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2008年12月 7日

美術モデルHiroさん

昨日は、ネットのやりとりがきっかけで知り合った美術モデルのHiroさんが、僕の勤める成安造形大学に遊びにきてくれた。Hiroさんは日本で唯一、おそらく世界的にも珍しい、美術解剖学に精通した美術モデルだ。筋肉の動き、仕組みについては、間違いなく僕よりも詳しい。また、彼はヨーロッパで美術モデルを始めた経験があり、海外の美術教育の状況についても興味深い話しを聞くことが出来た。
やはりヨーロッパでは現在でも人体を描く事は盛んに行われているらしい。もっとも驚いたのはロシアなのだけど、1年間のクロッキーのノルマが10000枚なのである。千ではなく、万である。250日間、大学に通うとすると1日あたり40枚の計算になる。毎日、ヌードモデルが待機して描けるような環境をつくらないと、実現はできないだろう。
昨今、経費削減のあおりを受けて、多くの美術大学でヌードモデルを描く機会が減っていると聞く。これは由々しき問題だ。僕たちは人間だ。人間に興味を持って、人間を描く事は、ごく自然な事だ。その自然な行為が、美術大学から失われていく事に、大きな危機感を感じる。幸い、成安造形大学のイラストレーションクラスでは、人体を描く事の重要性が共通認識としてあり、「もっと充実させたい」という希望も持っている。

Hiroさんのエントリー「成安造形大学 − 再発見しました」のコメント欄の「中部地方の美術モデルです」さんの 書き込みにも驚いた。モデルなんて必要ない、と発言する美術大学の教員がいるとは。
現代アートの中心はいまでも欧米である。その欧米で、盛んに人体を描く事を今でもやっているのである。現代アートだからといって、人体を描いたり作ったりすることを否定していたのでは、彼らと闘っていく事は全く不可能だろう。
最初から負けにいくようなものだ。かつての大戦のように。

僕にとっても、とても良い刺激になった一日だった。Hiroさん、ありがとうございました。

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成安イラストレーションクラスニュース

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投稿者 corvo : 2008年12月 7日 13:28