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絵本「ティラノサウルス」が出来るまで

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恐竜などの古生物を描いていると、しばしば「空想で描くのですか?」「想像で描くのですか?」という質問を受けることがあります。この質問に対する答えは「NO」なのですが、その具体的な方法を説明することはとても難しいことです。
そんな悩みもあり、そのプロセスを紹介するものが出来ないだろうかと考えたのが、この絵本を作ろうと思った最初のきっかけでした。そんな時、タイミング良く金の星社編集者のA氏から声をかけていただき、「ティラノサウルス」の制作がスタートしたのです。
年表をご覧になっていただくと分かるのですが、企画がスタートしてから出版まで足かけ2年の月日が必要でした。自分にとって最初の著作であり、絵本であったことから、分からない事だらけだったと言っても過言ではありません。ダミーと呼ばれる本のたたき台になるものを、何度も作り直しました。文章も推敲を重ねて、編集者とのやりとりの中でどんどん改良されていきました。
監修の真鍋さんには、早い段階からラフスケッチを見ていただき、問題点を指摘してもらうことができました。また、ダミーが出来てからは友人の研究者や、学会などで知り合いになった研究者に、しつこいぐらい見せてまわっていた記憶があります。そんな中から、少しずつ手応えを掴んでいきました。
カナダ在住の田中くんには、メールでのやりとりで有意義なディスカッションができました。また彼が夏休みで帰国していたときには、自宅への居候を条件に資料の整理と検索を、かなりの時間お願いしてしまいました。これらの資料が後々、非常に役だったことは言うまでもありません。
ここ3年ほど、夏休みに個展を開くことが恒例になっているのですが、その会場でも貴重な出会いがありました。巻末にある「生命史の年表」と「系統樹」をデザインしてくれたのが、その時出会った坂野さんです。その時見せてもらった、デザインのスタディーワークとして作ったという、全生物の系統樹のポスターは素晴らしいものでした。系統樹をデザインする過程でいろいろな本を読んだところ、僕の復元画に出会い興味を持ってくれて、わざわざ個展の会場まで足を運んでくれたということだったのです。
このことは今回絵本を作る上で、最高に幸運な出来事のひとつでした。
全体のエディトリアルデザインをしてくれた椎名さんとは、二度目の仕事でした。海洋写真で有名な水口博也さんの小説「リトルオルカ」で挿絵を描いたときも、彼女がエディトリアルデザインの担当で、その細部まで行き届いたデザインと仕事の仕方は、とても勉強になるとともに美しいデザインに感銘を受けました。そして、そのスキルは「ティラノサウルス」でも大いに発揮されています。

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