STUDIO D'ARTE CORVO

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update 2017.09.20

『ウミガメ骨群集』の復元3

1ヶ月以上、間が空いてしまったが、『ウミガメ骨群集』の続きである。
前回のスケッチに対してのコメントは次のようなものだった。

「早速の修正ありがとうごさいます!
非常に良くなりました!!骨内有機物の残存の程度やウミガメの白骨化の程度と骨の継ぎ目におけるバクテリアマットの具合など,私が思っている通りに(いや,それ以上に)再現されています.
拡大図と全景図の違いや骨内有機物の残存の程度は色合いでの表現になるとのこと了解です.それで問題ないです.

一点だけ,今になって少し気になってきたのが拡大骨の表面右にいる巻貝の角度が少し不自然に見えることです.巻貝をもう少し寝かせて,かつ軟体物の向きはほぼ正面だと思うので,それに合わせて貝も正面になると良いです.もし,貝殻の下側からのアングルの写真が必要であれば至急探します.

それ以外は申し分ありません.よろしくお願いいたします.」

全体の中でのハイカブリナは小さなパートな
ので、拡大してラフスケッチを描いてみた。ほんの数ミリしかない貝殻だが、そのフォルムは精緻で複雑な構造をしている。

bl17090803.jpg


このスケッチについても、即座に修正の指示が入る。

bl17090805.jpg

いつもながら指示が具体的でわかりやすい。常に図示があるのもとても助かる。文章だけだと、どうしてもイメージの持ち方に齟齬が生じて、二度手間三度手間になることが多々ある。

bl17090804.jpg
修正してオーケーのでたハイカブリナ。規則的なパターンで形成されるフォルムの描写は難しい。どちらというと苦手分野である。ハイカブリナのスケッチが出来上がったところで、全体のスケッチを一からやり直す。

bl17090801.jpg


ハイカブリナの修正に加えてホネクイハナムシの数も増やしている。メソダーモケリスの頭骨もより詳細な描写を心がけた。手前に大きく拡大した世界を描き、中景、遠景と奥行きのある空間を目指している。モノクロスケッチではその表現に限界があるが、カラーになったときは、より重層化された世界を展開できるはずだ。

「いいですね!素晴らしいです!!骨の上を這う巻貝や巻貝の上に生えたバクテリアなどが特に良いです.
構図としても拡大した骨と中景のウミガメとが非常に表したいものが1つにまとまっていて非常に良いです.

それで,2点だけ,欲をかかせていただいて,少し修正していただけるとなお良いです.
1.拡大した骨の上面の部分をもう少しだけ虫食いにしていただけると完璧です.骨の浸食度合いの資料を添付しました.幾度もの修正すみません.

2.まん中の二枚貝(ハナシガイ)の左から海底に向かう穴ですが,その穴の中につぶつぶを描いていただいていますが,このつぶつぶを消していただけますか?このようなつぶつぶがある復元画がこれまでにも教科書とかに出ているのですが,どうもこの穴にこういうつぶつぶは詰まっていないようなのです.
先日米国で開催された化学合成シンポジウムで,ハナシガイ類の巣穴を研究している方がいらっしゃったのですが,このようなつぶつぶはないとのことでした.ということで,いまさらですが,この海底に伸びる穴についても,貝の下方向にのびる巣穴のように空洞にしていただけますか?

この2点以外は申し分ありません.」

bl17090802.jpg

ようやくラフスケッチの最終版が完成した。これをトレースして、カラーでの仕上げに進めていく。復元画では科学的な正確さとともに、構図も重要なポイントであると考えている。美しく、かっこよい方がいいのが当然である。そこにあからさまな嘘があってはいけないが、イラストレーションとしてのわかりやすさを優先することもある。特に生物の生息密度の表現は事実から離れてしまうことが多い。
ここまでで全体のプロセスの半分ほどが終わったことになるが、実際の作業量がこれからが最も多い。ただ、このラフスケッチのやり取りがとても大切なのである。この積み上げがなければカラーの制作を始めることすらできない。

続く