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2005年12月12日

インチキ日本画!?

先日の記事で「インチキ日本画など見たくない。」と書いたところ、美術教育問題で知り合った尻別川の畔よりの依田昌也さんが、歯切れの良いコメントとともにblogの記事で紹介してくれた。
日本画の材料は岩絵の具、膠、墨などである。僕が「インチキだ」と書いたのは、最近膠の代わりにアクリルのメディウムを使う技法が増えているからだ。膠は獣や魚の骨、皮、腱などを煮て作るゼラチンを主成分とした材料である。普通、固形の状態で入手出来るのだが、これを湯煎で溶かして使用する。天然の素材で出来ているため、液体の状態では腐りやすく管理に気を使う材料でもある。
一方、アクリルのメディウムは化学的に作られたアクリル樹脂を主成分としている。アクリルは強く安定しているため絵の具のメディウムや、アクリルガラスとして広く普及している。
しかし、僕はこのアクリル絵の具が嫌いである。乾燥の速さなどから普段よく使うのだけど、油彩に比べるとどうにも発色が良くない。これは膠の代わりにアクリル樹脂を使った場合も同様である。市販されているアクリルのメディウムを見ると、どろっとした白濁した液体である。乾燥すると多少透明度は増すが、膠や油彩のメディウムの比ではない。また乾燥したときのぶよぶよとしたビニールのような質感が、好きになれないのである。
膠を使って固定された岩絵の具は素晴らしい発色を見せる。膠の澄んだ透明度と相まって、岩絵の具の一粒一粒が言葉を語るように画面に定着する。これがアクリル樹脂を使うと、鈍くなってしまうのである。
昨日、川端龍子を鑑賞して、伝統的な画材を正しい技法で使用することの意義を実感した。
そもそも「日本画」という呼称もかなりおかしなものである。これまでも多く指摘されてきたことであるが、「油彩」に対してならば「膠彩」とか「膠絵」という呼び方が正しいだろう。「西洋画」に対してなら「東洋画」であると思う。「日本画」と呼ばれているものは、決して日本だけに独自に発展した技法ではない。「中国画」「インド画」「アメリカ画」「ドイツ画」「フランス画」などという呼び方をしないことから言っても、そうとうに特異な存在であるといえるだろう。
僕は「日本画」を貶めようと考えているのではない。僕は岩絵の具を使用した技法や、岩絵の具や水墨で描かれた絵画が大好きである。だからこそ、今一度整理して美術上の立ち位置を明確にしてはどうかと思うのである。
伝統的な画材の正しい技法と書いたが、以前見たドキュメンタリーの中で加山又造氏が面白い描き方をしていた。
天井に飾る巨大な雲竜図を描く様子を追った番組である。番組中、彼が墨の説明をするのだけど、それらは厳選された入手も困難な高価な墨ばかりである。硯もそれにあった質のものでなくてはならない。そうして擦った墨汁をおもむろに、工業用エアブラシのガンに容れて、墨を吹き始めたのである。これはけっこう痛快であった。
「この墨は大変高価で貴重な物です。色味も重要です。」と語った側から、工業用ガンで噴いてしまう自由さ、軽やかさに驚くと共に嬉しくなってしまった。
伝統を知り、敬意を払った上で、今を考えることの重要性を痛感するのである。
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投稿者 corvo : 2005年12月12日 18:05