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2008年08月16日
ポニョ、スカイ・クロラ 2
前回のエントリーの続き。
スカイ・クロラは結論から言うと、僕は好きだ。小説は全シリーズは読んでいないが、最初にこのスカイ・クロラを読み、映像化の話を聞いたときはかなり期待した覚えがある。でも、小説自体はそれほど好きになれなかった。我々の世界と少しだけ似ている架空の世界の話。SFでもなく、現代劇でもない。架空の世界であるなら、想像力の翼を広げて濃密にその世界観を描きそうなものだけど、この作者は抑制した筆致で淡々と、その異常な世界の日常を描写している。もっとも力の入っている描写は、空戦における戦闘機の動きだ。それは映画でも同じなのだけど、地上の世界も映像化しなくてはならない制約があるため、小説とは違ったバランスの世界になっていたように思う。CGをフルに使って描かれる空戦の迫力と同じように、淡々と、しかし少しのざわめきを内包しながら続く地上の日常も、きちんと丁寧に描かれていて映画の世界に没入することが出来た。
ただ、時々さめてしまう瞬間があったのが、個人的には残念だった。これは本当に主観的なものでしかないのだろうけど、クサナギ・スイトが『イノセンス』のアンドロイド(セクサロイド)に見えてしょうがないのである。姓もクサナギだし、バトーでなくても「もとこおお」と叫びたくなった、わけではないが、同じ監督、同じ制作会社だとしても、もう少し差別化は出来なかったのだろうか。バセットハウンド犬の存在もその印象を際立たせてしまう。
はっと見開いた表情のカンナミは、館に迷い込んで電脳ハックされたトグサに見えるし、クサナギの部屋のオルゴールが僕をイノセンスの世界に引っ張ろうとする。声優として竹中直人も参加しているしなあ。
この物語は戦争の是非を問うものでもないし、命の尊厳を謳っているわけでもない。人間がある時期、通らなくてはいけない、甘酸っぱくて、後悔したくなるような現実ばかりの日々や、自分の力不足から、絶対に乗り越えられない壁に向かってもがき続け、苦しみ、傷つき、悶々とする日常や、時には衝動的に自分で自分を痛めつけてしまったり、自暴自棄になってしまう、そんな誰にでもある、ある時代の象徴が描かれているのだと思う。悲劇的なのは、この世界の登場人物がそんな日常を、延々と繰り返さなくてはならないことだ。しかも、何度でも繰り返される死の中で。
もう一度、劇場で見ておきたいかな。そう思わせる一本である。
ポニョもスカイ・クロラもそうなのだけど、人体の描写の不自然なところが目についてしょうがないことがある。デフォルメされていると言っても、あまりに人としておかしなデッサンの狂いを見てしまうと、興ざめしてしまう。
一番大事なシーンのはずなのに、泣きながらカンナミに抱きつくクサナギの表情は、かなりひどかったぞ。一気に感情が爆発するあの場面は、アニメーターとしては描きどころだと思うのだけどなあ。
とは言っても、僕は好きな作品である。
投稿者 corvo : 2008年08月16日 02:50
コメント
ぼくも観たので、少し書きました。どうもやっぱり(当然なのでしょうが)注目点は違いますね。
http://schutsengel.blog.so-net.ne.jp/2008-08-14
クサナギ、と云う名前はどちらも原作どおりなので偶然なんでしょうけど(いや、原作の森博嗣になんらかの意図がある可能性もあるか)、妙なところで文脈のノードができてしまう点についてはぼくも気になりました。
ぼくは押井守の作品を熱心に見るほうではないのですが、物語のテーマとしては原作とは違えてある(と云うか、原作の要素だけを使って自分の描きたいものをつくった)と云うことなのではないかと思いました。そう云う手法を採ることに抵抗のないひとであるようなので。
投稿者 pooh : 2008年08月16日 11:29
私もちょうど昨日観てきました。近所の映画館が改装で閉鎖中なので、60キロ離れたショッピングセンター併設のシネコンまで。
草薙指令が泣くシーン、自分も気になりました。「あ、別人になっちゃった」って。アニメらしい人形のような顔に、急に筋肉が生じて皺ができるような感じでしたね。そういう狙いだったのかもしれませんけど。声ももうちょっとでしたね。本部に食って掛かるシーンとかも。やはり声優でない人は、激しい感情を表現する部分で、いまいちになり勝ちですね。
投稿者 A-WING : 2008年08月16日 11:45
「ドラマをやるアニメーターになるには20年かかるのに、これまで次世代の職人を育てることをしてこなかった。そのために作画レベルは今後当面低下の一途をたどることになる。CGのせいではなくて後継者がいないからだ、「攻殻機動隊」や「イノセンス」のような作画に大きく依存するような作品は、多分もうできないと思っている」
