STUDIO D'ARTE CORVO

STUDIO D'ARTE CORVO は小田隆の公式ウェブサイトです。
update 2020.05.10

ケンタウロスのアンギアーリの戦い

しばらく前からケンタウロスの身体の構造を考えるのが面白くなっている。手足合わせて3対あるので、脊椎動物のボディプランからは外れるのだが、ウマとヒトという人間にとって重要なモチーフが組み合わされた、一粒で二度美味しい存在である。さらにそのケンタウロスを鎧武者にして、レオナルドの壁画をルーベンスが模写した『アンギアーリの戦い』をもとに構図を検討している。最終的にどういった作品として仕上げるかは決めていないが、かなりオーバークションの兵士の姿勢をどう解決するかが、目下のところの課題である。

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A3のコピー用紙に水性ボールペンで描いたもの。全体の構図を考えずに描き始めたので、上方がはみ出してしまった。

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手前の最も目立つ一体を、筋肉図を意識して描いてみたもの。激しく折れ曲がる胴体をどう解剖学的に解釈するかが難しい。まだまだ検討途上である。

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骨格から検討してみたが、これもまだしっくりこない。まだ少し時間がかかりそうだ。このポーズがうまく解決できれば、それ以外のケンタウロスのポーズはそれほど難しくないだろう。原寸で巨大な画面に描いてみたいものだ。

大阪市の住民投票

日曜日に実施された大阪市の住民投票から数日たったが、今日まで様々なことに思いを巡らしていた(といっても大したことを考えていたわけではないが)。住民投票当日、開票、結果が出るまで、それらの経過を気にしながら、最後まで違和感を覚えたのは、「大阪都構想」の是非を問う論調であったことである。これは大きな間違いだ。今回の住民投票で賛成が多数だった場合、大阪都構想へ大きく舵を切る事が既定路線であったとはいえ、あくまでもこの住民投票は、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づき、特別区設置の賛否について住民投票が行われることとなった。」といったものである。そして賛成が多数になれば大阪市が解体され、歴史上消滅するというものであった。
今回の住民投票は賛成派が仕掛けたものである。彼らは「大阪都構想」という大きなビジョンを持ち、賛成が多数になることを願い、大きな勝負に出た。賛成かどうか決めかねている、または反対派にとっては、いきなりリングの上に立たされて、その是非を突きつけられたようなものだった。当然、対案など準備できてなかっただろう。都構想の一つ一つのプランについて対症療法的に、反対意見を表明するしかなかったのが事実だと思う。それでも大阪都構想を推進したい立場の人間たちは、対案を求める。賛成派にとっては、反対派のやり方は、場当たり的で一貫性がないように見えたかもしれないが、そもそも政策を戦わせる場ではなかったのだから致し方ないだろう。

現在の大阪が多くの問題を抱え、経済的にも厳しい状況であることは事実なのだと思うが、その解決策として「大阪都構想」という選択肢しかなかったのかは分からない。「改革」という言葉は耳障りがよく、よりよい未来を約束してくれるような甘い響きがある。特に若い人たちにとっては魅力的に聞こえる言葉かもしれない。だが「改革」が断行されたとき、大きな影響を受けるのは若者や子どもたちの世代だ。そこにある未来は今よりもずっと良いのかもしれないが、逆にもっと悪い状況に陥るのかもしれない。やってみなければ分からないとはいえ、やってみるにはあまりにリスクが大きいと大阪市民は判断したのだろう。でも、その差はわずかで、ほぼ賛成、反対が同数であった。ただし、そこで重要なのは、反対派も今のままが良いと思っている人は少なく、賛成反対の態度を保留するために反対に票を投じた人も多くいただろうということである。

大阪都構想と、大阪市を存続させた上での改革案との一騎打ちであったなら、どんなに健全だっただろうか。それぞれのメリットをポジティブに語る討論会があったら、どれだけ興味深かっただろうか。「大阪都構想」という壮大な仕掛けに対して反論し、その実行を押しとどめるしかなかった反対派は、反対多数となった現在、次なる手をすぐには打てず、足並みをそろえて進むこともできないのが現状だろう。あまりぐずぐずしていると市民にも愛想を尽かされて、大阪都構想が再燃するかもしれない。反対派に準備する期間を与えずに実行された住民投票は、賛成派の狙い通りだったのかもしれないが、反対多数となったことで未来への一手を大幅に遅らせてしまうことになるのかもしれない。それでも僕は反対が多数であったことを支持するし、良かったと思っている(大阪市民ではないが)。
そして、今回の結果の最大のメリットは、一時的とはいえ橋下徹という政治家を表舞台から引き摺り下ろせたことだと思う。個人的には永遠に表舞台に上がってこない事を強く望むものであるが。
現在の心境としては、ただただほっとしている、というのが正直なところである。

