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2010年11月11日

"Good Will Hunting"

10年ほど前、友人から勧められて観たのが最初だった。
ボストンを舞台にした、ある天才的な頭脳を持った青年の再生の物語。そう、これは成長ではなく、再生なのだと思う。主人公ウィルが自分の中に全く欠落していた感情を、思考を取り戻す物語。
ウィルは貧民街に暮らし、大学の掃除夫をしながら暮らしている。趣味は読書で、驚異的な記憶力と数学の天才である。そのウィルを見いだすのが数学者ランボー教授。地位も名誉もあり、大学でも人気の教授であるが、ウィルの才能を見いだし、何とか彼を世に出そうと尽力する。
あらすじを書いてもしょうがないので、ストーリーは実際に観てもらうとして、自分自身が大学教員になったことで、見えてきたものがある。ウィルを発見したランボーは彼の才能を認め、彼の将来を思いながらも、嫉妬心を捨てることが出来ない。圧倒的な才能にであったしまった苦悩が描かれる。
そして、ウィルの再生に大きな役割を果たすのが、セラピストのショーン。彼の存在なくしてはウィルが欠落していた人間性を取り戻すことはなかった。でも、一番重要な役割を担っていたのは、いつもウィルと一緒に仕事をし、酒を呑み、遊ぶ、幼なじみのチャッキーだ。
ウィルはずっとそこに暮らして、家族を持って、近くに居たいと言う。それをチャッキーは20年後もそんな暮らしをウィルがしていたら、本気で殺すと答える。厳しくも優しく、ウィルの背中を強く押すチャッキー。後日、いつものように朝迎えに来て、ウィルが家にいないことを確認したときの笑顔が実にすがすがしく感動的だ。
ウイルと恋に落ちる医学を志す大学生スカイラー。決して美人ではないが、人一倍ウィルを理解しようとし、彼の心を解きほぐそうと努力する姿が健気で涙を誘う。彼女はウィルがついていたつまらない嘘も、彼を非難することなく次々と受け入れていく。そんな態度が、ウィルの最後の決断につながっていくのだろう。
つくづく思うのだけど、教員が学生に対して出来ることは限られている。本当の意味で彼らの心を開いたり、動かすことは難しい。そんなときもっとも重要な役割を担うのは、同世代の友人なのだと思う。チャッキーがウィルの背中を半ば強引に強く押し出したように、本当の意味で大きな影響を与えてくれるのが、いつも近くに居てくれる仲間なのだと思う。
終盤、ランボーはウィルに「感謝の念はないのか!」と憤る。ああ、僕も同じことをしてしまっていないだろうか。教員なんて学生のことを真剣に考えながらも、最後の最後でボロを出してしまうものなのだろう。
「当たりの宝くじを換金できる権利」、チャッキーはウィルの才能をそう表現する。皆がうらやむ、持ちたくても持てないもの。それを無駄にすることを許さないと。
何度も、何度も、涙があふれてくる。そんな映画だ。
是非、多くの人に見て欲しい。

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投稿者 corvo : 2010年11月11日 12:02