« Goat skull 04 | メイン | Goat skull 05 »

2009年1月12日

イラストレーターか画家か

僕は自分の肩書きを書くときに、「画家・イラストレーター」と併記する事が多い。
現代においては、二つの職種は分けられているのかもしれないが、本質的にはそれほど明確な線引きがあるわけではない。
Fine artと呼ばれるジャンルの名だたる巨匠の作品のほとんどは、パトロンやクライアントからの注文があって制作されたものである。特に『パトロンたちのルネサンス―フィレンツェ美術の舞台裏 (NHKブックス)』を読むとルネサンスの時代、作品の内容についても作家に主導権がほとんどなかったことがよく分かる。
画家とイラストレーターを区別する必要は、はたしてあるのだろうか。僕はないと思っている。
僕が自分の描きたい作品を作る事だけに固執していたら、今まで絵を描き続けことは出来なかっただろう。イラストレーションというクライアントの要望に添って制作し、報酬を受け取ることが出来るようになったからこそ、生活を維持し環境を整えることもできた。また、デザイナーや編集者、研究者と共同作業をする事で、自分の位置を確認し、何を求められているかを知る事が出来たのもとても大きかった。
僕はずっと絵を描き続けてきた。絵を描く事で報酬を得て、生きてきた。最初の数年はアルバイトをしながらの、フリーターに近い生活の時もあったが、ここ数年は絵の仕事だけの売り上げで、少ないながらも納税してきた。今年の4月からは大学に職を得たが、それまでは就職した事もなく、絵を描く事が収入のほぼ全てを占めていたのは事実である。
僕が自分の中で線を引いているとすると、イラストレーションはクライアントが他者で、自分の作品は自分自身がクライアントだ、ということぐらいだろうか。
画家かイラストレーターかと問われれば、それは自分で決めるというよりは他者がどちらで呼んでくれるかという点が大きいかもしれない。
僕が自分を紹介するならば、「プロの絵描き」というのが一番しっくりくるのである。

--
081027b.jpg

成安イラストレーションクラスニュース

にほんブログ村 美術ブログへ banner_01.gif

投稿者 corvo : 2009年1月12日 20:28