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2007年4月20日

大人の塗り絵

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巷では「大人の塗り絵」が大人気らしい。「大人の〜」と枕詞がつくと、淫靡な想像してしまう。全く関係ないのだけど、「大人の絵本」と「鶴光」でピンと来る人は、関西で10代の頃を過ごした同世代の人だろう。
まあ、そんなくだらない話は置いておいて、TAKESANさんのblog「Interdisciplinary」で「単に」塗る、って何?というエントリーで知ったのだけど、そのリンク先「ITmedia:単に「塗る」だけでは脳は活性化しない──三菱鉛筆が川島教授と検証」が興味深い。今の流行なのか、何が何でも「脳にいい」とか「脳が活性化」というところにつなげてしまいたいらしい。
僕自身は子供の時から塗り絵が嫌いで、ほとんどやったことがない。決まった形の面積を塗りつぶすという作業が、退屈でしょうがなかったのである。人の描いた絵に色をつけるのも気持ち悪かったし、自分で落書きをするほうがよほど楽しかった。大人の塗り絵とよばれるものは、名画をベースにしていたり、極めて写実的な線画に色をつけたりするもののようである。上手く描くには、それなりに熟達したテクニックと根気が必要だろう。丁寧に作業するには、細かな神経もつかうと思う。だからといってそれが脳に良い事かというと、どうにも分からない。
もちろん手先を動かすことが、良い刺激になることは確かなのかもしれないが、はたしてそれが「塗り絵」である必要があるのだろうか。プラモデルでも、バードカービングでも、ビーズ細工でも、テレビゲームでもいいのではないだろうか。視覚情報と触覚を利用して何かを表現したり、作ったりすることの中で、「塗り絵」だけが特別なものだとは思わない。正直なところ、商売として「塗り絵本」と「鉛筆」を売るためのセールストークにすぎないように思う。
TAKESANさんのblogへ書いたコメントを一部引用する。
「一枚の絵を描くプロセスというのは、けっこう膨大なものなのですが、ものすごく頭を使う段階と極めて作業的な部分とがあります。無心にひたすら手を動かすということも重要で、日々の訓練によって獲得した技術で作業を淡々とこなすという感じです。
復元画なんかを描いていると、ものすごく色々なことを考えたり想定しながら描かなくてはいけないことがあるのですが、そういった場合というのはとても筆が迷います。そうすると決して仕事の精度としては良くないです。何も考えずに作業に専念できる段階まで高めていければ、非常に素直に美しい線が引けたりします。なので、目の前にあるモチーフを描く時とは、まったく違った働きを脳がしているのかもしれません。」
どんな分野でもそうだと思うが、ある動作に熟練してくると、あまり神経を使わずに考えずに、自然とできるようになってくる。絵を描く行為にもそういったことがあって、あまり意識せずに行っていることは意外に多い。パレット上で色を混ぜる時なんてほとんど頭は使っていないだろう。極めて機械的に経験的に、絵の具の分量を量りながら、筆先やパレットナイフで混ぜていく。紙に対する筆圧なんてものも、いちいち頭で考えてはいないが、常に最適な圧力を画面に与える事が出来る。そんなところで迷いがあっては、描くことに専念することはできない。
絵を描く上で頭を使う時というのは、アイデアをひねり出したり、迷ったりした時で、スムーズに上手くいった作品ほど「脳」は活性化していないのかも。オートマチックにモチーフを捉えて描写出来た時は、えも言われぬ快楽があるのだけど、僕特有のものなのかな。複雑に描かれていると思われる作品であっても、僕は出来るだけシンプルな作業にに徹したいと常々思っている。出来れば、うんうん唸りながら頭を使って制作なんてしたくないのである。
なので、僕が絵を描いている時は、極めて「脳に良くない」状態なのかもしれない。
ITmediaのリンク先に、「12色の色鉛筆に加え、2H/H/F/2B/4Bといった5種類の鉛筆も加えた。「濃淡を付けて塗るには、上達すれば鉛筆1本でもできるが、入門者ではなかなか1本では描ききれない。濃さの違う鉛筆を用意することで入門者も濃淡を付けやすくした」(三菱鉛筆)。」というコメントがあるのだけど、個人的にはこの鉛筆のラインナップだと描きにくいだろうなあという感想である。2Hから4Bまでって、比較的幅が広い。なのに5種類である。僕が愛するHBとBがないのはなぜだろう。3Bもないや。4Bで描いた後に、2Hなんて使ったら、色が浮きまくりで苦労するだろう。極めて親和性の悪い組み合わせに思える。この両者の間には、全く違った色だと判断したほうがいいような違いがある(と個人的には思っている)。
うまく、まとまらないけど、わざわざ「塗り絵」でなくても、自分が楽しいと思えることをリラックスし、て行うのが良いのではないでしょうか。

投稿者 corvo : 2007年4月20日 01:31