STUDIO D'ARTE CORVO

STUDIO D'ARTE CORVO は小田隆の公式ウェブサイトです。
update 2018.04.01

小田 隆 驚異のIllustration展 2

個人作品として制作したものが多かったにもかかわらず、個展のタイトルに「Illustration」とあるのはなぜか、と疑問に思われた方が多かったかもしれない。僕自身、プロフィールでは画家、イラストレーターと表記しているが、ここ最近、その境界はだんだん曖昧になってきている。大雑把には、依頼があったものをイラストレーション、自発的に描いたものを絵画作品と考えていたのだが、今となってはジャンルを分けることにほとんど意味がないと考えている。

チラシにも表記されていた、プロデューサーであるI氏のコメントで、このようにIllustrationを定義してもらっている。
「Illustration(イラストレーション)という言葉には「照らす」「明るくする」を意味するラテン語lustrare(英語illuminate「照らす」と同一語源)があります。
今回は、小田氏の表現する生物の痕跡に光をあてて制作してきた作品群を総称し、Illustration(イラストレーション)という言葉で表現しました。」
美術史の上でも、19世紀末までの依頼主の存在する絵画は全てIllustration(イラストレーション)ということもできるし、印象派以降にも同じ作家の中に、依頼で描いたもの、自発的に描いたものが混在する。自発的に描いたものが、商業的に使われることもあるので、本当に自分のなかでは分けることが不可能になってしまっているのである。ただ、昨今の極めて狭い意味でのイラストレーションとして見られることは避けたかったので、タイトルをIllustrationと英語表記にしてもらったという経緯があった。

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こちらはネコのシリーズ。以前はネコの肖像画を依頼を受けてよく描いていた。最大で9頭を120号で制作したこともある。

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絵本『アパトサウルス』(ポプラ社)の中から一部の原画を展示。アパトサウルスはもっとも好きな恐竜の一つで、ディプロドクスに比べてマッシブなところが好きだ。複雑な形態の頚椎も美しい。

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豊橋市自然史博物館の新生代コーナーから2点。『鯨偶蹄目の進化』と『人類の進化』。後になってがついたのが、『鯨偶蹄目の進化』に鰭脚目のアロデスムスが入っていたこと。アロデスムスは鯨の仲間ではなく、アシカやオットセイの仲間です。

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左は『情熱大陸』のCDに同封されたポスターの原画。デザイナーの佐藤卓氏から直接依頼を受けて、2008年に発売されたものである。まだ入手可能のよう。右は2009年に油彩の制作を再開した時に描いた、天使をモチーフにした1枚。

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現在、執筆中の美術解剖学本の原画も見てもらえるようにファイリングして展示した。

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これまでに出版された一部の書籍。手にとって自由に見てもらうことができた。

ちょうど個展の最終日が、系統樹マンダラのクラウドファンディングの募集最終日と重なっていたため、系統樹マンダラの原画とポスターの展示にも力をいれていた。

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原画は全点あったのだが、とても展示するスペースがなく、ほんの一部を展示するにとどまった。将来的には、どこかで全点数を展示したいと考えている。
クラウドファンディングはおかげさまで、みなさまの支援の結果、実現できることとなり、これから45点カメを描かなくてはならないのである。

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24、25日の2日間を使ってライブドローイングを行った。お題は『ケンタウロス』。画材はいつものプロッキー。

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完成画像とディテール。いつも、もう少し線と描きこみをへらせればなあと思っている。今回はきちんとスケッチを作らずに始めたので、いきあたりばったりな部分も多かったかもしれない。

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最後に原寸大のシリーズを再び掲載。これからの数年、もっとも重要なシリーズになると考えている。次に何を描くかをまだ決めていないが、大きなものだけでなく、比較的小さな動物を描いていきたいと思っている。哺乳類だけに限っているわけではなく、現生種、化石種含めて、対象になる動物は膨大だ。ただし、僕自身が骨格を理解できているもの、取材できて良質な資料が揃うもの、というのは大前提ではある。

