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2005年11月27日

僕が受けた美術教育2

昨日の続きである。
補足になるのだけど、僕が行っていた高校は県立の進学校で美術科はなかった。前回紹介した活動は、全て課外活動として行っていたものである。デッサンは朝授業前、昼休み、放課後と毎日描いていた。
美術部にはもう一つ大きな行事があり、それは毎年夏に行く合宿である。僕が育ったところは自然が豊かなところで、県内の漁村へスケッチ旅行に行くことが恒例となっていた。しかし、この合宿ががまたハードである。ほとんど体育会系の合宿と変わらないのではないかと思うほど。
この旅行にもOB、OGが積極的に参加してくれていた。展覧会の時以上に長い時間を一緒に過ごすため、話につきあってもらったり、相談にのってもらったりと、拙いながらも必死にコミュニケーションをとろうとしていたことを覚えている。僕がOBになったときは、逆の立場として在校生と関わることになるのだけど、どちらの経験も今の僕の血肉となっている。
合宿は3泊4日の日程で行われる。県内なので朝出発すれば、ちょうど昼食時に現地に到着する。この時の移動がまたきつい。在校生は20号から30号のキャンバスに、油絵の道具一式を抱えて動かなくてはならない。さらに着替えなども必要だ。こんな荷物を持った20人ほどの集団が、電車やバス、時には船をつかって現地に向かうので、移動だけでも一苦労である。
昼食後は現地を皆で散策し、モチーフを決めていく。何を描くか決まったところで、すぐに制作にはいる。夕食の時間まで目一杯制作し、食後には宿での講評会が待っている。各自が自分の画面について話し、皆で討論しながら先生や先輩の批評を受けるというスタイルである。ここでも言葉の選択や、コミュニケーションの訓練をすることとなる。
これが終わると何ポーズかクロッキーをして(モデルは持ち回り)、昼間の制作の続きを寝るまで続ける。就寝時間は毎日大体12時頃である。次の朝は6時には起床して制作に向かう。朝食をすませて制作。昼食をすませて制作、夕食の後には前日と同じスケジュール。こんな感じの合宿であった。
在校生として参加しても、OBとして参加してもハードなことにかわりはないが、素晴らしい経験であったことは確かだ。

随分、高校時代の話が長くなってしまった。
美術予備校には講習会だけ、高校在学中から通っていた。合宿の日程以外の夏休み、冬休み、春休みと片道2時間をかけて予備校の講習会に参加する。ここでは皆が美術系の大学への進学を志望しているため、美術部とはまったく違った緊張感があった。浪人生にもまじっての制作なので、勉強になることも多い。
現役での合格は叶わず、1年浪人することになるのだけど、このころの美術予備校はスパルタ式のきつい指導が一般的であったと思う。
浪人時代は東京に出てきて、六畳一間での一人暮らしから始まった。何もかもが初めての経験ばかりである。浪人ということはとても不安定な身分である。高校生でも、大学生でも、社会人でもない。頭の中に霧がかかったような、もやっとした気持ち悪さにずっと支配されているような気分である。合格できるかどうかという保障は何もない。
今となっては馬鹿馬鹿しいことだが、浅はかな考えと自分のもろさから、突発的に死にたい気分に襲われることも時々あった。
東京の予備校はスパルタ式にさらに拍車がかかったような指導で、受験生は徹底的に追い込まれる。僕のいたクラスではなかったが、描いていたデッサンを窓から投げられたり、殴られたり(制作中居眠りをしていたり、態度が悪かったりと、本人が悪い場合が多い)といったことが日常茶飯事であった。ここから逃げしたい思いで必死になったものである。こんなところが居心地良くなって多浪するなんて真っ平だと、かなり早い段階で心に誓ったのである。
予備校で学んだことというのは、僕にとっては受験テクニックの吸収であったと思う。むしろ予備校以外で学んだことが多かった時期かもしれない。東京にいるということは、地方とは比べ物にならない情報に触れることができる。インターネットのなかった当時は、特にそれが顕著であった。お金がないので、立ち読みをするぐらいが関の山なのだけど、画集を何時間でも見ていることができたのは本当に勉強になった。美術館にもすぐに行くことができる。あの時もっとお金があれば、といまでも思わないわけではないのだけど。

大学時代は教育という点では、ほとんど書くことがないのでこの辺で終わりにしたいと思う。
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投稿者 corvo : 2005年11月27日 11:52