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2010年4月30日

完敗

今日は日本武道館でボクシングを観戦。
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春らしさを通り越して、暑さを感じるほどの晴れ渡った日。門の前で待ち合わせて会場へ。
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ダブルタイトルマッチ。4時前には会場に入ったので、前座の4回戦からしっかり観戦できた。
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縁あって、こんなに近くから観ることができたのだけど、リング上の様々な音がよく聞こえて臨場感が半端ではない。2006年に観戦したときも一階席でかなり良い席ではあったが、さすがに比べ物にならないほどの迫力だった。
前座の4回戦からハイレベルな試合が続く。ほとんどの選手がデビュー戦か2戦目というのに、良くトレーニングされたプロの動きを見せてくれた。特に3試合目の尾川堅一が素晴らしく相手を圧倒していた。脇腹から時折のぞく、パンチを出す前にくっきり盛り上がった広背筋と前鋸筋の充実度も素晴らしかった。ついつい筋肉や骨格の構造を観察してしまう。

次の試合は、元フェザー級世界チャンピオン粟生隆寛vsワイベル・ガルシア。正直なところ序盤はちょっと「睡魔」におそわれてしまった。それまでの4回戦ボーイの試合のほうが緊張感があってスリリングだったので、余計に「眠く」感じてしまったのかもしれない。結果は8回1分48秒TKOと勝利したのだけど、この日もっとも退屈な試合だった。

いよいよ次はWBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦、西岡利晃vsバルウェグ・バンゴヤン戦。挑戦者は若く無敗のフィリピン人。客席はほぼ満席に。会場の雰囲気も一気に高まってくる。
結果は5回1分14秒TKOと西岡の圧勝だったが、1ラウンド目からリング上の緊張感にはすさまじいものがあった。終始プレッシャーをかけ続けるチャンピオンに、挑戦者は手数も少なく再三ローブローを繰り返し、反則で減点をとられる展開。4ラウンドまでの採点では3ー0で西岡。5ラウンド、たまらず前に出てきた挑戦者に見事な左ストレートが決まる。会場中が最高の気分に包まれた瞬間だった。

そして、いよいよメインのWBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦 、長谷川穂積vsフェルナンド・モンティエル戦。選手入場時の盛り上がり、会場のどよめきは、間違いなくこの日一番だったが、その後訪れる静けさとの落差はこのときは想像すらできなかった。

すごく濃密で充実した空間だった。でも、終わった後の虚脱感、喪失感は、場内全体を包み込んでいた。まさに完敗。一瞬の出来事だった。
まったく手を抜くことなく厳しく準備をしてきた一流のアスリートが凌ぎを削ったリングでの攻防は、1ラウンド目から研ぎ澄まされた緊張感をたたえていた。リング上ではないが、同じ空間を共有できたことは大きな喜びであり、素晴らしい経験であった。しかし、チャンピオンが負けた瞬間の気持ちはいまだに整理できていないかもしれない。静まり返った会場に聞こえたのはスペイン語で歓喜するメキシコ人の声と、さあっと血の気の引く自分自身の音だけだった。あと少しで涙も流れそうになるほどのショックだったことは間違いない。
本当にすごいものを観ることができたのだが、大きな感動とともに整理できない失望感が混ざり合って、なんとも形容のしようのない余韻を引きずっている。
いまはしっかり休んで、また最高のボクシングを見せて欲しい。今回、負けたとはいえ「これぞプロボクシング」と言えるほどの密度の高い攻防だった。
結果は残念だったが、最高のイベントであったことは間違いない。その場に立ちあえたことに、大いに感謝する。

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投稿者 corvo : 2010年4月30日 23:50