これだけの個展を開催することは、当分の間は難しい。原画は実際に見てらもらわないことには、本当の魅力は伝わらない。絵画のひとつの役割として、展示された空間に影響を及ぼす存在であることが、重要だと僕は考えている。それは印刷物には難しい。イメージだけが情報化されたものと、物質としてそこに存在するものの差は、思っている以上に大きい。
南港という場所であったにもかかわらず、1200名を超える方にご来場いただけた。しかし、この数はまだまだ少ない。もっと多くの人にみて欲しかった。
次の展示の機会がいつになるかわからないが、今回を超えるものにしなくてはと思っている。

小田 隆 驚異のIllustration展 1

先日まで開催していた『小田 隆 驚異のIllustration』展の会場の様子を紹介したい。
今回の展示はこの10年ほどで制作した作品が中心になっており、油彩の制作を再開した時期ともほぼ重なる。また、成安造形大学の教員となってから10年ということもあり、それまでのフリーランスのときとは一線を画した制作数、制作内容となっている。フルタイムで絵を描けない苦しさもあったが、人体描写の授業を担当することで得られた美術解剖学の知識やスキルは、今ではかけがえのないものとなっている。
展示場所となった大阪デザイン振興プラザデザインギャラリーは、363㎡と巨大な空間だったが、持ち込んだ作品の一部を展示することができなかった。動物の原寸大の油彩シリーズ、ウマ、インドサイ、ライオンを展示することができたのが、この展覧会の大きな意義の一つであった。

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廊下を歩いてくると正面には、広々としたエントランスから見えるインドサイが出迎えてくれる。これを目当てに訪れたお客さんも多かったと思うので、もっとも目立つ位置に展示をした。

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制作順はウマが最初で、ライオン、インドサイの順番となる。ウマは260 x 324cm。ライオンは162 x 260cm。インドサイは194 x 390cm。すべてほぼ原寸大で描いたものである。まだ3点しかないが、将来的には10点以上揃えて並べてみたいと考えている。

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入口入って左手からは頭骨のシリーズがずらりと並ぶ。ヤギ、スミロドン、ライオン、キリン、イノシシ、カバ、ゴリラアスラ、頭骨シリーズではないが、アジアゾウの死産胎子。

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原寸大シリーズの右手には、ゴリラ、翼を持った手や八咫烏、ウマ、トラ、ヒト、ビーバー、ワニガメなどが並ぶ。手前の棚はグッズコーナーで、広々と陳列することができた。

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今回、僕が原寸大シリーズとともに目玉として展示に力をいれたのが、人体のデッサンとクロッキーを並べることだった。

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クロッキーの総数は約7000枚。10年分のスケッチブックを全て並べて、手にとって1枚ずつ見られるように展示した。

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デッサンは残念ながらほんの一部しか展示することができなかった。

展示タイトルの冠に「日本を代表する古生物復元画家」とあったのだけど、この10年はそれほど復元画の仕事はしていなかった。豊橋や丹波といった重要で大きな案件も中にはあったが、全体としては復元画の依頼は減ってきていた。

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ここで紹介している作品も2006、2007年と比較的古いものが中心である。

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こちらの壁は2008年以降と新しいが、さほど数は多くない。
まだ紹介しきれていない作品も多く、展覧会についてもあまり説明できていないので、続きをまた書こうと思う。(続く)




NHKテキスト『心の進化をさぐる〜はじめての霊長類学』の表紙イラスト

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NHKテキスト『心の進化をさぐる〜はじめての霊長類学』の表紙イラストの仕事。連絡はこのサイトの問い合わせメールから始まったが、とてもスムーズで気持ちのよい仕事だった。やはり仕事をする上で大事なのは、納期が適切であること、ギャラが明確であること、仕様と使用範囲がはっきりしていることなどだ。これらが最初の問い合わせから明らかだったので、すぐに制作に入ることができた。
元の資料は、提供された写真を使用している。写真のままに描くのではなく、幾つかのリクエストが編集者からあった。手前の個体の手で隠れてしまっている足の裏を描いて欲しい。背景の森は描かずに白バックで。そこにこちらから、奥にいる大人のチンパンジーの片目が隠れているので、両目を見えるようにしませんか?という提案をした。
そして出来上がったラフがこれだ。

