STUDIO D'ARTE CORVO

STUDIO D'ARTE CORVO は小田隆の公式ウェブサイトです。
update 2018.04.01

本務校が大阪芸術大学になります

3月31日に10年勤めた成安造形大学を退職して、4月1日から大作家芸術大学、もとい、大阪芸術大学に移ることになりました。准教授として美術解剖学を中心に授業と研究を進めていきます。
10年一区切りでもあるし、特任としての任期もあり、大阪芸術大学からの、ぜひ、美術解剖学の講座を持って欲しいという声に応える形での移籍となりました。これまではイラストレーション領域という枠の中での授業でしたが、これからは様々なコースに美術解剖学の授業を供給していくことになりなす。それぞれのコースで要求される知識やスキルの違いもありますが、基本としておさえていく部分を中心に、コース別にアレンジした内容が作れればと考えています。
通年での開講となるため、じっくりとしたカリキュラムが組めます。いままで駆け足だった部分を、より学生が学びやすいよう工夫していきたいと考えています。
所属は専門教養課程となり、実技系のコースには所属しません。
研究室は9号棟612号室になります。キャンバス内で見かけたら、気軽に声をかけてください。
これからは、大阪芸術大学の小田隆をよろしくお願いいたします。
成安造形大学では週1回、非常勤講師として人体表現と美術解剖学の授業を担当します。

2018年4月1日

小田 隆 驚異のIllustration展 2

個人作品として制作したものが多かったにもかかわらず、個展のタイトルに「Illustration」とあるのはなぜか、と疑問に思われた方が多かったかもしれない。僕自身、プロフィールでは画家、イラストレーターと表記しているが、ここ最近、その境界はだんだん曖昧になってきている。大雑把には、依頼があったものをイラストレーション、自発的に描いたものを絵画作品と考えていたのだが、今となってはジャンルを分けることにほとんど意味がないと考えている。

チラシにも表記されていた、プロデューサーであるI氏のコメントで、このようにIllustrationを定義してもらっている。
「Illustration(イラストレーション)という言葉には「照らす」「明るくする」を意味するラテン語lustrare(英語illuminate「照らす」と同一語源)があります。
今回は、小田氏の表現する生物の痕跡に光をあてて制作してきた作品群を総称し、Illustration(イラストレーション)という言葉で表現しました。」
美術史の上でも、19世紀末までの依頼主の存在する絵画は全てIllustration(イラストレーション)ということもできるし、印象派以降にも同じ作家の中に、依頼で描いたもの、自発的に描いたものが混在する。自発的に描いたものが、商業的に使われることもあるので、本当に自分のなかでは分けることが不可能になってしまっているのである。ただ、昨今の極めて狭い意味でのイラストレーションとして見られることは避けたかったので、タイトルをIllustrationと英語表記にしてもらったという経緯があった。

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こちらはネコのシリーズ。以前はネコの肖像画を依頼を受けてよく描いていた。最大で9頭を120号で制作したこともある。

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絵本『アパトサウルス』(ポプラ社)の中から一部の原画を展示。アパトサウルスはもっとも好きな恐竜の一つで、ディプロドクスに比べてマッシブなところが好きだ。複雑な形態の頚椎も美しい。

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豊橋市自然史博物館の新生代コーナーから2点。『鯨偶蹄目の進化』と『人類の進化』。後になってがついたのが、『鯨偶蹄目の進化』に鰭脚目のアロデスムスが入っていたこと。アロデスムスは鯨の仲間ではなく、アシカやオットセイの仲間です。

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左は『情熱大陸』のCDに同封されたポスターの原画。デザイナーの佐藤卓氏から直接依頼を受けて、2008年に発売されたものである。まだ入手可能のよう。右は2009年に油彩の制作を再開した時に描いた、天使をモチーフにした1枚。

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現在、執筆中の美術解剖学本の原画も見てもらえるようにファイリングして展示した。

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これまでに出版された一部の書籍。手にとって自由に見てもらうことができた。