美術解剖学を応用したクロッキー

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右側のクロッキーは10分で描いたもの、そして左側の解剖図は10分の休憩中に描いたものである。解剖図等をみながら描いたわけではないので、不正確な部分もあるかもしれないが、どういった意識でクロッキーやデッサンをしているかを示したものでもある。実際、このように観察しながら、考えながら描くのは、手間も時間もかかるのでクロッキーにはあまり向いていないかもしれない。僕の場合、その出っ張りは何なのか?骨なのか?筋肉なのか?脂肪なのか?そういったことを想像することが好きだし、それらを認識して把握し表現することに喜びを感じる。学生にはこういった方法が全てではないという話はするし、真似してもらいたいと思っているわけではない。

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こちらは3分のクロッキーの解剖図を休憩時間中に描いたもの。さらに短時間で描いたクロッキーなので、正確さに不安があるが、短い時間であっても解剖学的な特徴まで捉えたいと考えている。
僕の美術解剖学の授業では、リアルで写実的な人体を表現するというより、動きのある、動く可能性を感じさせる人体を表現することに主眼を置いている。マンガやアニメーション、イラストレーションに応用できる美術解剖学を目指している。もちろん油画、日本画、彫刻にも役立つ。僕自身、まだまだ知識不足なところがあり、学生と一緒に描きながら研究を続けているようなものである。いつか決定版といえるような、美術解剖学の教科書を作りたいと考えている。出来るだけ早く実現しなくては。


神保町ヴンダーカンマー(仮称)

2015年8月、予定していた博物ふぇすてぃばる!に出展出来なくなったため、新たな場所を求めて小さいイベントを企画しました。まだ詳細を詰めなくてはいけないですが、現状、決まっていることをお知らせします。

イベントタイトル『神保町ヴンダーカンマー』(仮称)

日時 2015年8月8日(土) 11:00〜20:00
                    8月9日(日) 12:00〜17:00

場所 奥野かるた店 2階ギャラリー 101-0051 東京都千代田区神田神保町2-26

出展責任者 小田 隆(STUDIO D'ARTE CORVO
      畠山泰英(株式会社キウイラボ

Wikipediaには『驚異の部屋(きょういのへや)は、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで作られていた、様々な珍品を集めた博物陳列室である。』とあります。博物館が出来る前、貴族や文人、学者などが、自分の興味のままに珍しい自然物や人工物、模造された架空の動物の一部などの珍品を集めた部屋が数多く作られました。博物学が発展する前の、ごく個人的に作られた、系統だっていないコレクションではありましたが、人間の持つ純粋な興味、収集欲を満たし、かつ美しく陳列された空間は今でも十分に魅力的です。
そんなヴンダーカンマーに現代の私たちがどれだけ近づけるか?そして、収集という形ではなく、グッズ製作、表現などをとおしてどれだけ楽しい空間を作ることが出来るか?歴史ある「奥野かるた店」という会場を使って「驚異の部屋」と呼べるような空間を実現できるか?
博物学として整理される以前の、ただ美しいから、ただ珍しいから、ただ面白いから、そんな人間の興味だけを反映したコレクション、グッズ、表現物、そして、今だから出来る学術的なアプローチが混在する雑多なイベントにすることを目指します。また、参加者の秘蔵コレクションの展示、制作物の展示及び販売を通して、
神保町から新たなヴンダーカンマーの提案を始める、第一歩としたいと考えています。

下描きなし、資料を見ないことは、そんなに凄い事か?

現在、東京で開催されているJunGi Kim Drawing Exhibition、展示を見にいけるかどうか微妙なのだが、リンク先にもあるドローイングの動画を以前見たときには、、その凄まじさには驚いたものである。全く構図をとらずに、下描きもせずに、躊躇なく修正することもなく描き進めていく。これをライブで見た人たちの感想も絶賛の嵐である。同じ空間にいることで、その凄みが何倍にも増幅することは想像に難くない。
しかし、本当にそれは絵を描くという行為として、そんなに素晴らしい事なのだろうか?
復元画を描く仕事は、資料が全てといっても過言ではない。間違えがあれば何度でも修正が必要になる。そもそもイラストレーションの場合、デザイナー、クライアントの要望に合わせて、何度も描き直すことが前提としてある。素早く描ける事は、作業において大きなアドバンテージとなるが、修正なく一発で描ける事にはそれほどの価値はない。資料を見なくとも頭の中に画像としてストック出来る事は、凄い能力だと思うが、人間というのは間違いを犯すものである。勘違いして記憶してしまうこともあるだろう。それもないほどの天才なのかもしれないが、調べて確認できることは、その場で確認したほうが二度手間にならず、仕事として正確な成果物に近づく事が出来る。僕は彼の才能を疑うわけでもなく、素晴らしいドローイング作品だと思っている。でも、同じことが出来ないからといって、失望することも、落胆することもない。特に学生にはそんな風に思ってほしくない。憧れるのは良いと思うが、多くの人にとって目指すゴールではないだろう。彼と同じことが出来なくても、絵の仕事はできる。画家やイラストレーターとして食べていくことはできる。