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紙に鉛筆。このラフは修正なく編集者のOKがでた。これほどスムーズだと拍子抜けするが、正直なところとても嬉しい。

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完成した原画。イラストレーションボードに丸ペン、インク、透明水彩。これも一発OKでまったく修正することなく、締め切りを大幅に残して完成してしまった。カナダに行く前に納品したかったので、少し急いだのだが無事に納期を守ることができた。

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かっこよく美しい配色のデザインが出来上がってきた。こういったイラストレーションは良い素材であることが重要だ。著者の先生にも気に入っていただけたようで、とても良い仕事だった。
アートディレクターがいて、目指すところが明確な仕事はやりやすい。全てこうだといいのだけど、そうもいかないのが現実である。

『ウミガメ骨群集』の復元3

1ヶ月以上、間が空いてしまったが、『ウミガメ骨群集』の続きである。
前回のスケッチに対してのコメントは次のようなものだった。

「早速の修正ありがとうごさいます!
非常に良くなりました!!骨内有機物の残存の程度やウミガメの白骨化の程度と骨の継ぎ目におけるバクテリアマットの具合など,私が思っている通りに(いや,それ以上に)再現されています.
拡大図と全景図の違いや骨内有機物の残存の程度は色合いでの表現になるとのこと了解です.それで問題ないです.

一点だけ,今になって少し気になってきたのが拡大骨の表面右にいる巻貝の角度が少し不自然に見えることです.巻貝をもう少し寝かせて,かつ軟体物の向きはほぼ正面だと思うので,それに合わせて貝も正面になると良いです.もし,貝殻の下側からのアングルの写真が必要であれば至急探します.

それ以外は申し分ありません.よろしくお願いいたします.」

全体の中でのハイカブリナは小さなパートな
ので、拡大してラフスケッチを描いてみた。ほんの数ミリしかない貝殻だが、そのフォルムは精緻で複雑な構造をしている。

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このスケッチについても、即座に修正の指示が入る。

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いつもながら指示が具体的でわかりやすい。常に図示があるのもとても助かる。文章だけだと、どうしてもイメージの持ち方に齟齬が生じて、二度手間三度手間になることが多々ある。

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修正してオーケーのでたハイカブリナ。規則的なパターンで形成されるフォルムの描写は難しい。どちらというと苦手分野である。ハイカブリナのスケッチが出来上がったところで、全体のスケッチを一からやり直す。

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ハイカブリナの修正に加えてホネクイハナムシの数も増やしている。メソダーモケリスの頭骨もより詳細な描写を心がけた。手前に大きく拡大した世界を描き、中景、遠景と奥行きのある空間を目指している。モノクロスケッチではその表現に限界があるが、カラーになったときは、より重層化された世界を展開できるはずだ。

「いいですね!素晴らしいです!!骨の上を這う巻貝や巻貝の上に生えたバクテリアなどが特に良いです.
構図としても拡大した骨と中景のウミガメとが非常に表したいものが1つにまとまっていて非常に良いです.

それで,2点だけ,欲をかかせていただいて,少し修正していただけるとなお良いです.
1.拡大した骨の上面の部分をもう少しだけ虫食いにしていただけると完璧です.骨の浸食度合いの資料を添付しました.幾度もの修正すみません.

2.まん中の二枚貝(ハナシガイ)の左から海底に向かう穴ですが,その穴の中につぶつぶを描いていただいていますが,このつぶつぶを消していただけますか?このようなつぶつぶがある復元画がこれまでにも教科書とかに出ているのですが,どうもこの穴にこういうつぶつぶは詰まっていないようなのです.
先日米国で開催された化学合成シンポジウムで,ハナシガイ類の巣穴を研究している方がいらっしゃったのですが,このようなつぶつぶはないとのことでした.ということで,いまさらですが,この海底に伸びる穴についても,貝の下方向にのびる巣穴のように空洞にしていただけますか?

