« apato process 07 | メイン | apato process 08 »

2005年07月01日

古生物学会

7月1日から4日まで日本古生物学会が東京大学本郷キャンパスで開催されている。
今日はシンポジウムに参加してきた。
シンポジウムのすべての基調講演を聞いたわけではないのと、あまりに専門的すぎて分からないことも多くて、内容についてはほとんどコメントすることができない。
一つ、非常に気になる講演があった。
これは研究者の講演ではなく、NHKで放映された「地球大進化シリーズ」のプロデューサーの話である。
番組制作においてお世話になった研究者の方々に謝意を表しながら、制作の難しさ、科学への思い、これからの科学番組のあり方という内容の話であった。話の最後で、研究者は好きなこと仕事にしており、その情熱がオーラとなって番組を引っ張ってくれたという締めくくりであったと思う。番組についてどんなことでも良いので質問や意見を述べて欲しいということだったので、発言させてもらった。

質問の内容はこんな所である。
「復元画を制作することを仕事にしているものです。以前、番組を見せていただきました。好きなことを仕事にしている研究者のオーラが番組を支えてくれているという発言がありました。一方、これは全くの主観ではありますが番組の中で使われている古生物の復元CGの出来が決して良いとはいえないと思いました。復元を表現する立場にある人間に、好きなことをやっているという気概や情熱を感じることができませんでした。」

この発言に対しての答えは、
「CGを作っている人間はその仕事に情熱も持っており、好きでたまらない人たちです。CGを作る側にとって一番重要なのは「きれいでかっこいい」ということです。しかし、いくら「きれいでかっこいい」と思える映像を作っても、研究者から学術的に駄目だと言われれば作り直さなくてはいけない。そこにどうしてもジレンマがある」
といった内容であったと思う。

しかし、これはまったくおかしい。
復元という作業において、もっとも優先順位が高いのは「きれい」でも「かっこいい」でもない。
例えばある脊椎動物を復元しようとした時に、次のようなプロセスを経ているのだろうか。
・その生物の骨格の資料はそろえたか?
・それぞれの骨格のプロポーションを計測したか?
・解剖学的な知識をもっているか?ない場合は少しでもその知識を吸収しようとしたか?
・その生物と近縁であると推測される現生の生物を観察したか?実際に観察出来ない時に、ビデオなどを何度も見たか?
・その生物の動き方をどれぐらい想定したか?
ざっと思いついただけでも、これぐらいのことはする必要がある。
「きれい」「かっこいい」ということは、これらのプロセスを経た後に結果としてついてくるものだと思う。
また、きわめて主観に左右されることであり、これを一番に重要視することは危険である。
科学番組で復元をする以上、主観で表現するわけにはいかない。
復元とは、研究者と同じ目的、目標を共有することが重要である。
また研究者と表現者は対等の立場でなくてはいけない。
研究者がイニシアチブをとって引っ張っていくだけでは限界がある。
研究者には研究者の、表現者には表現者の責任と覚悟が必要であると思う。
これはそれぞれの領域を分けるということではない。あくまでもお互いを尊重して行う、共同作業であると考える。
復元するうえで、「きれい」「かっこいい」を最優先にするのでは、あまりに志が低いのではないだろうか?

投稿者 corvo : 2005年07月01日 23:34

コメント

こんにちは。ご無沙汰しております。。

私もついつい「かっこよさ優先」でキャラクター的に恐竜模型を作ってしまう人間ですが、
そうやって完成させた後でその恐竜について少し知ると、とたんに、それまで
「かっこいい」と思ってた部分が「かっこ悪い」と感じてしまいます。
無知は結局どう言い訳しても、得る事が無いんですね。
ただ、恥ずかしい事に私は知識もほとんど無いですし、資料の収集方法も、
手元の資料の生かし方にも自信ゼロなので「勉強のやり方を勉強する」というところから
やらなくてはいけないという気がしております。
またいろいろとご指導しただければと思っております。

ところで、あの後すぐに肉単、骨単、買いました。
ささっと読んでご報告しようと思ってたんですが、
読んでたら「こりゃ覚えられなくても、一回真剣に
読んでおこう」と思い、まだ読み終えてません・・
肉単1ページ読むと、そのページで書かれている筋肉が
他の本でどんな風に描かれてるかが気になって
なかなか前に進みません・・
次の日には筋の名前も形も忘れてますが(ダメジャン)

投稿者 SHINZEN : 2005年07月02日 03:16

SHINZENさん
コメントありがとうございます。こちらこそご無沙汰しています。
骨単、肉単は通読するものではなく、興味がわいたときや必要な時に使うのが良いかもしれません。でも通読できれば、きっと力になるでしょうね。ちなみ僕は通読していません。骨折や怪我をしたときには、治療とリハビリの助けにもなります。
「きれい」も「かっこいい」も後からついてきます。
もし、ついてこなかったらその表現者に力がないのでしょう。
でも、「きれい」「かっこいい」はあくまでも主観でどうかですし、時代や地域によってもその基準は変わるものですから、絶対的な判断はできないと思います。
それよりもどういうプロセスで復元したかを説明できるほうが大事だと考えています。