ちょうど個展の最終日が、系統樹マンダラのクラウドファンディングの募集最終日と重なっていたため、系統樹マンダラの原画とポスターの展示にも力をいれていた。

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原画は全点あったのだが、とても展示するスペースがなく、ほんの一部を展示するにとどまった。将来的には、どこかで全点数を展示したいと考えている。
クラウドファンディングはおかげさまで、みなさまの支援の結果、実現できることとなり、これから45点カメを描かなくてはならないのである。

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24、25日の2日間を使ってライブドローイングを行った。お題は『ケンタウロス』。画材はいつものプロッキー。

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完成画像とディテール。いつも、もう少し線と描きこみをへらせればなあと思っている。今回はきちんとスケッチを作らずに始めたので、いきあたりばったりな部分も多かったかもしれない。

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最後に原寸大のシリーズを再び掲載。これからの数年、もっとも重要なシリーズになると考えている。次に何を描くかをまだ決めていないが、大きなものだけでなく、比較的小さな動物を描いていきたいと思っている。哺乳類だけに限っているわけではなく、現生種、化石種含めて、対象になる動物は膨大だ。ただし、僕自身が骨格を理解できているもの、取材できて良質な資料が揃うもの、というのは大前提ではある。

これだけの個展を開催することは、当分の間は難しい。原画は実際に見てらもらわないことには、本当の魅力は伝わらない。絵画のひとつの役割として、展示された空間に影響を及ぼす存在であることが、重要だと僕は考えている。それは印刷物には難しい。イメージだけが情報化されたものと、物質としてそこに存在するものの差は、思っている以上に大きい。
南港という場所であったにもかかわらず、1200名を超える方にご来場いただけた。しかし、この数はまだまだ少ない。もっと多くの人にみて欲しかった。
次の展示の機会がいつになるかわからないが、今回を超えるものにしなくてはと思っている。

小田 隆 驚異のIllustration展 1

先日まで開催していた『小田 隆 驚異のIllustration』展の会場の様子を紹介したい。
今回の展示はこの10年ほどで制作した作品が中心になっており、油彩の制作を再開した時期ともほぼ重なる。また、成安造形大学の教員となってから10年ということもあり、それまでのフリーランスのときとは一線を画した制作数、制作内容となっている。フルタイムで絵を描けない苦しさもあったが、人体描写の授業を担当することで得られた美術解剖学の知識やスキルは、今ではかけがえのないものとなっている。
展示場所となった大阪デザイン振興プラザデザインギャラリーは、363㎡と巨大な空間だったが、持ち込んだ作品の一部を展示することができなかった。動物の原寸大の油彩シリーズ、ウマ、インドサイ、ライオンを展示することができたのが、この展覧会の大きな意義の一つであった。

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廊下を歩いてくると正面には、広々としたエントランスから見えるインドサイが出迎えてくれる。これを目当てに訪れたお客さんも多かったと思うので、もっとも目立つ位置に展示をした。

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制作順はウマが最初で、ライオン、インドサイの順番となる。ウマは260 x 324cm。ライオンは162 x 260cm。インドサイは194 x 390cm。すべてほぼ原寸大で描いたものである。まだ3点しかないが、将来的には10点以上揃えて並べてみたいと考えている。

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入口入って左手からは頭骨のシリーズがずらりと並ぶ。ヤギ、スミロドン、ライオン、キリン、イノシシ、カバ、ゴリラアスラ、頭骨シリーズではないが、アジアゾウの死産胎子。

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原寸大シリーズの右手には、ゴリラ、翼を持った手や八咫烏、ウマ、トラ、ヒト、ビーバー、ワニガメなどが並ぶ。手前の棚はグッズコーナーで、広々と陳列することができた。

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今回、僕が原寸大シリーズとともに目玉として展示に力をいれたのが、人体のデッサンとクロッキーを並べることだった。

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クロッキーの総数は約7000枚。10年分のスケッチブックを全て並べて、手にとって1枚ずつ見られるように展示した。

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デッサンは残念ながらほんの一部しか展示することができなかった。

