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2010年6月 5日

『孤高のメス』

夜、妻と映画のレイトショーを観に行ってきた。
観てきたのは医療ドラマ『孤高のメス』。
静かに心をゆさぶる映画だった。危機的な事態に直面し、重大な判断を下さなくてはいけない場面になり、物語はクライマックスへと進んでいくのだが、そこには安っぽい盛り上がりはなく、主人公である医師とそのチームは淡々と、そして粛々と自分たちがやるべき仕事をやり遂げていく。物語が平坦なのではない。人間がある事実に対峙したとき、全力を持って向き合うしかないのだと、そんなことを教えてくれる映画である。
映画作りにも、それは表れていた。数多く外科手術のシーンが出てくるが、医療関係者が見ても納得のいく映像になっているらしい。それだけのものを作り上げるには、膨大な時間の試行錯誤と検証が必要だったはずだ。おそらく監修にあたった医師も辛抱強く指導にあたったことだろう。
派閥を作り保身に明け暮れる医師たちも登場するが、主人公たちと物語の上で接点を持つことは全くない。そこに余計なやりとりがないことで、随分と物語をシンプルなものにしている。それぞれの登場人物が自分の役割を全うしようとしており、それがチームワークとなって涙の涸れることのない一作に作り上げたのだろう。
本物の医師が出てくるテレビのドキュメンタリー番組よりも、はるかに「事実」に重点を置いた演出がなされている印象を持った。
また、パンフレットが出色の出来である。無駄を廃して丁寧に作られていて、見終わった後に読むと、より強固に作品世界を知ることが出来る。パンフレットに余計な第三者の賛辞などいらない。

見終わった直後にもう一度「観たい」と思う、そんな1本である。

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成安造形大学イラストレーション領域

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投稿者 corvo : 2010年6月 5日 23:59