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2008年1月27日

SCBWIイベントと自費出版ビジネスの問題

昨日の土曜日、このblogでもお知らせしていたSCBWIのイベントに参加してきた。8名の絵本作家、イラストレーターによるプレゼンだと思っていたのだけど、当日会場に着いてみると9名の参加ということになっていた。直前に滑り込みでプレゼンの希望者が現れたらしい。僕は2番目のプレゼンで、ポプラ社のアパトサウルスと、今準備している新作について10分ほどのプレゼンを行った。時間が短かったので、かなり端折ってのプレゼンだったのだけど、以前のイベントで知り合ったパトリックさんの的確な英訳もあり、自分の伝えたいことは簡潔にではあるが話せたと思う。 
こういったイベントに出ると、少ないながらも良い出会いがある。イベント終了後の懇親会も含めて、とても楽しいひとときだった。
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ただ、ひとつ気になることがあった。今回のイベントは近年出版されたか、または新作についてプレゼンすることになっており、自費出版については除くということになっていた。ところが、どう考えても自費出版と思しきプレゼンが一つあったのである。質問する時間がなかったので本人に直接確かめてはいないが、ある有名な自費出版社からの出版であったことと、「多くの図書館に購入してほしい」という発言から、自費出版であると僕は判断した。
特に児童書や絵本は、全国の図書館や学校関係に購入してもらうことで成り立っている部分がある。だから、通常の出版社で出版された本は、ほぼ自動的に図書館へ入るはずである。そうなっていないということは、自費出版だと思われても仕方ないだろう。ただし、あくまでも推測であり、事実を確認したわけではない。

少しまえから、友人のblogでも話題になっていた自費出版ビジネス。こんな形で身近な問題として出会うことになるとは思わなかった。
僕個人としては、自費出版ビジネスには否定的である。必要ないとも思っている。知人、友人、家族などに配るために本を作りたいという、極めて個人的な欲求によるものまで否定する気はないが、プロを目指すなら関わるべきではないと思う。
本当に読むべき価値、伝えるべき価値があると思うなら、とことん通常の出版社へ挑戦することが大事だ。良い編集者との出会いがあれば、出版につながる可能性も出て来る。お金さえ負担すれば、どんな内容(自費出版社では精査していると主張するのだろうが)でも出版できてしまうのは、何かがおかしい。
書店の数、売り場面積は限られている。日々出版社は棚の場所取りに腐心している。そんな現実の中で、自費出版物は売り上げを伸ばすどころか、書店に並ぶ確率も限りなく低い。本当に良いと思うコンテンツなら、自費出版するべきではない。
昨日プレゼンされた絵本も、本当に良い内容だったしても自費出版されたという事実から、書店からも敬遠されてしまう。アマゾンのようなネット書店では平等に扱われているが、その本を知っていなければ検索に引っかかることもない。その本のイラストを描いたという方がプレゼンターだったのだけど、絵は素人だということだった。それなら何故、プロに依頼して絵本にしなかったのか?あくまでも個人的な見解を述べれば、その絵はとても出版物として耐えられる質のものではなかった。
本当に伝えたいと強く思うのであれば、生半可なことはするべきではないのである。
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投稿者 corvo : 2008年1月27日 22:38