この2点以外は申し分ありません.」

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ようやくラフスケッチの最終版が完成した。これをトレースして、カラーでの仕上げに進めていく。復元画では科学的な正確さとともに、構図も重要なポイントであると考えている。美しく、かっこよい方がいいのが当然である。そこにあからさまな嘘があってはいけないが、イラストレーションとしてのわかりやすさを優先することもある。特に生物の生息密度の表現は事実から離れてしまうことが多い。
ここまでで全体のプロセスの半分ほどが終わったことになるが、実際の作業量がこれからが最も多い。ただ、このラフスケッチのやり取りがとても大切なのである。この積み上げがなければカラーの制作を始めることすらできない。

続く

『ウミガメ骨群集』の復元2

前回からの続き。ロバートさんから次のようなコメントと、修正指示を書いた画像が送られてきた。概ね、好評ではあるが、修正箇所は多い。

「さて,第2弾ラフスケッチありがとうございます.
おどろおどろしい感じが出て非常に良い雰囲気です!図にコメントを入れたものを添付しました.
大きなところとしては拡大図と全景図の区切りがわかりにくい気がしてきました.はじめてこの復元画を見た人でも,全景と骨の拡大図という2つの図が組み合わさっていることがもう少しわかりやすい方が良いと思いますが,いかがでしょうか?

もう一つ,骨の中の脂質(骨内有機物)をどう描くかをこの段階でつめておいた方が良いと思います.図内のコメントをご参考におねがいします.

> ウミガメの損傷はどれぐらいにしましょう?頭部はほぼ白骨化しているけど、体にはまだすこし表皮がなくなっているようなイメージです。

図へのコメントにも入れましたが全部白骨化していただいた方が良いと思いました.ホネクイハナムシやハイカブリニナ科の巻貝がすでにある程度成長している段階の図なので,数ヶ月は経過していて,その場合は骨は白骨化している状態にしていただいた方が良いです.

それにしても第2弾ラフでここまで雰囲気が出せるものだと改めて感心しました.」

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ラフスケッチの場合、あえて描かなかったり、省略している部分があるのだが、そういったことは研究者には通用しない。常にすべてを説明できるようにしておく必要がある。ただ、そういった余地を残すことで、より修正に気付きやすくなる側面もあるように思う。この場合だと、手前の骨の断面に見える有機物と、それが失われた部分の差が明確に描写されていなかった。僕も意識できていたわけではないが、あえて省略していた部分もある。なるほど、ホネクイハナムシの根との関係を明確に表現するには、もっと明快に描きわける必要があったことに気づかされた。
手前の骨はかなり近い位置にあり、拡大された世界である。中景から背景にかけては、そうとうに遠いところにあるものたちだ。モノクロでも、その大きな差異を表現できていないのは僕の問題だ。
海底に接した部分の緻密骨が分解されないことは、全然知らなかった。なんとなく海底に溶け込んでいくようなイメージを持ってしまっていた。こういったことも、指摘されないと気づかないところである。
これらの情報を統合して、修正したのが次の画像である。

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ホネクイハナムシをもう1匹増やし、海底と接する部分の緻密骨をしっかりと描き、骨の内部の有機物の詰まっているところ、そうでないところを明確に描き分けた。
ウミガメは白骨化が進んでいるが、もう少しばらばらにしたほうがいいだろう、という指摘をすでに受けている。
次の段階では、巻貝、二枚貝のスケッチを、それぞれ別々に拡大して描く。各部分のディテールを明確にしておけば、全体を描くときの助けにもなる。

このスケッチにも、迅速にロバートさんからコメントが届いた。

早速の修正ありがとうごさいます!
非常に良くなりました!!骨内有機物の残存の程度やウミガメの白骨化の程度と骨の継ぎ目におけるバクテリアマットの具合など,私が思っている通りに(いや,それ以上に)再現されています.
拡大図と全景図の違いや骨内有機物の残存の程度は色合いでの表現になるとのこと了解です.それで問題ないです.

一点だけ,今になって少し気になってきたのが拡大骨の表面右にいる巻貝の角度が少し不自然に見えることです.巻貝をもう少し寝かせて,かつ軟体物の向きはほぼ正面だと思うので,それに合わせて貝も正面になると良いです.もし,貝殻の下側からのアングルの写真が必要であれば至急探します.

