STUDIO D'ARTE CORVO

STUDIO D'ARTE CORVO は小田隆の公式ウェブサイトです。
update 2020.05.10

小田 隆 驚異のIllustration展 2

個人作品として制作したものが多かったにもかかわらず、個展のタイトルに「Illustration」とあるのはなぜか、と疑問に思われた方が多かったかもしれない。僕自身、プロフィールでは画家、イラストレーターと表記しているが、ここ最近、その境界はだんだん曖昧になってきている。大雑把には、依頼があったものをイラストレーション、自発的に描いたものを絵画作品と考えていたのだが、今となってはジャンルを分けることにほとんど意味がないと考えている。

チラシにも表記されていた、プロデューサーであるI氏のコメントで、このようにIllustrationを定義してもらっている。
「Illustration(イラストレーション)という言葉には「照らす」「明るくする」を意味するラテン語lustrare(英語illuminate「照らす」と同一語源)があります。
今回は、小田氏の表現する生物の痕跡に光をあてて制作してきた作品群を総称し、Illustration(イラストレーション)という言葉で表現しました。」
美術史の上でも、19世紀末までの依頼主の存在する絵画は全てIllustration(イラストレーション)ということもできるし、印象派以降にも同じ作家の中に、依頼で描いたもの、自発的に描いたものが混在する。自発的に描いたものが、商業的に使われることもあるので、本当に自分のなかでは分けることが不可能になってしまっているのである。ただ、昨今の極めて狭い意味でのイラストレーションとして見られることは避けたかったので、タイトルをIllustrationと英語表記にしてもらったという経緯があった。

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こちらはネコのシリーズ。以前はネコの肖像画を依頼を受けてよく描いていた。最大で9頭を120号で制作したこともある。

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絵本『アパトサウルス』(ポプラ社)の中から一部の原画を展示。アパトサウルスはもっとも好きな恐竜の一つで、ディプロドクスに比べてマッシブなところが好きだ。複雑な形態の頚椎も美しい。

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豊橋市自然史博物館の新生代コーナーから2点。『鯨偶蹄目の進化』と『人類の進化』。後になってがついたのが、『鯨偶蹄目の進化』に鰭脚目のアロデスムスが入っていたこと。アロデスムスは鯨の仲間ではなく、アシカやオットセイの仲間です。

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左は『情熱大陸』のCDに同封されたポスターの原画。デザイナーの佐藤卓氏から直接依頼を受けて、2008年に発売されたものである。まだ入手可能のよう。右は2009年に油彩の制作を再開した時に描いた、天使をモチーフにした1枚。

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現在、執筆中の美術解剖学本の原画も見てもらえるようにファイリングして展示した。

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これまでに出版された一部の書籍。手にとって自由に見てもらうことができた。

ちょうど個展の最終日が、系統樹マンダラのクラウドファンディングの募集最終日と重なっていたため、系統樹マンダラの原画とポスターの展示にも力をいれていた。

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原画は全点あったのだが、とても展示するスペースがなく、ほんの一部を展示するにとどまった。将来的には、どこかで全点数を展示したいと考えている。
クラウドファンディングはおかげさまで、みなさまの支援の結果、実現できることとなり、これから45点カメを描かなくてはならないのである。

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24、25日の2日間を使ってライブドローイングを行った。お題は『ケンタウロス』。画材はいつものプロッキー。

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完成画像とディテール。いつも、もう少し線と描きこみをへらせればなあと思っている。今回はきちんとスケッチを作らずに始めたので、いきあたりばったりな部分も多かったかもしれない。

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最後に原寸大のシリーズを再び掲載。これからの数年、もっとも重要なシリーズになると考えている。次に何を描くかをまだ決めていないが、大きなものだけでなく、比較的小さな動物を描いていきたいと思っている。哺乳類だけに限っているわけではなく、現生種、化石種含めて、対象になる動物は膨大だ。ただし、僕自身が骨格を理解できているもの、取材できて良質な資料が揃うもの、というのは大前提ではある。

これだけの個展を開催することは、当分の間は難しい。原画は実際に見てらもらわないことには、本当の魅力は伝わらない。絵画のひとつの役割として、展示された空間に影響を及ぼす存在であることが、重要だと僕は考えている。それは印刷物には難しい。イメージだけが情報化されたものと、物質としてそこに存在するものの差は、思っている以上に大きい。
南港という場所であったにもかかわらず、1200名を超える方にご来場いただけた。しかし、この数はまだまだ少ない。もっと多くの人にみて欲しかった。
次の展示の機会がいつになるかわからないが、今回を超えるものにしなくてはと思っている。