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2010年1月10日

日本美術解剖学会・設立記念大会、無事終了

昨日、開催された『日本美術解剖学会・設立記念大会』が無事終了した。
新しくできた学会のお披露目という意味合いが強かったため、レジュメなども準備されておらず、配られたのは発表者の簡単なプロフィールだけであった。僕自身も、他の発表者がどんな話しをするかは、事前にまったく分からない状態でシンポジウムに臨むことになった。
午後1時スタートの予定だったが、予想以上の来場者で受付に長蛇の列ができてしまったため、すこし時間が押してしまった。中央棟の第一講義室は、ほぼ満席。こんなに席が埋まるとは思っていなかったので、嬉しい誤算だった。始まる前から熱気を感じる。

最初の1時間ほどは、講演が2本。司会は松井冬子さん。事前に聞いてなかったので、ちょっと驚いた。
「聖なる肉体」 …伊藤俊治(東京藝術大学教授)
「国宝・阿修羅展・・光の演出による表情の見せ方」…木下史青(東京国立博物館デザイン室長)

木下さんの講演の後、休憩に入る直前に(ちょっと時間が押しているところを)無理無理質問をさせてもらった。以前から気になっていたことで、寺社仏閣に設置される事が想定されている仏像などを、博物館などで新たに展示することを、デザイナーとしてどう考えているのか?ということだ。
博物館では360度全方向から見る事ができ(そうでない展示もあるが)、まったく新しい側面が見られる事で新たな発見をすることもある。講演の中で解説されていた照明による表情の移り変わりは、僕が予想していた以上に大きな変化を伴っていた。もう、全然別物の彫刻といってよいほどの違いを見せてくれる。これは仏閣に安置された状況では、見ることが出来ないだろう。木下さんはそういった点をポジティブに捉えて、展示デザインを考えているという事だった。どこまでもベストの答えは出ないだろう。展覧会も一期一会、体調や精神的なことにも左右される。
ただ、大混雑した会場では見たくない。話題になった展覧会に、極端なほど人が集まる状況は、どうにかならないのだろうか。実は「国宝・阿修羅展」見に行けなかったのが、何時間も待たなければ入れなかったということで、会場に行けたとしても入る事を断念していたのは確実だ。

15分休憩の後、3時からいよいよシンポジウムがスタート。
松井冬子さんの発表は、自作の制作プロセスについて。ノートパソコンを使わずに投影機を使いながらのプレゼンを久しぶりに見た。
順天堂大学の坂井建雄教授は、解剖書の図版を使用しながら、人体の骨格と筋肉との関係を分かりやすくひもといていく。なるほどこういう方法があったかと、勉強になった。絵を描く場合、どうしても表層の筋肉に眼が行きがちで、骨との関係がおろそかになってしまうことがあるが、同じ部位の骨格図と筋肉図を繰り返し見せることで、おぼろげながらもイメージ出来てくるようになってくるというしかけである。使われていた解剖書は僕もよく参照にする、プロメテウス解剖学アトラス(日本語版の監訳を坂井先生が担当されている)だった。
僕が授業でやろうとしている内容にもっとも近く、非常に興味深かった。
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次が僕。まず古生物の復元から始めて、skullシリーズの制作プロセス、最後は最近作の紹介で締めくくった。
前半の復元については、これまで何度も話をしてきたが、この場では初めての人も多いと思い話すことにした。
トリは東大総合研究博物館の遠藤秀紀教授。遠藤さんとは数年前にほ乳類学会でお会いしたことがあって、久しぶりに話をすることができた。彼の発表はおそらくこの日、一番インパクトがあっただろう。テーマが「科学の骨、美術の骨」だったにも関わらず、出てくるのは、動物の内蔵やら生首やら血に染まった画像の連続。軽妙な語り口とのコントラストも、多くの注目を集めた要因だろう。もちろん最終的には、「骨」の話へと収束していく。動物の遺体を後世に残すことの意義を熱く語る姿勢は、彼の著書でもある『解剖男』そのものであった。
シンポジウムの肝である、討論の時間がほとんどなくなってしまったのは残念だった。会場からの質問を受けることもできなかったので、発表に対する反応も知ることが出来なかった。
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シンポジウムの様子。

午後5時から懇親会。
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楽しく、いろいろな人と話すことができた。見に来てくれていた友人も、発表者に積極的に話しかけて盛り上がっていたようだ。

二次会は友人たちと、「焼き鳥のいわさき」で飲み会。11時まで多いに飲んで食べてしゃべった。各地から集まったメンバーで、一番遠かったのはなんとロサンゼルス。懇親会から通算すると6時間。とにかくしゃべり続けた1日だったかも。
でも無事に終えることができて、ほっとしている。これから、多いに盛り上がっていってほしい。
興味のある方、どんどん入会してください。

こちらで当日の様子が、学生スタッフのレポートで読めます。

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投稿者 corvo : 2010年1月10日 23:50