STUDIO D'ARTE CORVO

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update 2017.09.20

『ウミガメ骨群集』の復元1

金沢大学のロバート・ジェンキンズ助教監修のもと、『ウミガメ骨群集』の制作を始めた。現生のクジラが死んで海底に沈むと、白骨化した後にも多くの生物が、それらを栄養分にするために集まってくる。かつての白亜紀の海でも、大型の脊椎動物に群がる生物がいて、化石にもその証拠が残っているのではないか?という研究成果をビジュアル化する目的で描いている。
白亜紀に群集を作っていた生物は、ほぼ現生種と同じであったと推測されるので、通常の復元に比べると楽な部分も多い。ただし、より正確なリアリティを求められるので、当然、難しさもある。ロバートさんは実際に海の中で鯨骨群集を観察し、ウミガメの死体を沈めその経過を記録し、研究室ではバクテリアが骨を覆っていく様を再現し観察を続けている。

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メールでの依頼があってから、最初の打ち合わせは金沢大学のロバート研究室(ロバ研)にて。標本や資料を目の前にした打ち合わせは、とても効率が良い。わからないことがあればすぐに質問できるし、実際に標本を観察して撮影やスケッチを行うこともできる。その場でラフを描いて、全体のイメージを共有していくこともできる。メールでのやりとりでもある程度は可能だが、より質の高い仕事となると、直接の対話に勝るものはないと思える。

提供してもらった資料写真や、撮影した画像などを使い、最初のラフスケッチを持ち帰ってから制作したもの。

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手前に大きく描いているのは、ウミガメの肋板の断面で、ホネクイハナムシが骨を溶かしながら根のようなものを伸ばしている。表面にはハイカブリニナ(巻貝の一種)とイガイ科の二枚貝、バクテリアマットがびっしりと覆っている。海底の泥にはハナシガイが潜んでいる。中景には死に絶えて海底に沈んだメソダーモケリス(オサガメの祖先型の絶滅種)が見えていて、その表面もバクテリアマットで覆われている。白亜紀の海であることをわかりやすくするため、遠景には首長竜の泳いでいる姿を配置した。

このラフスケッチに対するロバートさんからの回答が次のようなものだった。詳しく図解されたものも、後日送られてきたのだが、最初の印象としては概ね良好だったようで一安心である。

「断面も入れ込んだ複合的な絵ですね.今夜詳しく拝見させていただきますが,ぱっと見の第一印象は非常に良いです.バクテリアやホネクイハナムシの雰囲気,ウミガメの死骸の感じがとても良いと思います.

骨に付着している二枚貝はたぶんイガイ科をイメージされていると思いますが,白亜紀には化学合成を行うイガイ科が明確にはいないので削除していただくことになると思います.

また,この前の打ち合わせ時にはキヌタレガイはウミガメからは見つかっていないので不要ですと申してしまいましたが,間違いでした.元々首長竜だと思われていた骨が実はオサガメであることがわかり,それにはキヌタレガイが付着しておりました.ということでキヌタレガイ(Y字の巣穴を持つ二枚貝)も追加できるとありがたいです.追加があってごめんなさい.

細かい点はまた今夜詳しく拝見した上でメールいたします.
それにしても白黒のラフスケッチだけでも十分に雰囲気が伝わってきますね.すばらしいです.」

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ここまで詳しくコメントがあり、さらにわかりやすい追加の資料があると、次の段階がスムーズになる。まだモノクロの段階ではあるが、この1枚に様々な生物の世界を表現しなくてはならない。それぞれが関係しながら、ある狭い範囲の生物層を作り出している様を、生き生きとした筆致で描くことができれば、復元画として良いものになることが想像できる。海に沈んだメソダーモケリス以外は現生種をそのまま参考にすることができるし、ウミガメの基本的な形態は変わっていないのと、ほぼ骨を描くことになるので、かなり実際に近かったであろう情景を再現できそうだ。

これらのコメントをもとに、修正したスケッチが次のものである。

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現在、このラフスケッチを送った後、ロバートさんの返信を待っているところである。

続く