STUDIO D'ARTE CORVO

STUDIO D'ARTE CORVO は小田隆の公式ウェブサイトです。
update 2020.05.10

下描きなし、資料を見ないことは、そんなに凄い事か?

現在、東京で開催されているJunGi Kim Drawing Exhibition、展示を見にいけるかどうか微妙なのだが、リンク先にもあるドローイングの動画を以前見たときには、、その凄まじさには驚いたものである。全く構図をとらずに、下描きもせずに、躊躇なく修正することもなく描き進めていく。これをライブで見た人たちの感想も絶賛の嵐である。同じ空間にいることで、その凄みが何倍にも増幅することは想像に難くない。
しかし、本当にそれは絵を描くという行為として、そんなに素晴らしい事なのだろうか?
復元画を描く仕事は、資料が全てといっても過言ではない。間違えがあれば何度でも修正が必要になる。そもそもイラストレーションの場合、デザイナー、クライアントの要望に合わせて、何度も描き直すことが前提としてある。素早く描ける事は、作業において大きなアドバンテージとなるが、修正なく一発で描ける事にはそれほどの価値はない。資料を見なくとも頭の中に画像としてストック出来る事は、凄い能力だと思うが、人間というのは間違いを犯すものである。勘違いして記憶してしまうこともあるだろう。それもないほどの天才なのかもしれないが、調べて確認できることは、その場で確認したほうが二度手間にならず、仕事として正確な成果物に近づく事が出来る。僕は彼の才能を疑うわけでもなく、素晴らしいドローイング作品だと思っている。でも、同じことが出来ないからといって、失望することも、落胆することもない。特に学生にはそんな風に思ってほしくない。憧れるのは良いと思うが、多くの人にとって目指すゴールではないだろう。彼と同じことが出来なくても、絵の仕事はできる。画家やイラストレーターとして食べていくことはできる。

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いつも板書で描いている内容を、下描きなく、資料も見ないで描いてみた。資料を確認していないので、例えば、仕事として出版物などには掲載できないスケッチだ。
上手くいかなければ、何度も線を引けばいい。最終的に正しい線が見つかれば、それを清書すればいい。それを可能にする画材もツールもたくさんある。自分にあった方法を見つける事が重要だ。
あまりに絶賛する評価が多いので、天の邪鬼にちょっと思った事を書いてみた。