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いつも板書で描いている内容を、下描きなく、資料も見ないで描いてみた。資料を確認していないので、例えば、仕事として出版物などには掲載できないスケッチだ。
上手くいかなければ、何度も線を引けばいい。最終的に正しい線が見つかれば、それを清書すればいい。それを可能にする画材もツールもたくさんある。自分にあった方法を見つける事が重要だ。
あまりに絶賛する評価が多いので、天の邪鬼にちょっと思った事を書いてみた。

カッコウの修正

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昨日アップしたカッコウの原画。友人から脚の角度がおかしいという指摘を受けた。改めて見てみると確かにおかしい。鳥は踵を下げることで指が曲がり、がっちっりと枝などをつかむ事が出来る構造になっている。しかし、この絵では中足骨の角度が立っていて、踵があがっている状態である。これでは木にとまっている姿勢としては不自然だ。やはり質の悪い剥製を資料にしたことと、僕の不注意が原因である。

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修正したカッコウはこちら。腹部のラインもふくらませて尾羽も少し伸ばした。こういった指摘をしてくれる友人がいるというのは、とてもありがたいことである。

マウントされていない全身骨格模型

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少し前に注文していた、マウントされていない全身骨格模型が届いた。以前から大学の授業で使っていたのだが、個人用に今回入手したものである。大学で買ってもらったときは円高の影響で4万円台だったのが、今は円安で6万円以上。値上がりの幅が大きい。
マウントされていない骨格の利点は、関節面の観察が容易にできること、そしてあらゆる方向から手軽に骨の形を確認できることである。すでにつながった骨格模型だと意外に見れない部分が多く難しい。特に脊椎はつながれたままだと椎間板もはいっており、ひとつひとつの形のスケッチを描くのも困難だ。ばらばらなので部屋の中でコンパクトにしまえるのもよい。全身がつながったものは、スタンドも含めるとかなりのスペースをとるし、自立してくれないし。仕事のことを考えると、もっと早くに買うべきだったと反省している。

系統樹マンダラポスター『鳥編』原画制作中

ここのところ毎日コンスタントに制作を続けている鳥のペン画。現在、14種が完成している。制作時間は60分から120分。この企画の監修者である長谷川政美先生が撮影した写真を資料に描いている。

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制作途中のカッショクペリカン。あたりの線はおおよそこんな感じで、鉛筆での作業はおよそ5分ほど。その後、丸ペンでペン入れを進めていく。この写真の段階で、あたりからペン入れまで30分ほど。

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完成したカッショクペリカン。制作時間120分。実際に使用されるサイズはあまり大きくないので、それほど細密には描いていないが、種の特徴の描き分けはきちんとしなくてはいけない。
残りは30種ほど。理想的には今月中に全てを描き上げたいが、授業が始まるとペースが一気に落ちるので、なんとか今週末までにまとまった数を描いておきたい。


Surly Pacer 組み立て日記4 完成

Surly Pacer 完成といっても、とりあえず走れる状態になったというところ。試走してみたが、ここのところ小径車ばかり乗っていたので、漕ぎ出しの重さにびっくりした。当たり前の話なのだけど、直径の大きな車輪を動かすのは力がいる。これまで最大でも650(26インチ)しか乗ったことがなかったのに、700Cのロードである。それでもクロモリフレームなので、神経質な乗り味というわけではなく、ゆったり走っても気持ちがいい。

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ようやくシートポストが届いたので、サドルを固定することができた。このサドルは高校生のときに使っていたもので、しっかり慣しの終わった1枚革である。

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さすがに年季が入っていて、側面にある「BROOKS PROFESSIONAL」の刻印もほとんど読めない。しかし、これが程よい柔らかさになっていて。まったくお尻が痛くならない。慣しのときは毎日のように油をすりこんで、プラスチックハンマーで叩いたりしたものである。買ってから30年近くたつがカビが生えることもなく現役だ。

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中古で入手したフレームとフォークなのでしかたがないが、もう少しコラムが長ければよかった。少しハンドルの位置が低くなりすぎて、本当はもう少しサドルをあげたいのだけど、それができない。角度のついたステムなどに交換するしかないかな。ただ見た目がかっこわるくなってしまうのは否めない。

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古い形式のWレバー方式だが、デュラ&エース!だ!SHIMANOの最高峰、デュラエース。とはいえWレバーなので操作感に特筆すべきものはないと思う。手が滑りやすいのが玉にきず。
久々に趣味を楽しむ時間を持てたのが、本当に良かった。こういう時間もないとね。

Surly Pacer 組み立て日記3

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チェーンを張り、シフトワイヤー、ブレーキワイヤーを取り付け調整し、バーテープまで巻くことができた。しかし、いまだシートポストが手元に届いておらず、サドルまわりを取り付けることができない。試運転もしばしおあずけだ。変速関連は素人の調整なので、どこまで正しいセッティングが出ているか分からないが、まあまあ大丈夫だろう。だめなら、この部分の調整をお願いにショップに持ち込むつもり。ブレーキは好みに合わせてセッティングしたので問題なし。ゴールデンウィーク中に少し走らせて楽しめればと思っているが、仕事の現状がそうも言っていられない。