展示タイトルの冠に「日本を代表する古生物復元画家」とあったのだけど、この10年はそれほど復元画の仕事はしていなかった。豊橋や丹波といった重要で大きな案件も中にはあったが、全体としては復元画の依頼は減ってきていた。

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ここで紹介している作品も2006、2007年と比較的古いものが中心である。

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こちらの壁は2008年以降と新しいが、さほど数は多くない。
まだ紹介しきれていない作品も多く、展覧会についてもあまり説明できていないので、続きをまた書こうと思う。(続く)




70 CREATORS' SEVEN

もうすでにTwitterやFacebookでも紹介したが、この夏、ウルトラセブンをテーマに1枚のイラストを仕上げた。
セブンの本放送のときはまだ生まれていなかったが、再放送でなんども見た記憶がある。なかでも「キングジョー」の印象は強烈で、今でも好きなデザインである。あらためてキングジョー登場のエピソードを見てみると、どこにも「キングジョー」という名称は出てこない。終始「ペダン星人のスーパーロボット」と呼ばれていた。ということで、今回のイラストのタイトルは「ペダン星人のスーパーロボット」である。

版権もののイラストということで、ラフスケッチをまず円谷プロにチェックしてもらうという行程があった。その時に描いた、ラフスケッチがこれである。

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スムーズにOKをもらうことができた。キングジョーをメインにするために、ウルトラセブンはやや後方からの構図とした。セブンがどういった骨格で筋肉をしているかは不明だが、ぴったりしたスーツからうきあがる筋肉を強調した姿を想像して描いてみた。

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完成したのがこちらの画像。神戸港での最後の戦いの場面。タンカーを振り回す描写があることから、海面は重油でべったりと汚れている想定とした。
キャンバスにアクリル。65.2 x 53 cm(F15号)。

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グレースケールチェック。もうすこし空の明度をあげたほうがよかったかもしれない。

この作品は『70 CREATORS' SEVEN クリエイター70人のウルトラセブン』に収録掲載される。数多くのクリエイターのなかから選んでいただき、とても光栄なことである。
また、展覧会も企画されていて、今週の木曜日から池袋パルコのパルコミュージアムで開催される。

70 CREATORS' SEVEN ウルトラセブン放送開始50年特別企画展
2017年10月19日(木)〜11月5日(日)
10時〜21時(入場は閉場の30分前まで/最終日は18時閉場)
入場料:一般500円、学生400円、小学生以下無料
パルコミュージアム 池袋パルコ本館7F

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18日のプレオープンとレセプションに参加できないのが、重ね重ね残念。会場では原画の販売もあります。

NHKテキスト『心の進化をさぐる〜はじめての霊長類学』の表紙イラスト

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NHKテキスト『心の進化をさぐる〜はじめての霊長類学』の表紙イラストの仕事。連絡はこのサイトの問い合わせメールから始まったが、とてもスムーズで気持ちのよい仕事だった。やはり仕事をする上で大事なのは、納期が適切であること、ギャラが明確であること、仕様と使用範囲がはっきりしていることなどだ。これらが最初の問い合わせから明らかだったので、すぐに制作に入ることができた。
元の資料は、提供された写真を使用している。写真のままに描くのではなく、幾つかのリクエストが編集者からあった。手前の個体の手で隠れてしまっている足の裏を描いて欲しい。背景の森は描かずに白バックで。そこにこちらから、奥にいる大人のチンパンジーの片目が隠れているので、両目を見えるようにしませんか?という提案をした。
そして出来上がったラフがこれだ。

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紙に鉛筆。このラフは修正なく編集者のOKがでた。これほどスムーズだと拍子抜けするが、正直なところとても嬉しい。

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完成した原画。イラストレーションボードに丸ペン、インク、透明水彩。これも一発OKでまったく修正することなく、締め切りを大幅に残して完成してしまった。カナダに行く前に納品したかったので、少し急いだのだが無事に納期を守ることができた。

