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2005年12月 9日

銀筆ーsilver point

「お結び展」のための作品が一点完成。
しばらくぶりに銀筆での制作。銀筆とは鉛筆が発明される前に一般的であった描画道具である。黒鉛の芯のかわりに、純銀の芯を使うと思ってもらえればよい。ルネッサンスの時代、多くの芸術家が銀筆によるデッサンを残している。
鉛筆と違うのは、下地を塗った支持体を必要とすることだ。どんな紙や板にも描けるわけではない。
アクリル絵の具のジェッソや、炭酸カルシウムを基調とした白亜地などが適している。皆さんは銀の指輪をしていて、漆喰の壁に手をついたり触れた時に、黒く線が残ったりした経験はないだろうか。銀筆で描くことと同じ原理である。
僕は専用の用紙をイタリアのゼッキから個人輸入している。銀筆もここで手に入るのだけど、銀線と呼ばれる純銀製の針金を貴金属屋から入手してもよい。これをステッドラーの芯ホルダーに入れて使用している。
銀は柔らかく、描画していると先が丸くなってくる。そこで先をとがらせるために紙ヤスリや、オイルストーンを使って先端をとがらせる。
銀筆の魅力のひとつは、鉛筆では描けないほど細い線が引けることだ。常にとがらせておけば、微細な線描を重ねることができる。鉛筆と違い黒鉛の粉でこすれることがないので、極めてシャープな描写が可能だ。ただし、消しゴムで消して修正することはできない。描写は全て一発勝負である。どうしても消したい場合は、下地ごと紙ヤスリで削り取るしかない。
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モチーフは人の頭蓋骨。セッティングしたところ。クリーム色のものが、銀筆用紙。
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これは線香花火を遊んでいるところではなく、硫黄水を作っている。銀は硫黄に触れると、黒く変化するため硫黄水を使って、描線に変化をつけることができる。これは日本画のテクニックでもあり、銀箔に表情をつけるときに使うらしい。「焼く」と呼ばれる技法である。
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面相筆を使って、描線を焼いているところ。陰影を意識しながら、変化をつけている。
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完成した画面。サイズは150x105mmの小品。素材は他にアクリル、透明水彩を使用している。
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ディテール。
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もうひとつディテール。歯の部分をアクリルと透明水彩で描いている。
銀筆はさらに時間を経るごとに、味わいを増していく。好きな素材のひとつだ。
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投稿者 corvo : 2005年12月 9日 01:54