それ以外は申し分ありません.」


続く

『ウミガメ骨群集』の復元1

金沢大学のロバート・ジェンキンズ助教監修のもと、『ウミガメ骨群集』の制作を始めた。現生のクジラが死んで海底に沈むと、白骨化した後にも多くの生物が、それらを栄養分にするために集まってくる。かつての白亜紀の海でも、大型の脊椎動物に群がる生物がいて、化石にもその証拠が残っているのではないか?という研究成果をビジュアル化する目的で描いている。
白亜紀に群集を作っていた生物は、ほぼ現生種と同じであったと推測されるので、通常の復元に比べると楽な部分も多い。ただし、より正確なリアリティを求められるので、当然、難しさもある。ロバートさんは実際に海の中で鯨骨群集を観察し、ウミガメの死体を沈めその経過を記録し、研究室ではバクテリアが骨を覆っていく様を再現し観察を続けている。

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メールでの依頼があってから、最初の打ち合わせは金沢大学のロバート研究室(ロバ研)にて。標本や資料を目の前にした打ち合わせは、とても効率が良い。わからないことがあればすぐに質問できるし、実際に標本を観察して撮影やスケッチを行うこともできる。その場でラフを描いて、全体のイメージを共有していくこともできる。メールでのやりとりでもある程度は可能だが、より質の高い仕事となると、直接の対話に勝るものはないと思える。

提供してもらった資料写真や、撮影した画像などを使い、最初のラフスケッチを持ち帰ってから制作したもの。

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手前に大きく描いているのは、ウミガメの肋板の断面で、ホネクイハナムシが骨を溶かしながら根のようなものを伸ばしている。表面にはハイカブリニナ(巻貝の一種)とイガイ科の二枚貝、バクテリアマットがびっしりと覆っている。海底の泥にはハナシガイが潜んでいる。中景には死に絶えて海底に沈んだメソダーモケリス(オサガメの祖先型の絶滅種)が見えていて、その表面もバクテリアマットで覆われている。白亜紀の海であることをわかりやすくするため、遠景には首長竜の泳いでいる姿を配置した。

このラフスケッチに対するロバートさんからの回答が次のようなものだった。詳しく図解されたものも、後日送られてきたのだが、最初の印象としては概ね良好だったようで一安心である。

「断面も入れ込んだ複合的な絵ですね.今夜詳しく拝見させていただきますが,ぱっと見の第一印象は非常に良いです.バクテリアやホネクイハナムシの雰囲気,ウミガメの死骸の感じがとても良いと思います.

骨に付着している二枚貝はたぶんイガイ科をイメージされていると思いますが,白亜紀には化学合成を行うイガイ科が明確にはいないので削除していただくことになると思います.

また,この前の打ち合わせ時にはキヌタレガイはウミガメからは見つかっていないので不要ですと申してしまいましたが,間違いでした.元々首長竜だと思われていた骨が実はオサガメであることがわかり,それにはキヌタレガイが付着しておりました.ということでキヌタレガイ(Y字の巣穴を持つ二枚貝)も追加できるとありがたいです.追加があってごめんなさい.

細かい点はまた今夜詳しく拝見した上でメールいたします.
それにしても白黒のラフスケッチだけでも十分に雰囲気が伝わってきますね.すばらしいです.」

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ここまで詳しくコメントがあり、さらにわかりやすい追加の資料があると、次の段階がスムーズになる。まだモノクロの段階ではあるが、この1枚に様々な生物の世界を表現しなくてはならない。それぞれが関係しながら、ある狭い範囲の生物層を作り出している様を、生き生きとした筆致で描くことができれば、復元画として良いものになることが想像できる。海に沈んだメソダーモケリス以外は現生種をそのまま参考にすることができるし、ウミガメの基本的な形態は変わっていないのと、ほぼ骨を描くことになるので、かなり実際に近かったであろう情景を再現できそうだ。

これらのコメントをもとに、修正したスケッチが次のものである。

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現在、このラフスケッチを送った後、ロバートさんの返信を待っているところである。

続く


デザインフェスタvol.45巨大壁画ライブドローイング

もう一週間以上だってしまったが、5月27、28日に東京ビッグサイトで開催された、デザインフェスタvol.45会場で、3回目の巨大壁画ライブドローイングを描いてきた。今回、ようやく完成と言えるところまで進めることができた。
ライブドローイングと言っても、僕の場合、周到な準備の上に成り立っている。いきなりまっさらな状態から描くことはできない。