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かっこよく美しい配色のデザインが出来上がってきた。こういったイラストレーションは良い素材であることが重要だ。著者の先生にも気に入っていただけたようで、とても良い仕事だった。
アートディレクターがいて、目指すところが明確な仕事はやりやすい。全てこうだといいのだけど、そうもいかないのが現実である。

Royal Tyrrell Museum 探訪 3

初めて訪れたRoyal Tyrrell Museumだが、SVPからの参加ということでバックヤードにも入ることができた。一般客として訪れていたらなかっただろう。参加者をグループ分けした少人数によるツアーだったので、とても快適に見せてもらうことができた。プレパレーションルームはガラス張りで外からも見ることができる。かなり大きな空間で広々とした作業スペースが確保されている。

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机から生えているアームのような機械は集塵機。プレパレーションのときに出る粉塵を吸い取るために使われる。

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プレパレーションルームの中から。復元のヒントになるものや、まだ研究の遡上にも上がっていないであろう化石を、気軽に撮影することができた。撮影できないものは、はっきりと表示があるためわかりやすい(にもかかわらずうっかり撮影しそうになってしまったが)。どこまで見せてよいか判断に迷うものもあるので、ここでは写真は掲載しないことにする。

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ついつい工具棚には惹かれてしまう。整然と整理されていて、とても使いやすそう。広さは正義だ。天井の高さもたっぷりある。

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ふと見かけたタッピングビスの頭に四角い穴が。さすがにこれは日本では見たことがなし。ルノーのオイルドレンプラグが同じ形状だが、もちろん大きさが全然違う。プラスのドライバーよりも確実に力が入り、滑りにくそうだ。一度使ってみたいなあ。今度、アメリカやカナダでホームセンターや工具店に行く機会があったら探してみよう。

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バックヤードツアーを終えて再び展示室内へ。それほど大きな博物館ではないが、見所はたっぷりあって、丁寧に見ているととても1日では足らない。そのなかでも、このグラフィックは美しく情報が整理されていて秀逸な出来栄えだった。Royal Tyrrell Museumにはアートとデザインの部署が設けられているかどうかがわからなかったけど、博物館がデザイナーやイラストレーターと密にやり取りをして作られたものであることは分かる。

周囲の露頭をながめながら屋上で食べたランチも楽しかった。日差しが強く日向はかなり暑かったけど、湿度が低いのでそれほどの不快さはなくリラックスしたひと時だった。

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帰りのバスは疲れてほとんど寝てしまった。日本のバスに比べると剛性感があって、振動があまり気持ち悪くなく感じるのは気のせいだろうか。日本の高速バスに何度か乗ったことがあるけど、広いシートのものでもあまり乗り心地がよいと思ったことがなく、不快な振動がずっと続くような印象がある。気のせいなのか、本当に剛性が違うのか、詳しい人に一度聞いてみたい。

最後に博物館で描いたスケッチをいくつか。

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欧米の博物館でスケッチをしていると、周囲の人たちが関心を持ってみてくれることが多い。声をかけられることもしばしばある。今回、印象的だったのは、小学生ぐらいの男の子から"You are very good!"。
なんであれ、描いている時に声をかけてもらえるのは嬉しいものである。

ということでRoyal Tyrrell Museum 探訪記はこれで終了。

Royal Tyrrell Museum 探訪 2

博物館の展示のメインは、もちろんジオラマではない。この博物館ではジオラマの展示が導入として、とてもうまく使われている。恐竜の復元をはじめとしたジオラマの制作に、どれだけの背景があるのか?研究チームがどのようにその知見を積み上げていった結果なのか?といったことが、この後の展示で存分に語られていくわけである。

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Royal Tyrell Museumのアイコンにもなっている、このゴルゴサウルスの産状化石は関節した状態であることにも驚かされるが、一つ一つの骨格のディテールに見られる精緻な造形には目を見張った。腸骨と一番後ろの肋骨の関節の仕方は、これまでの疑問を氷解させるものでもあった。腸骨の前方にあるくぼみが、このように組み合わされるものだったとは、初めて知ることができた。実に合理的に組み合わさっている。