と押井監督自身が日経新聞のインタビューで語っていました。
一生懸命コツコツすることはくだらないことだと考えた風潮のツケが、これからいろんなところで出てくるのだと思います。
投稿者 しのぶん : 2008年08月16日 13:16
スカイ・クロラは見てないです。アフレコやってるのが加瀬 亮と菊池凛子なのと、飛行機が震電っぽいのはCMで知ってますが・・・
アニメは、もはや作品じゃなくて単なる商品と化してますよね。
客寄せに話題の俳優やらお笑い芸人やら使ったり・・・
もちろん実力があるのならいいんですが、明らかに棒読みでヘタクソすぎて・・・萎えますよね。あからさますぎます。
投稿者 ニヤゾフ : 2008年08月16日 19:49
>poohさん
実は、このエントリーを書く前に拝見していました。かぶらないように書こうという意識はありました。押井守を全部見ているわけではないですが、もがきながらも結論を出そうとする作家ではないかなと思っています。その点、宮崎駿のほうが放りっぱなしのような気がします。
原作に敬意をはらいつつ、きちんと租借しようとしてるのだと思います。
名前は偶然だと思うのですけどね。まさか、小説を書いている段階で押井が監督して映像化されることなんて想定していなかったでしょうし。
>A-WINGさん
60キロ遠いですね。
描けないなら描けないで、シルエットにして涙だけ描くとか、光をもっと効果的に使うことも出来ると思うのですが、無理無理やってしまったように思いました。正直、見るに耐えなかったです。
声、違和感ありましたね。声優をなぜ使わないのか。
>しのぶんさん
なんとか、教育者のはしくれとして抵抗したいと思っています。でも今の学生が育っても20年後ですもんね。
コツコツすることは尊いことだと、口を酸っぱくして伝えていきたいと思っています。
>ニヤゾフさん
下手な俳優は多いですね。声優のスキルをなめていると思います。
声優ももっと声を出して抗議しないのかな。
アニメはパッケージの一部なのでしょうね。
投稿者 corvo : 2008年08月17日 02:35
今晩は。
森作品はほとんど読んだけど映画は未見な人です。
個人的には、作画と同じくらい声を気にするので、非声優(本質的には、こちらはどうでも良いのですが)かつ演技が稚拙な人をキャスティングするのは、物凄く嫌だったりします。
キャスティングする人間は、話題性ばかり考えて、作品として完成させるつもりが無いのでは、と思います。ここ数年はひどいですものね(今作は、そういうのとは別の思惑だったようですが)。
声優の中では確か、山寺宏一さんが苦言を呈されていたと記憶しています。
プロモで空戦のシーンを観て、若干3DCGの出来に不安を持っていたのですが、皆さんの感想を読むと、とても良い出来だったみたいですね。
投稿者 TAKESAN : 2008年08月17日 03:47
個展は見に行けませんでした残念です。
スカイクロラは見てきましたよ。
原作は文体が気に入らないけど我慢して読んでました。
空戦シーンは映像化したら面白いだろうなと思ってて。
確かに空戦シーンは迫力があって面白かったです。
押井守は、原作アレンジャーとしては良いですね。
幼少時に見たオリジナル実写作品のトラウマが…。
投稿者 ゆー : 2008年08月17日 12:37
>TAKESANさん
こんばんは。レス遅くなりました。
森作品はほとんど読んでいませんが、押井作品はそこそこ見ています。
声が気になるとなると、スカイ・クロラもすごく気になってしまうと思います。
ハリウッドスタイルなのですかねえ。
声優のスキルというのは、やはり特別なものがあると思います。職人としても、職業としても大事にしてほしいです。
空戦のシーンは見応えあると思います。
>ゆーさん
文体は僕もちょっと苦手です。
実は空戦シーンよりも、地上のシーンの方が僕は好きでした。
実写作品のトラウマって「紅い眼鏡」ですか?
投稿者 corvo : 2008年08月19日 22:14
実写作品、そうそう「紅い眼鏡」です。
12歳の少年が見るには、適当じゃないですよね。
「ケルベロス」は高校入学する時に見たのかなー。
どちらもサントラCDは愛聴しておりましたが。
映画として気軽に楽しめるのは「人狼」ですかね。
特機隊の物語は、藤原カムイの漫画が好きです。
投稿者 ゆー : 2008年08月20日 22:48
>ゆーさん
12歳という年齢にはきついですね。サントラ買おうかなと、いまでも迷っています。僕は高校生のときでした。
漫画も持ってます。乾いた絵柄が、非常にあの世界とあっていたと思います。人狼はよく出来た映画だと思います。とても大当たりするとは思えないですが、良作ではないでしょうか。
投稿者 corvo : 2008年08月21日 09:28