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これが元になる原画。B3サイズ、イラストレーションボードにステッドラーのピグメントライナー0.05mmで制作。

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そして、コピーしたものに方眼のマス目をいれる。A3サイズで約1/12の縮尺。一辺25cmになる計算だ。

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デザフェス会場に着いて、まず最初にやることは壁に木ネジを打ち込み、水糸を張っていくことだ。これは縦糸を貼り終わったところ。壁の高さは3.6mある。

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オープン直後、系統樹マンダラ、グッズコーナーも完成し描き始めたところ。

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描きやすい高さにある頭部からどんどん描いていく。

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デイノスクスの目が入ったところで、俄然、やる気が出てきた。いや、それまでもやる気がなかったわけでなく、一段シフトアップしたような状態に。

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眼球だけは細いペンを使った。水中に潜っているため、瞬膜を閉じている。

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初日はここまで。Tシャツの在庫がかなり乏しくなってしまった。

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男性体幹骨格ロング丈Tシャツは大人気で、用意していた20枚が初日で完売してしまった。

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2日目午後5時に完成。3.6 x 5m。紙に三菱プロッキー。

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ディテール。

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この角度が、一番パースが効果的に見える。
今回のライブドローイングでデザフェスの出展はやめることも考えていたのだが、まだしばらく続けてみようという気になってきた。おそらく来年の5月にエントリーします。
体調を整えておかなくては。




小田 隆 展 〜命の痕跡3〜無事終了

5月1日まで大阪イロリムラで開催していた個展が無事終了した。インドサイの油彩を現場で描くという試みも含め、大作をゆったり展示することができた。
床面積自体は広くないが、天井が高く気持ちの良い空間である。

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展示会場の入り口。

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入って正面にインドサイの油彩が鎮座する。

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ディテール。28日の公開制作ではおもに肩の部分を描き込んだ。

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30日の公開制作では、主に腹部を中心に描いた。肋骨の浮き上がりを意識しつつ、草食動物特有のでっぷりとした量感を描こうとしている。完成まで至ることはできなかった。

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昨年の展示から少し加筆したライオンの油彩と、新作であるライオンの頭骨と頚椎を描いた作品。

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小品たち。

今回でイロリムラでの展示は3回目になるが、おそらく来年も同じ時期に開催する予定である。完成したインドサイを展示し、原寸大シリーズの新作がメインの作品となるだろう。インドサイの次に何を描くかはまだ決めていない。
ご来場いただいたたくさんの皆様ありがとうございました。

個展『生命の宿りしものたち』

ギリギリの告知となってしまったが、9日11時から個展『生命の宿りしものたち』が、岐阜市のギャラリーいまじんでスタートする。8日の午後から搬入設営を終えて、無事にオープンを迎えられそうである。

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『命の宿りしものたち』


絵を描くモチーフを選ぶとき、いつも生物に行き着く。これまで仕事で多くの古生物の復元画を描いてきたこともあり、博物館や研究者と接する機会にも恵まれ、生物や骨格標本に接することが日常となっている。


子供のときから、テレビで動物番組やドキュメンタリーを見ることが好きだったが、あまり絵の対象になることはなかった。ロボット物に代表されるメカばかりを描いている子供時代だった。生物をモチーフにするきっかけとなったのは、美術解剖学に触れたことが大きかった。生物の体の仕組みを知るほどに、人間の手では作り得ない精緻な構造に魅了されていった。


美術解剖学では骨学と筋学を主に扱うが、特に骨学は化石しか証拠が残らない古生物の復元とも親和性が高い。生きた生物を見たり触れたりするときも、脊椎動物に限るが、体内にある骨格を推測し探るように見る癖がついてしまっている。その生物の骨格を見ずに、知らずに描くことは極めて難しい。骨格はプロポーションの源であり、関節の位置を理解することは、動きも含めて正確にその生物の姿を表現することの助けとなる。