今回、最大の驚きだったのは、今最も注目を集めているであろう恐竜化石Borealopelta marlmitchelliを見ることができたことだ。しかも、それはレプリカではなく、本物の化石だった。

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整然と並ぶ皮骨板と不規則な鱗の組み合わせが絶妙に体表を覆っている。皮骨板の一部にはケラチンの痕跡が残っているらしい。ガラス越しではあるが、かなり近い位置で観察することができた。申し訳程度に黄色いラインが展示ケースの周囲に貼ってあるのだが、ほとんどの来場者は吸い込まれるようにその線を越えてしまっていた。その気持ちもよくわかる。ただ、その展示に仰々しさはなく、ごく当たり前にひとつの展示物として、部屋の真ん中に横たわっていた。
このタイミングで見ることができたのは幸運だった。

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この化石の尾の部分は発見されていないのだが、シンプルな鉄の造形で補われていた。このシンプルさが化石とはちがった魅力を放っていて、この種の全体像を、生きた姿を想像させることに寄与している。どこまでが発見された化石で、どこからが発見されていないかを、はっきりと分かるように展示することはとても大切である。ともすると、あたかも全てが発見されているように復元しがちだが、あるところとないところが明確になっているから、より興味深く化石を見ることができるのである。特に博物館では重要なところであろう。

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ここは「白亜紀の庭」と名付けられた、白亜紀の時代に生息していた、今も生きた姿を見ることができる植物を観察できるスペースである。当時と同じように蒸し暑い環境が作られていて、ジオラマとはまた違った雰囲気を味わうことができる。

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このあたりから、一眼レフカメラが不調を来し出した。数枚撮影するとシャッターがスタックするという現象だ。自由に撮影できないことに苛立つ。せっかくここまで来ながら、だましだまし使わなければならないのは、ものすごいストレスだった。十分に撮影することができなかったのは、今でも心残りである。

続く

Royal Tyrrell Museum 探訪 1

今年の8月は、2014年以来のSVP Annual meetingに参加してきた。場所はカナダのカルガリー。Annual meetingが始まるのは23日からだったが、22日のRoyal Tyrrell Museumを訪れるツアーに参加するため、21日には現地入りしていた。
22日は朝早くからホテルの近くから観光バスで、Royal Tyrrell Museumのあるドラムへラーへ移動。およそ片道2時間足らずの旅程である。ほぼフリーウェイで渋滞もなく、快適に移動することができた。ドラムへラーに行くなんてとても大変なことだと思っていたが、車があればカルガリーからそれほど遠くないことがわかった。道もとてもわかりやすい。東京から近県の博物館へ行く方が、はるかに遠く行程も困難だろう。

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天気は快晴。広大な土地と広い空がずっと続く。

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ドラムへラーは思っていた以上に街だった。

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随所に恐竜をモチーフにした何かが置かれていた。

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Royal Terrell Museumが近づき、坂を下って谷へと降りていくと、見事な露頭がそこかしこに見えてくる。まだ、たくさんの化石たちが眠っているのだろう。

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到着。写真でしか見たことがなかった博物館の外観が目の前に。

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東からの光を浴びるゴルゴサウルスの復元模型。日差しが強く気温がぐんぐんと上がってきている。

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館内では最初にスライドを使った、博物館の概要をスタッフから説明してもらう。

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エントランスを通って最初の展示室にあるのが、このジオラマたち。実物大に復元された白亜紀の生物たちが、生き生きとその当時の情景の中で蠢いている。ここには動くロボット恐竜はいないが、それぞれにストーリーを感じさせるダイナミックな動きには臨場感があり、来場者たちを一気に白亜紀の世界へ連れ去っていくようだった。日本の博物館に設置されたロボット恐竜の大半は、ありえないほど大股を開いて、上半身を激しく動かし吠えて威嚇するばかりで、リアリティのある世界を見せてくれない。いまだ見世物小屋の意識から抜けることができていないのだろうか。

