のための指示書。簡潔ではあるが明瞭で分かりやすい。監修の三枝さんの修正指示は細部にまでわたるが、非常に明解なので修正が容易である。しかし、その分量にもよるのだが。
blog13032103.jpg
blog13032104.jpg
上下の歯の位置の咬耗する箇所が合うように、トレーシングペーパーを使って決めていく。極めてアナログな作業だが確実である。
blog13032105.jpg
ラフスケッチをスキャンしたものを、既存の頭骨にコラージュしてみる。この段階で一度メールで送信。
blog13032106.jpg
OKが出たところでペン入れ完成。
blog13032107.jpg
上下の咬耗も問題ない。
blog13032108.jpg
そして、この頭骨を元に頭部の生体復元図も修正。歯がかなり大きくなったので、修正箇所も口周りの大部分となってしまい、予想以上に時間がかかってしまった。

ここから全身骨格図の復元プロセス。
blog13032110.jpg
まず胴椎のスケッチから始める。上段はブラキオサウルスを参考にしたため、神経棘突起の高さが低く、今回の復元には合わないものだった。
blog13032113.jpg
監修を経て、ペン入れまで完成したもの。胴椎、仙椎、尾椎の一部。
blog13032111.jpg
頚椎のごく初期段階のラフスケッチ。
blog13032112.jpg
完成した頭骨と頚椎。B3のイラストレーションボードに収めるため、頚椎は二分割で描いている。
blog13032114.jpg
頭骨から仙椎までをPhotoshopで繋いだもの。まだ脊柱の角度は決定していない。こういったことが出来るのがデジタルの強みである。
blog13032115.jpg
肋骨のスケッチを完成している胴椎にコラージュしてみたところ。
blog13032116.jpg
プリントアウトしたものに、フリーハンドで四肢をスケッチ。
blog13032118.jpg
骨盤。
blog13032123.jpg
四肢の比率を表した書き込みのある画像。これを元に前肢、後肢の各部位の長さを決定していった。
blog13032119.jpg
尾椎。
blog13032120.jpg
繋げたもの。血道弓の角度も変えている。非常に長い血道弓が特徴的である。
blog13032124.jpg
ここまできて、肋骨の関節位置に修正の指示が届く。しかし、この後にさらなる大きな修正が必要になってしまったのである。胴椎、仙椎、骨盤、肋骨、全て描き直しとなったのである。
blog13032121.jpg
こちらが描き直した。胴椎、仙椎。骨盤、肋骨。
blog13032122.jpg
肋骨を関節させたもの。

そして、まだまだ続きます。



--
twitter

成安小田ゼミのブログ

成安造形大学イラストレーション領域

イラストレーションな日々

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 23:17

2013年3月16日

ひょうご恐竜化石国際シンポジウム1日目


ひょうご恐竜化石国際シンポジウム1日目
blog13031601.jpg
1日目は兵庫県三田市にある兵庫県立人自然の博物館で国際シンポジウムが開催された。国内外の第一線で活躍する古生物研究者が招かれ、丹波竜の研究を進めている人と自然の博物館の三枝研究員の基調講演をもとに、7人の演者の講演が続けて発表された。
実は連日の激務でほとんど起きて聞いていることが出来なかったのが悔やまれる。
こちらのまとめが秀逸。講演要旨を見ながら、なんとか睡眠学習の成果を想い出そうとしている(無理だけど)。

この日は夕方から講演者との懇親会が設定されており、牡丹鍋に舌鼓をうちながらの楽しい宴会だった。
blog13031602.jpg
blog13031603.jpg
イノシシは何度も食べているけど、ちゃんとした牡丹鍋を食べたのは初めてだった。
blog13031604.jpg
17日に初お披露目になる丹波竜全身骨格図を、一足先に関係者へ公開。比較的大きなサイズで原画を制作していたため、繋げてみると約2mの大作になったものである。
blog13031606.jpg
blog13031607.jpg
blog13031608.jpg
blog13031609.jpg
blog13031610.jpg
blog13031611.jpg
僕の思い付きから、この出力プリントに関係者全員でサインをいれてもらうことに。
blog13031612.jpg
サイン入り骨格図は、もちろん丹波市に納めてきたのだけど、すごく思い出に残る記念の一品となった。
blog13031605.jpg
こちらは徐星さんに、図々しくも酒席で監修をお願いしているところ。

この日の様子はひょうご恐竜化石国際シンポジウム その1でも詳しく紹介されています。

2日目に続く。






--
twitter

成安小田ゼミのブログ

成安造形大学イラストレーション領域

イラストレーションな日々

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 23:16

2013年3月10日

薮内正幸原画展


blog13031001.jpg
今日、たまたま別の展示を見に行く目的で3331 Art Chiyodaに行ったところ、薮内正幸原画展が開催中であることを知り、急きょ展示を見ることにしたのであった。会場に行くと、ちょうど御子息である薮内美術館館長の藪内竜太氏のギャラリートーク中で、そのまま椅子に座って話しを聞くことになったのである。後で時間を確認するとすでに1時間ほど話された後だったと思うのだけど、非常に興味深い話しの数々で楽しむことができた。

薮内氏は最初、福音館書店の社員として働くことになる。仕事は動物のイラストレーションを描くこと。福音館には図鑑を出版する目的があり、その全ての動物のイラストレーションを描くという遠大な作業に従事していた。監修者からの度重なる修正、数百種の動物を描くために、それぞれに数百枚のスケッチを要したという。しかも、全てが出来上がった時、上達したためタッチが最初と最後で違ったことを指摘され、さらに全てを描き直したというからすさまじい。僕の仕事の修正など可愛いものだ。
ところが、最初の3巻分が印刷所に納品されていたにも関わらず、出版社の経営判断でこの図鑑シリーズの出版は見送られる。相当な落胆だったそうだ。それはそうだろう。想像を絶する事態である。晩年になってもずっと、心の中に埋められない穴として残ってしまっていたらしい。

でも、その後、動物絵本という新しいジャンルを築いて次々とヒット作を連発する。いまでも多数が出版されている。代表作に『どうぶつのおやこ (福音館の幼児絵本)』、『しっぽのはたらき (かがくのとも傑作集―どきどきしぜん)
』、『冒険者たち――ガンバと十五ひきの仲間
』などがある。

動物イラストレーターとして忙しくなった薮内氏は、その後、福音館書店を退社。フリーランスとしてさらに活躍の場を広げていく。代表作はサントリーの愛鳥週間シリーズの挿し絵。それらの一部を今回見ることが出来たが、原寸大に描かれたイヌワシやアホウドリの迫力は圧巻だった。

まったくの偶然だったが、思いがけず良い空間と作品に出会うことが出来た。
小規模な展示だが、素晴らしい展覧会である。会期の日数も残り少ないので、興味のある方は是非!



--
twitter

成安小田ゼミのブログ

成安造形大学イラストレーション領域

イラストレーションな日々

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 23:39