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2006年1月10日

杉本博司ー時間の終わりー展(続き)

昨日の続きを少し。
杉本博司のシリーズに「ジオラマ」がある。
これはニューヨーク自然史博物館にある、古生物などの生態を復元したジオラマ展示を撮影したものである。彼はこれらの展示を最初に見たとき、とても陳腐でリアリティのないものだと感じたらしい。ジオラマは剥製や復元モデルが、書き割りに描かれた背景の前に設置されている。三次元で作られた模型と、二次元で描かれた背景画が同居している、きわめて不可思議な存在だ。そんな時、片眼で展示を見たところ、にわかにリアリティが出てきたということが、キャプションに書かれていた。
そう、片眼でみることと、カメラで撮影することは同義である。カメラの世界も単眼で見た世界だ。写真になることで、新しい世界と空間が創出することになる。

肖像写真のシリーズがある。しかし、実はそれらは全て蝋人形を撮影したもの。見ている時に、写された対象に生気を感じなかったので、すこし混乱があったのだけど、後でキャプションを読んで納得することができた。一瞬、シンディ・シャーマンや森村泰正を想起させたのだが、「違う」という警告がしばらく頭の中に鳴り響いた。生きた人間のコスチュームプレイではない冷たさが、印画紙に定着されることで、生きた人間を写したように見えてくる瞬間があったのも事実だ。
昭和天皇の肖像写真-実際は蝋人形を撮影した物だが、静謐な中に凛とした強さを感じる。

図録を購入したかったのだけど、日本語版は売り切れであったため、バックオーダーで後日配送してもらうことにした。
二日続けての記事で、ちょっと長くなってしまった。
それほどに多くのヒントと、刺激に満ちた展覧会であったと思う。最終日に、無理をしてでも見に行って正解であった。
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投稿者 corvo : 2006年1月10日 22:20