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2007年11月12日

第128回化石研究会例会

昨日、ここでも紹介した化石研究会例会に参加して来た。会場は早稲田大学で、今回の世話人は平山廉さん。例会へは非会員でも無料で参加できる。僕もまだ会員にはなっていない。
古生物学会やSVPの発表だと、15分から20分ほどの講演時間しかないので、少し消化不良かなと思うことが多いのだけど、この例会では1人たっぷり1時間。それぞれの講演者からじっくり話を聞くことができた。
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1:三枝春生(兵庫県立人と自然の博物館)
「兵庫県丹波市の篠山層群から脊椎動物化石の発見」
今年、一躍有名になった「丹波竜」の話。一次発掘調査も無事終わり、クリーニングも進んでいるようだ。残念ながら、ここで詳しく述べることはできないが、素晴らしい保存状態であることは間違いない。現在、発見されているのは、関節した尾椎、血道弓、脳函の破片、獣脚類および鳥脚類の脱落歯。クリーニングが進むと、新しい発見がある可能性も高い。これからも継続的に発掘は行われる計画になっており、全身骨格の発見にも希望が持てる。

2:平山 廉(早稲田大学)
「巨大恐竜・竜脚類の古生態を類推する」
平山さんの著書「最新恐竜学」で述べられていた竜脚類についての考察を、もう少し踏み込んでの講演。「最新恐竜学」が出版された同時期から、竜脚類の首の姿勢についての論文がいくつか発表されているが、平山さんのアイデアを裏付ける結果が多く見られる。でも、まだ十分とは言えず、平山さん本人による新しい論文の発表が待たれる。
竜脚類ほどユニークな存在はいないだろう。首と尻尾が長大で大きな胴体を持ちながら、四肢は地面に対してまっすぐに立っている。現生のほ乳類であるゾウの場合は、前後の重量配分は少し上半身よりであるが、竜脚類はかなりの重量を後肢で支えている。もともと二足歩行の恐竜から進化していると考えられるからであるが、あれほど長い首を持ちながら、後肢よりに重心があることは、にわかには信じがたい。しかし、前肢に比べて後肢が太く、足裏の面積も大きいことや、残された足跡の深さから推測することができる。
見れば見るほど、奇妙な動物だ。僕にとっても、もっとも興味深い古生物のひとつである。

3:鈴木 茂(林原自然科学博物館)
「林原自然科学博物館 モンゴル共同調査の15年とその成果」
モンゴル発掘の歴史から始まり、1993年から毎年継続的に行われている、林原自然科学博物館とモンゴル科学アカデミー古生物研究センターとの古生物学共同調査のレポート。
2006年まで有明のパナソニックセンター内「ダイノソアファクトリー」で、その成果の一部を見ることが出来たのだけど、残念ながら今は閉鎖されてしまっている。岡山県内に新設される博物館の公開が待たれるが、もう少し開館は遅れるようである。私企業が母体となっている、自然史系博物館は日本初ではないだろうか。博物館のアートディレクションについて質問をしたのだけど、欧米のような体制をとることは、私立であっても難しいようだ。本来なら国立科学博物館が先頭に立って具現化するべきだと思うのだけど、結局展示会社におんぶに抱っこのような状況で、博物館の展示は作られていってしまっている。

4:小林快次(北海道大学)
「『ダチョウ型恐竜』オルニトミムス類の進化と生態復元」
オルニトミムス類はそれほど馴染みのない恐竜からもしれないが、歯のない獣脚類である。歯のないことから、植物食または雑食と考えられていたが、小林さんの研究では、植物食であったと考えてよいのではということだ。様々な手法を使い、オルニトミムス類の復元を目指していることがよく分かる、非常に面白い講演だった。現在行われている恐竜研究の実際の方法も、少しではあるが知ることができた。

これだけの講演を、無料で聞くことができる機会はそうそうないだろう。会場には80名という大勢の方が詰めかけていたが、まだ座席にも余裕があり、もっと多くの方に聞いてもらうことができれば良かったのにと思う。
懇親会ではお酒を飲みながら先生方と話すこともできるし、古生物に関わりたいと考えている人間にとっては、またとないチャンスだろう。今後もこういった催しがあれば、どんどんお知らせしていきます。
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投稿者 corvo : 2007年11月12日 21:06