STUDIO D'ARTE CORVO

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update 2020.05.10

美術解剖学を応用したクロッキー

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右側のクロッキーは10分で描いたもの、そして左側の解剖図は10分の休憩中に描いたものである。解剖図等をみながら描いたわけではないので、不正確な部分もあるかもしれないが、どういった意識でクロッキーやデッサンをしているかを示したものでもある。実際、このように観察しながら、考えながら描くのは、手間も時間もかかるのでクロッキーにはあまり向いていないかもしれない。僕の場合、その出っ張りは何なのか?骨なのか?筋肉なのか?脂肪なのか?そういったことを想像することが好きだし、それらを認識して把握し表現することに喜びを感じる。学生にはこういった方法が全てではないという話はするし、真似してもらいたいと思っているわけではない。

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こちらは3分のクロッキーの解剖図を休憩時間中に描いたもの。さらに短時間で描いたクロッキーなので、正確さに不安があるが、短い時間であっても解剖学的な特徴まで捉えたいと考えている。
僕の美術解剖学の授業では、リアルで写実的な人体を表現するというより、動きのある、動く可能性を感じさせる人体を表現することに主眼を置いている。マンガやアニメーション、イラストレーションに応用できる美術解剖学を目指している。もちろん油画、日本画、彫刻にも役立つ。僕自身、まだまだ知識不足なところがあり、学生と一緒に描きながら研究を続けているようなものである。いつか決定版といえるような、美術解剖学の教科書を作りたいと考えている。出来るだけ早く実現しなくては。


下描きなし、資料を見ないことは、そんなに凄い事か?

現在、東京で開催されているJunGi Kim Drawing Exhibition、展示を見にいけるかどうか微妙なのだが、リンク先にもあるドローイングの動画を以前見たときには、、その凄まじさには驚いたものである。全く構図をとらずに、下描きもせずに、躊躇なく修正することもなく描き進めていく。これをライブで見た人たちの感想も絶賛の嵐である。同じ空間にいることで、その凄みが何倍にも増幅することは想像に難くない。
しかし、本当にそれは絵を描くという行為として、そんなに素晴らしい事なのだろうか?
復元画を描く仕事は、資料が全てといっても過言ではない。間違えがあれば何度でも修正が必要になる。そもそもイラストレーションの場合、デザイナー、クライアントの要望に合わせて、何度も描き直すことが前提としてある。素早く描ける事は、作業において大きなアドバンテージとなるが、修正なく一発で描ける事にはそれほどの価値はない。資料を見なくとも頭の中に画像としてストック出来る事は、凄い能力だと思うが、人間というのは間違いを犯すものである。勘違いして記憶してしまうこともあるだろう。それもないほどの天才なのかもしれないが、調べて確認できることは、その場で確認したほうが二度手間にならず、仕事として正確な成果物に近づく事が出来る。僕は彼の才能を疑うわけでもなく、素晴らしいドローイング作品だと思っている。でも、同じことが出来ないからといって、失望することも、落胆することもない。特に学生にはそんな風に思ってほしくない。憧れるのは良いと思うが、多くの人にとって目指すゴールではないだろう。彼と同じことが出来なくても、絵の仕事はできる。画家やイラストレーターとして食べていくことはできる。

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いつも板書で描いている内容を、下描きなく、資料も見ないで描いてみた。資料を確認していないので、例えば、仕事として出版物などには掲載できないスケッチだ。
上手くいかなければ、何度も線を引けばいい。最終的に正しい線が見つかれば、それを清書すればいい。それを可能にする画材もツールもたくさんある。自分にあった方法を見つける事が重要だ。
あまりに絶賛する評価が多いので、天の邪鬼にちょっと思った事を書いてみた。

マウントされていない全身骨格模型

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少し前に注文していた、マウントされていない全身骨格模型が届いた。以前から大学の授業で使っていたのだが、個人用に今回入手したものである。大学で買ってもらったときは円高の影響で4万円台だったのが、今は円安で6万円以上。値上がりの幅が大きい。
マウントされていない骨格の利点は、関節面の観察が容易にできること、そしてあらゆる方向から手軽に骨の形を確認できることである。すでにつながった骨格模型だと意外に見れない部分が多く難しい。特に脊椎はつながれたままだと椎間板もはいっており、ひとつひとつの形のスケッチを描くのも困難だ。ばらばらなので部屋の中でコンパクトにしまえるのもよい。全身がつながったものは、スタンドも含めるとかなりのスペースをとるし、自立してくれないし。仕事のことを考えると、もっと早くに買うべきだったと反省している。

ゼミの授業

先日のゼミの授業のときに、ペン画を描くときのあたりをどの程度とるか?という質問があったので、実際に描いてみたもの。

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鳥のペン画を続けて描いているので、分かりやすく大きくカラスを描いてみた。あたりの線は鉛筆で、ペンはミリペンを使っている(鳥類系統樹マンダラの原画には丸ペンを使用)。
ほんとうにざっとしたものだが、下書きをあまり詳細に描くことはない。きちんとしたものが必要なときもあるが、そんなときはトレースを使う場合が多い。

そして、この日のゼミのお題は『ケルベロスの頸椎を考える』。

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画面に映っている頭骨は大型犬のものだが、環椎と軸椎は人間のレプリカ。第7頸椎をつなげるという方法をとってみたが、どこで癒合させるかはデザイン上の大きなポイントかもしれない。あくまでも架空の生物なので、どこまで考察しても正しいか正しくないかということはナンセンスだが、もっともらしさにつなげるための思考実験としては面白いと思う。本当は犬の頸椎が一そろいあれば良かったのだが、残念ながら手元にはなかったので、解剖図を見ながらの作業だった。Twitterで少し友人とやり取りをしたのだが、頸部から頭部のボリュームを考えると、ハイエナのように上半身の強大なプロポーションになるだろうということで意見が一致した。これもいずれ全身の骨格図を描いてみたいものだ。
こんな感じのことを、前期のゼミでは続けていきたいと思っている。


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