投稿者 corvo : 2005年07月02日 09:07

あのCGに関しては、信念とか情熱とか言う
以前の問題だと思うんですが、、。

っていうか、「きれい」でも「かっこよく」も
無かったんですけど。
 特に、ちょい役とはいえ、あのアロサウルスの無様さは
ど~~~~~~~~~~~~しようも無かったので、
アロ好きとしては怒り心頭。アロなんて、有明に
それこそ「かっこいい」全身骨格があるんですから、
資料の面では問題ないはずなのに。

「CGが好きでたまらない」といっても、それは
技術面の話で、恐竜を表現する事とは直接関係
ないですよね。それに、そのCG自体にしても、復元の良し悪しを抜きにしても、
御世辞にも出来が良いとは言えず、BBC製番組「Walking with~」シリーズとの落差は目を覆わんばかり。

時間や予算の制約があるのだろうとは思いますが、
先発に「Walking with~」シリーズがある以上、
それを超えるとは言わないまでも、肉薄してやろうと
いうのが「その仕事に情熱も持っており、好きでたまらない人たち」だと思うんですが。

投稿者 ふらぎ : 2005年07月02日 10:31

再度、CORVOさんの文章を読み直して、こっちが認識間違い
をしていたのを発見。
あのCGに関しては「きれいでかっこよく作ってたんだけど、学術的な面を考慮するとああなった。」
なんですね。

という事は、監修された方が
「アロサウルスの頭は、頭骨の形が全く反映されない
 くらいに軟組織がどっちゃり付いているんじゃよ~」
とおっしゃったとか?

投稿者 ふらぎ : 2005年07月02日 11:02

ふらぎさん
コメントありがとうございます。
質疑のやりとり自体、ちぐはぐしたものでした。
こちらの真意はきちんと伝わらなかったと思います。
客観的に判断する立場にあるプロデューサーが、視聴者からの意見を受け入れずに、自分のスタッフをかばうというのもどうかと思うのですが。
時間や予算の制約はいつでもついてまわるものですが、組織に属して保証された身分で仕事にあたっているのはないでしょうか。
一方、こちらはフリーランス。それでも志の高さだけは負けたくないと思っています。

投稿者 corvo : 2005年07月02日 11:18

どうも、K?REXさんの所からやってきました。
ずいぶん昔に一度メールのやり取りをさせていただいたことがありますMASABONEと申す骨マニアです。
本職はCG映画の制作なので少々コメントさせてください。

CG制作において「きれいでかっこいいこと」と「学術的に正確であること」が対立してしまうことは確かにあります。
しかしそれは例えば「本当はこんなに大きくない」とか「本当はこんなに早く走らない」とか言う場合がほとんどで、仮にも実在した生物の顔つきや体型を「本物のままではかっこ悪い」という理由で変更する必要があるケースはほとんど無いと思います。時折「尻尾はもう少し長い方が見栄えがいい」というようなアレンジを加えることはありますが、今回話題になっているのはそういうケースでも無いようです。
そもそも、「学術的には正確ではないが、かっこいい映像」にすらなっていないからこそ「志が低い」という印象を与えたのでしょう。
つまり、その映像は「かっこ悪い」のです。

CG制作者が自分達の仕事が好きで誇りを持っていることはある程度事実だと思いますが、だからといってそれだけで「きれいでかっこいい」映像が作れるほど甘くはありません。
はっきり言ってしまえば好きでなくても才能があれば、好きなだけで才能が無い人よりもいい物を作ります。ただ、その分野に才能のある人は大抵それが好きですし、好きな人は努力を努力と思わず蓄積するので、才能がある上にその仕事を好きな人が最終的に優れた仕事を残すことになるのです。
これはもちろんCGに限った話ではなく、その番組を引っ張った研究者(や、他の多くの分野)にも言えることだと思います。
その研究者達への謝意を、研究者達がその仕事を好きだから…というような根性論に還元してしまうのはそのようなシンポジウムの場においては本来恥ずべきレベルのことだと思います。
結局のところ僕の印象では、プロデューサー氏の「かっこいいvs学術的」の答えは「言い訳」にもなっておらず、しかも詭弁でごまかすという意図のある質問者に大変失礼なものだと思います。

CGの現場にいるものとして意見を言えば、そのCG製作者達が自分達の仕事が本当に好きであるにもかかわらず、できの悪いものを世に出してしまったのなら、それは製作者達が好きなだけで能力が無い人たちだったか、あまりにも予算や制作期間に無理があったかのどちらかだといえます。
そしてそのどちらであったとしても、それは制作組織に問題があるということです。
もちろん問題の無い制作組織というのはありえないのですが、それをプロデューサー自らがこのような根性論による美談でオブラートに包んでしまっていてはこれからも進歩は無いと思います。
業界の一員として日本のCGや科学番組の発展を願うものとして、かなり残念な話だと感た次第です。

投稿者 MASABONE : 2005年07月04日 13:31

すみません、二回投稿してしまいました。

投稿者 MASABONE : 2005年07月04日 13:34

MASABONEさん>
コメントありがとうございます。ご無沙汰しています。
時々、サイトを覗かせてもらっています。
MASABONE さんのコメントで、自分の中でもさらに整理されてきました。シンポジウムの場でNHKのプロデューサーに他から質問は出なかったので、研究者諸氏がどういった印象を持っていたのかは分かりません。この番組のCGについては、自分の周りに限ったこととはいえ、「良かった」という意見を聞いたことがないです。
一視聴者としてよりよい番組がみたいと思うとともに、微力ながら何らかの形で貢献していきたいと思っています。

投稿者 corvo : 2005年07月04日 20:47