例え、骨格や剥製や化石となったとしても、そこにはかつて命が宿っていたことに変わりはない。常にそのことに思いを巡らし、動かなくなってしまった標本を手に取りながら、そこに存在した命を表現したいと手を動かす。その技法は、鉛筆、チャコールペンシル、アクリル、油彩と多岐にわたる。


様々な技法で描かれた、様々な生物たちの絵画を、ご高覧いただければ幸いです。

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旧作から新作まで、幅広い年代の作品が並んだ。


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原寸大のライオンの油彩は、背景に少し手を加えての展示。


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新作の大型ネコたち。作品サイズは小ぶり。

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小品たち。10800円からとお手頃価格。

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昆虫のシリーズは今回2点しか作れなかったが、今後は数を増やしていきたい。

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入り口ではおなじみのキリン頭骨がお出迎え。正直、早く売れて欲しい。大きくて、それなりの価格なので難しいのはわかるが、作家が長く持っているのは良いことではない。

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ギャラリーからのリクエストで、珍しくDMを2パターン作ることになった。インドサイとライオンの2種類があります。

本当にこれは理想ではあるが、手元には自分の作品が残らないほうがよい。作品が手を離れてお金に変わってくれれば、それだけ次の仕事をすることができる。新作といっても、完成した途端にそれは過去のものとなるので、過去作品が並ぶギャラリーにずっといるというのは、それなりに苦痛を伴うものである。明日と最終日は会場に詰めているが、できる限り早く仕事場に戻って、様々な仕事を進めたいというのが正直なところである。
とはいえ、ご高覧いただければ幸いです。

昆虫大学2016 in 横浜

もうすでに一週間経ってしまったが、2016年12月17日、18日に横浜関内にあるさくらWORKSで開催された昆虫大学に入学(参加)してきた。はくラボブースの手伝いで行ったので、正確には入学金(入場料)を支払っていないのだが、2日間にわたって虫たちへの、博物への、溢れる愛に浸る2日間であった。
今年の校章にはハエトリグモが描かれていて、「昆虫ではないではないか」という指摘を「5億回」(学長からの公式発表)も受けたということだが、広義の「虫」ということで関係者全員納得の上での画像だということである。特に昆虫夜学では須黒達巳さんによる『刮目せよ!〜ハエトリグモの魅力と婚活事情〜』という講演もあり、今回、ハエトリグモは大きく取り上げられている。

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こちらがはくラボブース。昆虫大学ということもあり、虫へん湯呑みは早々に売り切れてしまった。

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17日に開催された昆虫夜学。どの話も興味深く、昆虫を中心に展開される話は、それぞれに広がりを持っていて、さすが地球上で最も繁栄している動物「昆虫」である。

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2日目の横浜の朝、よく晴れて気持ちが良い。

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2日目には嬉しいサプライズが(というか僕が仕掛けたのだけど)。出展者の一人であるとよさきかんじさんが作った「特攻服」が、開催前から話題を呼んでおり、ツイッターでは『疾風伝説 特攻の拓』をネタに盛り上がっていたので、ちょっと作者の所さんに声をかけたらわざわざ駆けつけてくれたのである。所さんが会場に現れた瞬間の盛り上がりは、学長はじめイベント主催者側が浮き足立つような雰囲気だった。ポストカードも準備してきてくれて、一時、所さんを囲んでのサイン会のような様相に。横浜の地で、「昆虫大学」と「特攻の拓」が出会う奇跡。

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かの有名なクマムシ博士も大興奮。

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マメコ商会。ここでシャツを1枚オーダー。サイズを測ってもらったのでぴったりのものが届くはず。

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あまのじゃくとへそまがり。精緻な革細工で様々な動物を作り出す。

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切り絵作家のいわたまいこさん。

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標本画家の川島逸郎さんによる、昆虫の標本画。これは本当に凄まじい精緻さで描かれており、とても真似の出来る領域ではない。昆虫学者・丸山宗利さんが世界一と評する標本画家でもある。

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最後に、ライブドローイングした昆虫大学のポスターの前で学長と一枚。これが例の特攻服である。そして、終了後に学長の命を受けて、昆虫大学名誉教授に就任することになりました。

動画『昆虫大学2016 in 横浜

再び開催されることがあれば、次もぜひ参加したいと思っています。



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