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2008年8月 9日

『対決ー巨匠たちの日本美術』

今日はある模型のための図面描き。図面と言っても、それほど大層なものではないが、こちらの意図が正確に伝わるように描かなくてはいけないし、調べることも多く地道に手を動かすという一日だった。夕方までその作業に没頭した後、買い物と特別展『対決ー巨匠たちの日本美術』を見るため都内まで出かけてきた。上野へ行く前に秋葉原へよったのだけど、未だに歩いていると緊張する。しかもうだるような暑さの中、頭がおかしくなりそうだ。

その後、上野に着いたのは午後6時を過ぎていたというのに、少しも気温が下がらない。風もなくじっとりとしている。
博物館に入って涼しさに一息つけるかと思っていたら、予想以上に人出が多く室内の気温も上がり気味。ちっとも汗が引かない。コインロッカーの空きがなかったため、メッセンジャーバッグを背負ったままの観覧になってしまい少々つらかったが、展覧会自体は非常に面白く、興味深かった。

まずは、鎌倉時代を代表する仏師、運慶と快慶。見事なほどに違う個性を発揮していた。今日の作品を見る限り、どちらが好きかと問われれば、僕は運慶だ。二人とも地蔵菩薩を彫っているのだけど、運慶作は顔が美しく、そのたたずまいも自然な人間らしさにあふれていた。一方、快慶作は表情や姿勢が硬く、あまり良い印象を持つことができなかった。それを補うためなのか、快慶作のディテールの作り込みは凄まじかった。着ている衣の繊維まで再現するかのような、手の入り方である。それに比べると運慶作のほうがディテールはあっさりとしている。

次の雪舟と雪村。雪村の人体表現は見れたものでない。他に良いものがあるのかもしれないが、人体はうまくない。でも、これまでほとんど見たことがなかったので、新鮮な気持ちで見ることが出来た。
その次の永徳と等伯は、等伯のほうが、圧倒的に面白い。何とも説明のしようがないのだけど、面白い。思いつきもしないような画面構成と言えば良いだろうか。等伯を見るたびに、漫画「へうげもの」の等伯の顔が思い出されたのはここだけの話だ。
陶器になると僕はほとんどわからないので、ほぼスルー。しかし、お客さんは集中して熱心に見入っている。絵画などよりもわかりやすいのだろうか。

他に面白かったのは、応挙と芦雪。僕は芦雪の方が好きだ。というより、応挙があまりに好きでないことが大きかったかも。虎図は芦雪の方がずっと面白いし、生き生きとしている。応挙は虎の皮をモチーフにしたらしいが、絵まで同じように死んでしまっているように見える。実際に見たことがなかったから難しいとは思うが、猫をモデルに描いた芦雪の方にずっとリアリティを感じることができる。
ここではたと気がついたのだけど、ジーンズのファスナーが全開だった。シャツを外に出してきていたのでそれほど目立っていなかったと思うが、実に「残念」なことになっていたのである。気を引き締めて。次。

僕がこの展覧会を見に行った最大の目的は「曾我蕭白」である。僕はこれまで日本で開催された「曾我蕭白展」は、おそらくほとんど見に行っているほどの、蒼白フリークだ。展示されていた作品はすべて見たことがあるものだったが、非常に良い作品を選んでくれていてうれしかった。その対決相手というのが、伊藤若冲。僕の中では鼻から勝負にならないと思っている。方やプロであり。方や隠居した旦那の趣味である。若冲もわざわざ日帰りして京都まで見に行くほどなのだけど、その画力の差はいかんともしがたい。今回、初めて若冲の「仙人掌群鶏図襖」を見たのだけど、画集で見た記憶のままに押しとどめておけば良かったと思ってしまった。絵の傷みのせいもあるのかもしれないが、それほど描写に密度もないし、所々緊張感がなくなってしまっているところがある。ふっと気が抜けてしまっているというか。
逆に、これまで何度も見てきた曾我蕭白の「群仙図屏風」だけど、いつ見ても新たな発見があって好きな絵だ。画面の緊張感が、若冲とは比べ物にならない。一つ一つの仕事の丁寧さも圧倒的だ。曾我蕭白が好きでたまらない僕としては、いつも若冲の評価は辛くなってしまう。
本当におおざっぱなレポートでしかないのだけど、おすすめの展覧会です。17日日曜日までなのでお盆休みにでも足を運んでみてはいかがでしょうか。


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投稿者 corvo : 2008年8月 9日 02:40