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今にも動き出しそうな姿勢のゴルゴサウルス。地形や植物まで丁寧に作られている。

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細部まで一切手を抜くことなく、当時の植生が再現されている。

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ほぼ現生種とかわらない姿のスッポン。水底の落ち葉や枯れ枝がとてもリアルだ。

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地面を踏みしめた時にできる土のめくれまで表現されていて、恐竜の足には傷跡まで残っている。かつて彼らが生きていたことを実感することができる、見事なジオラマの展示室だった。

続く

『ウミガメ骨群集』の復元3

1ヶ月以上、間が空いてしまったが、『ウミガメ骨群集』の続きである。
前回のスケッチに対してのコメントは次のようなものだった。

「早速の修正ありがとうごさいます!
非常に良くなりました!!骨内有機物の残存の程度やウミガメの白骨化の程度と骨の継ぎ目におけるバクテリアマットの具合など,私が思っている通りに(いや,それ以上に)再現されています.
拡大図と全景図の違いや骨内有機物の残存の程度は色合いでの表現になるとのこと了解です.それで問題ないです.

一点だけ,今になって少し気になってきたのが拡大骨の表面右にいる巻貝の角度が少し不自然に見えることです.巻貝をもう少し寝かせて,かつ軟体物の向きはほぼ正面だと思うので,それに合わせて貝も正面になると良いです.もし,貝殻の下側からのアングルの写真が必要であれば至急探します.

それ以外は申し分ありません.よろしくお願いいたします.」

全体の中でのハイカブリナは小さなパートな
ので、拡大してラフスケッチを描いてみた。ほんの数ミリしかない貝殻だが、そのフォルムは精緻で複雑な構造をしている。

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このスケッチについても、即座に修正の指示が入る。

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いつもながら指示が具体的でわかりやすい。常に図示があるのもとても助かる。文章だけだと、どうしてもイメージの持ち方に齟齬が生じて、二度手間三度手間になることが多々ある。

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修正してオーケーのでたハイカブリナ。規則的なパターンで形成されるフォルムの描写は難しい。どちらというと苦手分野である。ハイカブリナのスケッチが出来上がったところで、全体のスケッチを一からやり直す。

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ハイカブリナの修正に加えてホネクイハナムシの数も増やしている。メソダーモケリスの頭骨もより詳細な描写を心がけた。手前に大きく拡大した世界を描き、中景、遠景と奥行きのある空間を目指している。モノクロスケッチではその表現に限界があるが、カラーになったときは、より重層化された世界を展開できるはずだ。

「いいですね!素晴らしいです!!骨の上を這う巻貝や巻貝の上に生えたバクテリアなどが特に良いです.
構図としても拡大した骨と中景のウミガメとが非常に表したいものが1つにまとまっていて非常に良いです.

それで,2点だけ,欲をかかせていただいて,少し修正していただけるとなお良いです.
1.拡大した骨の上面の部分をもう少しだけ虫食いにしていただけると完璧です.骨の浸食度合いの資料を添付しました.幾度もの修正すみません.

2.まん中の二枚貝(ハナシガイ)の左から海底に向かう穴ですが,その穴の中につぶつぶを描いていただいていますが,このつぶつぶを消していただけますか?このようなつぶつぶがある復元画がこれまでにも教科書とかに出ているのですが,どうもこの穴にこういうつぶつぶは詰まっていないようなのです.
先日米国で開催された化学合成シンポジウムで,ハナシガイ類の巣穴を研究している方がいらっしゃったのですが,このようなつぶつぶはないとのことでした.ということで,いまさらですが,この海底に伸びる穴についても,貝の下方向にのびる巣穴のように空洞にしていただけますか?

