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2008年9月11日

『恐竜の復元』を読みながら

「恐竜の復元」が出版されて、およそ2週間がたった。値段も高いし、バカ売れするような本でないことは間違いないが、どういった売れ行きなのかとても気になる。関西事務所の近くの紀伊国屋書店では平積みになっていたし、都内でも平積みされているところが多いらしい。まだ、ネット上で書評を見ることもほとんどなく、どういった評価をしてもらっているのかも気になる。もし、読んだ方がいたら、ここのコメント欄でも良いので書いてただけるとうれしいです。

以前のエントリーで、画集を作りたかったと書いたのだけど、もう一つは現在の日本における古生物の分野の可能性を示したかったということである。
日本では古生物はマイナーな分野であり、恐竜といえども大きなビジネスにつながることはないのが現状だ。出版物であっても、図鑑を除くと10000部を超えることはほとんどないだろう。
アメリカのように巨大でまとまった恐竜の化石が発見されることもない(丹波竜はそれに匹敵する可能性があるが)ため、研究対象が豊富ともいえない。そんな土壌では古生物がメジャーな分野になることは難しいのかもしれないが、少なくない数の研究者志望の学生がいて、国内外の学会で積極的に発表を行っている。そんな彼らにも、今回多くの文章を執筆してもらうことが出来た。
紹介されたアーティストは7名中4名がアメリカ人と過半数を超えているが、こればかりはプロフェッショナルに活躍している数が全然違うので致し方ない。この日本では、古生物の研究以上に復元の造形やイラストレーションの分野はマイナーだ。ほとんど知られていないと言っても過言ではない。いまだに、「図鑑を参考に描く(作る)のですか?」と質問されることもしばしばだ。そんな現状をなんとか打開したいと強く思っている。

昨年、「知られざる日本の恐竜文化」という本が出版された。著者は現在の日本における「恐竜」のおかれた現状を憂いているのだけど、愚痴とも恨み節ともとれるような文言が多く出てくる(「知られざる日本の恐竜文化は、知りにくい」に詳しい書評が)。でも、嘆いてばかりでは仕方ない。僕は今、そしてこれから何が出来るかを考えていきたい。
日本でも研究の土壌は出来つつある。研究者も育ってきている。きちんと原典にあたって復元を行うイラストレーターも造形家もいる。マスコミの主催する恐竜展の内容に不満を多く感じることもあるし、博物館行政のありかたにも問題は多いが、それでも前向きな意識をもっていれば現状を変えていくことは不可能ではないと思っている。
今年も僕と徳川君SVP 68th Annual Meetingに来月参加してくる。僕はこれで4回目。徳川君は3回目だ。「恐竜の復元」に作品を掲載してくれた、タイラー・ケイラー、トッド・マーシャル、ゲイリー・スターブはSVPの会場で僕が直接あって話をした作家たちだ。タイラーとは毎年会場で会っている。個人レベルではあるが、海外のアーティストや研究者とコンタクトをとって、様々な関係を持つことは難しいことではない。僕のようなひどくいい加減な英語でもなんとかなるものである。
まだ不充分ではあるし、理想からは遠いけど、「恐竜の復元」は日本の古生物のおかれた現状の中で、精一杯ポジティブに作られた本だと自負している。

立ち読みでも、図書館でもよいです。是非、読んでいただきたいと思っています。「愚痴」を言っている暇があったら、今何が出来るかを考えたいです。
だから、皆さんもどんどんリクエストをだしてください。博物館や出版社にも意見を表明してください。変わらないかもしれないけど、変わる可能性はゼロではないはずです。
僕も微力ながら、期待に応えていきたいと思います。

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成安イラストレーションクラスニュース

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投稿者 corvo : 2008年9月11日 23:40