この2点以外は申し分ありません.」

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ようやくラフスケッチの最終版が完成した。これをトレースして、カラーでの仕上げに進めていく。復元画では科学的な正確さとともに、構図も重要なポイントであると考えている。美しく、かっこよい方がいいのが当然である。そこにあからさまな嘘があってはいけないが、イラストレーションとしてのわかりやすさを優先することもある。特に生物の生息密度の表現は事実から離れてしまうことが多い。
ここまでで全体のプロセスの半分ほどが終わったことになるが、実際の作業量がこれからが最も多い。ただ、このラフスケッチのやり取りがとても大切なのである。この積み上げがなければカラーの制作を始めることすらできない。

続く

『ウミガメ骨群集』の復元2

前回からの続き。ロバートさんから次のようなコメントと、修正指示を書いた画像が送られてきた。概ね、好評ではあるが、修正箇所は多い。

「さて,第2弾ラフスケッチありがとうございます.
おどろおどろしい感じが出て非常に良い雰囲気です!図にコメントを入れたものを添付しました.
大きなところとしては拡大図と全景図の区切りがわかりにくい気がしてきました.はじめてこの復元画を見た人でも,全景と骨の拡大図という2つの図が組み合わさっていることがもう少しわかりやすい方が良いと思いますが,いかがでしょうか?

もう一つ,骨の中の脂質(骨内有機物)をどう描くかをこの段階でつめておいた方が良いと思います.図内のコメントをご参考におねがいします.

> ウミガメの損傷はどれぐらいにしましょう?頭部はほぼ白骨化しているけど、体にはまだすこし表皮がなくなっているようなイメージです。

図へのコメントにも入れましたが全部白骨化していただいた方が良いと思いました.ホネクイハナムシやハイカブリニナ科の巻貝がすでにある程度成長している段階の図なので,数ヶ月は経過していて,その場合は骨は白骨化している状態にしていただいた方が良いです.

それにしても第2弾ラフでここまで雰囲気が出せるものだと改めて感心しました.」

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ラフスケッチの場合、あえて描かなかったり、省略している部分があるのだが、そういったことは研究者には通用しない。常にすべてを説明できるようにしておく必要がある。ただ、そういった余地を残すことで、より修正に気付きやすくなる側面もあるように思う。この場合だと、手前の骨の断面に見える有機物と、それが失われた部分の差が明確に描写されていなかった。僕も意識できていたわけではないが、あえて省略していた部分もある。なるほど、ホネクイハナムシの根との関係を明確に表現するには、もっと明快に描きわける必要があったことに気づかされた。
手前の骨はかなり近い位置にあり、拡大された世界である。中景から背景にかけては、そうとうに遠いところにあるものたちだ。モノクロでも、その大きな差異を表現できていないのは僕の問題だ。
海底に接した部分の緻密骨が分解されないことは、全然知らなかった。なんとなく海底に溶け込んでいくようなイメージを持ってしまっていた。こういったことも、指摘されないと気づかないところである。
これらの情報を統合して、修正したのが次の画像である。

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ホネクイハナムシをもう1匹増やし、海底と接する部分の緻密骨をしっかりと描き、骨の内部の有機物の詰まっているところ、そうでないところを明確に描き分けた。
ウミガメは白骨化が進んでいるが、もう少しばらばらにしたほうがいいだろう、という指摘をすでに受けている。
次の段階では、巻貝、二枚貝のスケッチを、それぞれ別々に拡大して描く。各部分のディテールを明確にしておけば、全体を描くときの助けにもなる。

このスケッチにも、迅速にロバートさんからコメントが届いた。

早速の修正ありがとうごさいます!
非常に良くなりました!!骨内有機物の残存の程度やウミガメの白骨化の程度と骨の継ぎ目におけるバクテリアマットの具合など,私が思っている通りに(いや,それ以上に)再現されています.
拡大図と全景図の違いや骨内有機物の残存の程度は色合いでの表現になるとのこと了解です.それで問題ないです.

一点だけ,今になって少し気になってきたのが拡大骨の表面右にいる巻貝の角度が少し不自然に見えることです.巻貝をもう少し寝かせて,かつ軟体物の向きはほぼ正面だと思うので,それに合わせて貝も正面になると良いです.もし,貝殻の下側からのアングルの写真が必要であれば至急探します.

それ以外は申し分ありません.」


続く